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レベル70のダンジョン〜聖女にまた助けられた件〜

丸1日寝ずに走り続けてレベル70のダンジョンがある町へ着いた。

スライムちゃんのためにものんびりしている暇はない、すぐに聖女を探すとしよう。


情報を得るためギルドへ向かう途中も住人が次々に声をかけてきた。

彼らの話を聞く限りどうやら聖女はまだこの町にいるようだ。

ギルドに着くとショウは冒険者に取り囲まれた。


「お前聖女様が探してた冒険者だろ?彼女なら今ダンジョンに潜ってるぞ」


どうやら聖女はダンジョンに潜る冒険者に応援をお願いされたようだ。

ショウを探しているというのに他の人を助けることも辞めないとは驚きだ。


「聖女と呼ばれるのも納得だな」


とりあえず彼女がここにいることはわかったのだ、スライムちゃんの呪いを解くためにもダンジョンへ行くとしよう。


ダンジョンへ着くとショウはカタナを抜き全速力で聖女を探す。

時間を無駄にしないためにもすれ違うわけにはいかない、ダンジョンをくまなく探しながら進むことにした。


このダンジョンで現れるモンスターは、頭からつま先まで全身を鎧で覆った兵士の姿をしている。

鎧の中を見たものはいないが光属性の魔法が有効なことから、恐らくアンデット系だということは分かっている。

歴戦の冒険者と互角の剣術と体術を使い、ゴーストナイトと呼ばれ恐れられていた。


行く手にゴーストナイトが立ちふさがるが、ショウは走る速度を緩めない。

振り下ろされる剣を避けると、すれ違いざまに体を両断する。

モンスターが倒れた音を背後に聞きながら、灰になるのも確認せずに走り続ける。

時間が惜しい、一秒でも速く聖女と会わなければ。


「会いたくないときはすぐに会えるのに、会いたいときは会えないよなぁ」


そんな愚痴をこぼしながら走り続けた。


途中で弓矢を装備しているゴーストナイトにも出会った。

ショウは飛んでくる矢を斬り落とすと、次の矢をつがえる前にモンスターを両断する。

まるで人間の兵士のように隊列を組んで襲ってくるものもいたが、ショウの敵ではない。

接近するとひと振りで武器を斬り落とし、返す刃で体を両断していく。

スライムちゃんのために頑張るショウは、誰にも止めることはできないだろう。


聖女を探しているうちに最深部へ着いてしまった、すれ違っていないとすればここにいるはずだ。

遠くから戦闘の音が響いてくる、ショウは急いで音のする方へ向かった。


ショウの予想は正しかったようだ、見覚えのあるピンクの髪の聖女が冒険者と共に戦っている。

ボスは金色の鎧を身にまとい、背丈ほどもある巨大な槍を振り回していた。

戦士の男が盾で槍を受け止めている、その隙に魔法使いの女が炎を飛ばす。

聖女は補助魔法を唱えているのだろうか、杖を前に掲げ目を閉じていた。


ダンジョンの中で戦っている相手を勝手に救けるのはマナー違反だ。

だがそんなことを言っている余裕はない、ショウは物陰から飛び出すとボスの腕を斬り落とす。

ボスの狙いが冒険者達からショウに切り替わった。

残った腕で槍を凄まじい速度で突き出してきた。

ショウは迫りくる槍を片手で掴むと、その槍ごとボスを投げ飛ばす。

宙を舞っているボスめがけて斬りかかり、頭から一気に両断する。

ボスの体は地面に着く前に、灰となって消えてしまった。

高レベルのボスといえどもスライムちゃんのために戦うショウの敵ではなかった。


ショウは呆気にとられている冒険者たちには目もくれず、目当ての聖女に近づいていく。

聖女は熱っぽい瞳でショウを見つめていた。


「やっと会えた、君を探していたんだ」


ショウの言葉に、聖女はその顔を赤く染めていた。

口に手を当て体をよじらせながら何やら呟いている。


「私を探していたなんて、やっと思いが通じたのね・・・」


小さすぎて聞こえなかったが気にしている余裕はない。

聖女と話を続けようとしたとき、冒険者たちがショウに声をかけてきた。


「おいあんた、いきなり現れて聖女様に何のようだ?」


冒険者たちは少しだけ怯えているようだった。

急に現れた男がボスを瞬殺したのだ、それは恐ろしかっただろう。

そういえばこの二人には帰ってもらわないとな、スライムちゃんの秘密はできるだけ知られたくはない。


「悪いけど彼女と二人きりで話がしたい、先に帰ってくれないか?」


冒険者たちはショウを警戒していたが、聖女に促されて出口へ向かった。

誰もいないところで二人きりで話ができたのは幸運だった。

ショウは聖女に向き合うと早速本題を切り出す。


「聖女様にお願いがあるんだ。呪いを解いてほしい」


聖女はショウの言葉を聞いて急に涙を流し始めた。

なにかやらかしたのか不安になったが、どうやら違うようだ。


「やっと私の望みが叶うのですね。喜んでお受けいたします」


彼女が魔法を唱え始めたので口を塞ぐ、肝心の部分をまだ話していない。

彼女がどういう反応をするのかは未知数だ、人にとっては聖女でもモンスターにもそうとは思えない。

ショウは少しだけ考え、決心して口を開く。


「呪いを解いてほしいのは俺じゃないんだ。その・・・スライムちゃんなんだ」


ショウはスライムちゃんが入っている箱を開ける。

飛び出してきたスライムちゃんを抱きかかえ聖女の方を向く。

聖女がどんな行動に出るかわからない、念の為カタナを抜けるように手をかけておく。

ショウの心配は無用だったようだ、聖女はかがむとスライムちゃんをつついている。


「なるほどスライムでしたか。勇者様からモンスターの気配がしていたのはあなたが原因だったんですね」


聖女はモンスターに対してショウの予想以上に友好的だった。

彼女の口ぶりからするとスライムちゃんの存在をずいぶん前から感じていたようだ。


「厄介な呪いにかかってるんだ。君なら解けるんじゃないかと思って」


ここからが問題だ。

聖女がおとなしく呪いを解いてくれるだろうか。

聖女は少しの間目を閉じて考えていたが、こくこくと頷き始めた。


「わかりました。勇者様の頼みであれば断るわけにもいきませんね。スライムを連れているのもなにか理由があるのでしょう」


どうやら無理やり言うことを聞かせる必要は無さそうだ。

あとは呪いが解けることを祈るだけだ。


スライムちゃんを地面において少しだけ距離を取る。

呪いの発動まで残り数時間、これで呪いが解けなければスライムちゃんは死ぬだろう。


「じゃあ頼む、間違っても俺には当てないでくれよ」


ショウがお願いすると、聖女は目を閉じ魔法を唱え始めた。

彼女の体から魔力が溢れているのがわかる、こんな魔法は見たことがなかった。

呪文を唱える聖女の杖の先から光が飛び、スライムちゃんを包み込む。

しばらくすると聖女が目を開いた、終わったのだろうか。


「これで呪いは解けたはずです」


彼女が地面に座り込み額の汗を拭っている、どうやら相当消耗したようだ。

ショウは急いでスライムちゃんに駆け寄るとステータスを確認する。


「やった!成功だ!」


スライムちゃんの呪いは解けていた、これで心配することはないだろう。

だがこんなに短期間で再発されてはたまらない、どうにかできないだろうか。

ショウは座って荒々しく息をしている聖女に声をかける。


「ありがとう、おかげで助かったよ。すごい魔法だね」


本当にすごい魔法だ、あれをどうにかして使えるようにならないだろうか。

聖女は少し落ち着いたのか、ショウを見上げながら返事をする。


「うまくいってよかった。勇者様の呪いも解いて差し上げたいのですが回復するまで時間がかかりそうです・・・」


どうやら聖女はショウの呪いを解くことを諦めていないようだ。


ショウは悩んだ。

聖女は最初出会ったときは危ない人物だと思ったが、今はそうは思わない。

スライムちゃんを救ってもらったこともそうだが、話が通じる相手のようだ。

十分に信用できる相手だろう、恐らく問題ないはずだ。

ショウは聖女の隣に座り、秘密を打ち明けることにした。


「なぁ聖女様、聞いてほしい話があるんだ」

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