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脅迫

 山賊戦を終え、吟遊詩人トリスを捜すも、彼はずっと馬車の下に隠れていたようで、一応無事を確認でき、ソドム達は遠巻きに喜びを伝えた。


「トリス、無事でなによりだ!」と、両腕を開き笑顔で迎えるソドム。だが、リアクションと反対に、足は後ずさりしている。


「うん、よかった!」、シュラは引きつり気味の笑顔で迎えるも、近寄らない。



「凄まじい戦いっぷり、まじパネェッスね」、と主たちの戦いを褒め讃えながら、にじり寄るトリス。隠れるときに、地面を這っていたので自慢の銀髪は薄汚れている。



 そして、トリスの手と服にはネットリと馬糞がついていた。その臭いゆえ、自覚もしている。

 ヘタに戦闘に巻き込まれて死ぬよりはマシなので、馬糞くらいは我慢してきたトリス。


 ただ、皆が活躍しているなか馬糞にまみれていた屈辱を、是非とも共有してもらいたくて、勝利を祝うドサクサにハグして、こすりつけるつもりでいた。


 ソドム達が近寄らないため、ハグを警戒していることに気がついたトリス。非礼を承知でタックルしてでも擦りつけたくなった。



 ここ数日、執事としてはもちろん、リュートを弾きながら馬車を任されたり、宿では夕食後にソドム賛美歌を歌わされたりと、こき使われてきた挙げ句、馬糞まみれになってストレスはMAXなのだ。


 力では反抗できないが、せめてさり気ない嫌がらせで憂さを晴らしたい。


 トリスは、姿勢を低くして

「ソドム様も、ご無事でなによりでしたー!」と、飛びかかる。


 たまらずソドムとシュラは後方にステップした。おふざけに対して抗議する程度のシュラの目つきと正反対に、ソドムは真顔になっている。



 レウルーラが後から来て忠告した。

「トリスさん、その辺でめておいたほうがいいわよ」



「え?何をです?」と、馬糞によって優位に立てたことに喜びを感じ、とぼけて追い回すことを止めないトリス。



 キレたソドムは、暗黒魔法でトリスの視力を奪い転倒させると、さらなる暗黒魔法を詠唱した。

「俺はな、若造になめられるのは我慢ならねーんだよ!沈めぇ~!【泥沼化ボッキングダウン】」



 トリスは目の前が真っ暗になり、前のめりに転倒した姿勢のまま、泥沼化した地面に沈んでいく。ソドム特製・毒入りの泥沼に。



 会計士のタクヤが小娘になめられるのが許せないのと同様、ソドムは若造になめられるのを好まない。為政者としての威厳などよりも、ただムカつくのだ。殺意すら覚える。

 闇の信仰を隠さなくてはならないなら、ソドムは大したことない男だが、暗黒魔法を使っていいなら、戦闘力が高く容赦ない。


 レウルーラは、それを承知していたから止めに入ったのだが、間に合わなかった。


「こ、これはあの時の暗黒魔法!?」、手脚がゆっくり沈みこむことに気がついたトリスは慌てだす。

(やべー、これは確か毒泥沼化。マジ殺しにかかってる)

「ちょ、ちょ、ちょっと勘弁してください。わ、悪ふざけした私が悪うございました!お許しを~!」、泥に手をとられて振り向けないが、顔だけソドムに向けて慈悲を請う。



 ソドムは、もはや関心を失い

「行くぞ・・」と言って傭兵達の治療に向かった。シュラ、レウルーラ、ドロスは付き従ったが、懸念けねんしてばつの重さに抗議した。


「やりすぎじゃない?」と、レウルーラが話しかける。ちょっとした おふざけで死罪とは厳しすぎる。



 ソドムは大きく息を吸い込み、溜息するように吐き出してから言った。


「なに、お灸をすえたまでだ。アイツも本当にヤバくなれば、知恵を絞って脱出するはずだからな」と、不敵に笑った。


「!?」、シュラは理解できないでいる。


 レウルーラはピンときた。



「なるほどね、泥の上を歩けるコカトリスに変身すれば抜け出せるってわけね」といって「ポン」と両手を合わせた。


「正解だ!さすが魔術師学校首席卒業生」と言って首と肩を揺らしておどけながら、指差すソドム。


「なーんだ、本当に殺すのかと思っちゃった」と、シュラは安堵した。

 せっかくの魔獣、殺すのはもったいない。いつか、馬代わりにするつもりなのだから。



 トリスの無事を確認し、次は傭兵達の治療に向かう一行。治療以外にも、いろいろと説明せねばならない。



 シュラの妹であるラセツには、シュラが魔人になった経緯を話さなくてはならないし、その為にはソドムが闇君主であることもバラすしかない。

 


 先の戦い前、ラセツは奇跡的に再会できた姉のことを、「貴族の妾として恥も外聞も無く、堕ちるところまで堕ちた姉」と同情とさげすみの目で見ていた・・。

 だが、人間の頭をスイカでも割るかのようにカチ割ったり、鎧ごと蹴り殺したりする姉の姿を見て驚きと恐怖で困惑している。見間違いかもしれないが、賊の首に噛みついて、血を啜って傷を治したように見えたりもしたので、悪夢でも見ている気分だった。


 ラセツは激痛の走る矢傷を見つめながら、常軌を逸したソドム達の戦い方を思い返している。



 そこにシュラが駆け寄り、しゃがみ込んだ。ラセツは肉食獣に襲われたがごとく、つい身構えてしまう。


「ごめんねー!今、傷治すから」、そう明るく言ってラセツの太ももに深々と突き刺さった矢を、強引に引き抜いた。


「痛ぁー!」、戦士らしくなく絶叫してしまうラセツ。同時に血が溢れ出る。


 弓矢には抜き取りにくいように【かえし】があり、無理に引っ張れば傷口が拡がり重症化するので慎重に引き抜くものだ、普通なら。


 まさか、一気に引っこ抜かれるとは思っておらず、油断からの絶叫であった。



 シュラは自分の傷でもないし、すぐに回復魔法をかけるので、痛みは考慮せず手早く処理したまでで、悪気はいっさいない。

 そして、自分は痛くもない。それどころか、妹の・・いや、女の血は美味いのか気になってきた。

(ダメダメ!公爵あいつの言うように、吸血がクセになると魔物として討伐されるから、我慢しなきゃ)


 そう自分を律して、血から目を背けた。欲望の対象は見ないに限る。


 だが、手についた血をチロリと味見してしまうシュラ。

(あれ?そんなに美味しくない。男のように臭みはないのに。公爵あいつのだけ特別に美味しいのかな?)と、首をかしげた。




 ソドムとドロスは、女傭兵達に近づくにつれ致命傷ではなさそうだとわかったので、歩調を弱めて治療に向かっていた。


 だが、シュラの荒療治をみてあわてる。


 もしも、引き抜いた際に動脈を破っていたとしたら、彼等の信仰力では治せないかもしれないからだ。


「ヲヲォォイ!なにしてくれてんだよ!」

 バシッと、シュラの頭を叩くソドム。


「傷口が拡がると治療しきれねぇ場合があるんですわ・・」、このまま他の傭兵達からも矢を引っこ抜きそうなので、ドロスが慌てて補足した。



 シュラは、叩かれたのを気にもせず

「あ、そなんだ」と、目をぱちくりさせた。


 傷口を見て、大事に至らないと判断したソドムは、「まあいい・・」と言って回復魔法をかけて治療し始める。ドロスも、それに習い魔法の詠唱をしたので、完全回復にはさほど時間はかからなかった。


 最初からソドム達が参戦していれば、旭日傭兵団の被害は軽微で済んだのは明らかなので、ばつが悪い。


「すまなかった」、適当な言い訳すら思いつかないソドムは率直に謝った。


 最初から悪ノリで、剣闘観戦しながら熱燗に舌鼓を打っていたのだ、謝る以外あるまい。


 傭兵達も、高貴な公爵が頭を垂れているからには、許さないわけにはいかなかった。


「い、いえ、我々も力及ばず申し訳ありません。賊の待ち伏せを過小評価していなければ、迂回して戦いを避けることができたかもしれませんから」と、ラセツは恐縮しながら言った。



 ソドムはうなずきながら、自分とシュラの能力について探りを入れる。

「まあ、あれだ。互いに無事だったから、この話は終わりにしよう。うむ、・・・先ほど見ただろうが、俺とシュラは・・・普通ではない」眉を上げ、あらためてラセツの反応を見る。


「え、ええ。なんというか・・人間離れしたような・・」ラセツは目をそらしながらも、慎重に言葉を選んで答えた。


「そう、訳あって若干人間ではなくなったんだ。矢を受けても平気、血を吸ったり、俺なんて眼は深紅で腕四本だったもんな。ははは、まともじゃない」


「この際だから言うが、俺はギオン公王にして闇君主ダークロード、シュラは闇魔法によって眷族になっている」そう言って、ラセツの肩に手を置くソドム。


 その手は、ゆっくり撫でるように肩から首へと動き、止まった。


 わざわざ全てを明かした意味を理解できないラセツではない。



 この事実を公表すれば、命はないと脅迫されているのだ。第一印象のエロバカ貴族ではなく、情け容赦ない闇君主ダークロード


 知らない方がよかった・・。

 

 生き残るには、口外しないと誓うほかない。いや、誓ったところで、信じてもらえてなかったら、頃合いをみて殺されるかもしれない。


「ぜ、絶対に口外しないと誓います」、震える声で返答するラセツ。仲間の傭兵を見渡しうなずくと、傭兵達も頷き返した。


 信用したのか、ソドムは首から手をはなして、無表情で立ち上がった。

(たぶん大丈夫か、傭兵は守秘義務があるからな。山賊達には・・念を押す必要はある)



 シュラが緊張状態を和らげるために妹に声をかける。


「あんま難しく考えなくていいって。あたしが闇の眷族とやらになったのも数日前なんだし。悲しいどころか、桁外れな強さに楽しくて仕方がないわよ!それに、あたしらの正体はいずれバレるから、しばらく黙っていればいいんじゃないの?」と、ニコニコしながらラセツの肩をバンバン叩く。


「うん・・」


 姉に返事はしたものの、ラセツ達の目からは恐怖が見てとれた。武器が効かず、素手で人をぶっ壊し、四本腕で淡々と殺戮したり、最強種族のドラゴンを召喚したりする連中を目の当たりにしたのだ、無理はない。




 レウルーラの行動はシュラ以上に奇抜であった。山賊側の死者の埋葬が大変だろうと気をつかい、ドロスに肩代わりすると申し出たのだ。



 確かに、同胞を葬るのはやるせないし、100人を超える埋葬は過酷だ。

 


 レウルーラの気づかいに感謝して、ドロスは埋葬を依頼した。



 彼女は快諾し、集められた死体に魔法をかける。



「~亡者共よ、蘇り我が命に従え!【不死転生アニメイトデッド】」



 死体達が紫色の怪しい光に包まれたかと思うと、ムクリ ムクリと立ち上がった。いわゆる動く死体 ゾンビにしたのだ。


 それは、刺し傷の者だけではなく、炎に焼かれ半ば炭化した者も、脚が無ければ這うような形で術者の命令を待った。


 その光景を見て、ソドムとシュラ以外が恐怖で青ざめた。

 ギオン公国の人間なら、「死の岬」から亡者どもが定期的に襲撃してくるので、見慣れてしまっているが、通常はゾンビと出逢うことは・・まず、ない。


 まして、さっきまでの仲間をゾンビにされた経験がある者は皆無だ。


 あっけにとられ、目の前でおきている不思議な光景を眺めるしかできない山賊達。



 レウルーラは周りの視線など気にもとめず、死者達に命を下す。


「おまえたち、この先の谷底に転げ落ちて待機しなさい!」と来る途中に見かけた谷の方向を指さして言い放ち、

「ゴモラは、谷底にゾンビが集まったら、焼き払って、その後に岩肌を崩して埋葬してちょうだい」と命令した。



 群れをなしたゾンビ達が、のそのそと歩き・・・谷底へと落ちてゆく・・。


 そして、頃合いに竜が焼き払い、土砂で埋める。まるでゴミを処分しているのに似ていた。


 美しい女性が指示しているから、嫌悪感が生まれにくいが、やってることは えげつない。


「おぉ・・」、さすがのソドムも反応に困った。

(我が妻のサイコパスぶりよ・・)


「や、やはり鮮度がいいと動きがいいもんだな」、これがソドムの精一杯の言葉であった。


 褒めているわけでもなく、せめて冷ややかな視線に傷付かないでほしい一心だったが、自分でも何を言っているのか分からない。


 シュラも、優しさからか話を合わせてくれた。

「う、うん。こんなにキビキビしたゾンビ、初めて見たかも!」、一応褒めているが、声が裏返っている。



 レウルーラは、イメージ通りに事が運び満足だった。

「ありがとう、腐乱死体だと足元から崩れるから、こう上手くいかないわ」

(分かる人には分かるものね)


「おかげで穴を掘らずにすんだ」と、ソドムは率直な感想を述べた。


 まあ、理屈はわかる。死体処理は大変だし、山賊達とて知り合いの死体を扱いたくないだろう。ならば、死体に動いてもらい、目立たない谷底まで歩いてもらう。

 野晒しでは、心が痛むだろうから、火葬してから埋めてあげる、という せめてもの優しさ。


 自分が逆の立場で仲間に同じ事をされたら?とは考えていないはず。

 根底に山賊という異種族のような連中には、そのような扱いでもいいと思っているのだろう・・・そうソドムは解釈している。



 山賊達は、さぞ怒っているかと思いきや、存外そうでもなかった。



 どうやら、処理されている屍にならなかっただけでも運が良いと、助命されたことに安堵しつつも、この悪鬼のごとき連中から逃げたくて仕方がないようだ。


 そして大半の者は、これを機にカタギになろうと決意していた。稀にとはいえ、「こんな人外のバケモノに遭遇するようでは、山賊稼業なんぞ割に合わない!」そう思った。



 ソドムは傭兵達を治療しながら、今後の事を考えている。そして、かたわらのドロスにぼやいた。


「元・光の神官として率直に言ってくれ・・俺達はアウトか?」



「アウトですなぁ。物理耐性と吸血は自粛じしゅくできても、眼が赤いというのは闇の最高司祭と名乗ってるようなもんですから、光の教団が黙っちゃいませんぜ」、ドロスも治療に専念しながら、サラリと言う。


「だろうな・・。それだけで、怪しまれて当然か」


「いきなり斬られたりはしないでしょうが、教団に報告されてから、討伐令は下るかと」


「自国に辿り着けても、光の教団に察知されるのは時間の問題だな。やはり、連邦とは戦わねばならんか・・」ソドムは、うつむいた。


「ですが、帝国に侵略されてる上に、連邦と戦うのは・・いかがなものかと」ドロスが、ちらりとソドムの表情を覗く。成り行きで配下になったものの、泥船では困る。


「そう、ただでさえ帝国に敵わない現状だ。知恵を絞らなくてはならん。なんせ、ウチの兵力は、たったの千。連邦の最大兵力は十万、帝国は二十万といったところだ」、回復魔法を終えて頭を抱えるソドム。


「そこまで差があると、戦になりませんぜ」、すっかりソドムの部下になったドロスも頭を抱えた。

(おいおい、この旦那・・・まさかの無策ノープランじゃあないよな?)

 せめて判断材料にでもなればと思い、ドロスは一般的戦略を地面に大陸地図を描きながら語りだした。


「ソドム王、普通に考えて、光の神を国教とする連邦との戦は必至。ですが、何とかして二正面作戦だけは避けなくてはなりません。戦力が段違いな上に挟み撃ちでは望みがない。どちらかと和睦するか、無力化する必要があるかと・・・」


「連邦との和睦は難しかろう。闇司祭などは、おまえら山賊同様に討伐対象だからな。いくら穏健派が擁護しようとも、すぐさま方針は変わらない。光の最高司祭と連邦王のメンツがある。帝国とて、圧倒的な戦力差があるのだから、戦を止める理由はない」


「となると、内乱かなにかで外征どころじゃなくするしかないわね」と、レウルーラが話に割って入った。


「領主の叛乱か、内戦になるように工作して、動きを封じる・・か。ただ、連邦の有力貴族達は皆姻戚関係にあるからなぁ」ソドムは内乱に代わる撹乱作戦を考えている。

(山賊のように領地を荒らしまくるか。だが、それだと悪評がたつ・・信を失えば味方が寝返るかもしれん)



 いつの間にか、ギオン名物の諜報し放題・戦略会議が道端で繰り広げられている。



 深刻な戦略会議にシュラが一石を投じる。


「赤い目がバレなきゃいいんでしょ?とりあえず、人前では帽子やフードを目深まぶかかぶれば、わからないんじゃない?」


 そう言われて、レウルーラがソドムの眉毛あたりに手をやって、見え具合を試してみる。


「う~ん、確かに暗ければ大丈夫かも。よほど疑われれば別だけど」


 ドロスも同意見で、

「ですな、これなら何とか誤魔化せそうです」


 帽子やフードはわずらわしいが、国家の存亡がかかってるなら仕方がない。

「まあ、やるだけやって時間を稼ぐかぁ。あと数年で盤石なのだが、レウルーラに依頼したアイテムさえ完成すれば、何とかなるはずだ」と、ソドムは妻に視線を向けた。



「ああ、アレね。理論上は可能だけど、大きな水晶が入手困難なのと、大きければ加工も時間がかかるわよ」と、レウルーラは平面水晶の難しさを改めて説明した。


「だったら、試作で小さめの物を頼めるか?」

(想定外に早くバレるかもしれん。世間は所詮 敵ばかりだ・・。冴子殿とて、国益のために裏切るかもしれないからな)


「そうねぇ、設備が整ってる実家に戻れば一ヶ月くらいで形にできると思う。魔術師家系だから、助言ももらえて研究もはかどるだろうし」



「えっ?また連邦に戻るの!?」、とシュラが驚く。



「むぅ、まずは・・予定どうりギオン公国に戻り、侵略してきている大和帝国軍を撃破しよう。例のアイテム作りが、公国内でできない場合、レウルーラが実家に帰る・・という流れだな」、ソドムは各々に今後の計画を話した。



「ま、疲れたし宿場町で休もうか・・。シュラとレウルーラは、ラセツ隊長達と先に宿に行ってくれ」ソドムは、そう言って旭日傭兵団に妻の護衛を依頼した。


 傷の癒えた傭兵団は、承知して馬車の準備にとりかかった。



「で?アンタはどーすんの?」、シュラは返り血を拭き取りながら、一応ソドムに聞いた。



「あ?ああ、守秘義務がない連中にバラさないように念を押しておく。夕飯には戻るから、風呂入ったりしててくれ」と、気遣いをみせるソドム。


「この先の宿場は、温泉が湧いてますから」、とドロスが教えてくれた。


「ホントー!?じゃ、女子は先に行ってお風呂にするわ」無邪気にはしゃぐシュラ。


「助かるわ、結構魔力使って疲れてたの」そう言ってレウルーラは、巨竜ゴモラを送還した。



 そんなこんなで、女子達は馬車で先に宿場に向かった。



 ソドムは、ドロスに命じて山賊達を集める。トリスも呼んだのだが、未だに泥沼から抜け出せず、溺れかけていたので、引っ張りださせて、泥まみれのまま連れて来させた。


 馬車が視界から外れるほど離れたのを確認し、ソドムは男達に脅しをかけた。


「いいか、おまえら!さっきの戦いで感じただろうが、俺は闇に属する者だ。闇の最高司祭から力を引き継いだ闇君主ダークロードであり、魔獣に変身することもできる。だが、これは連邦王国には秘密にしなくてはならない力なのだ。つまり、おまえらの中で誰かが喋ったら、連帯責任で ここら一帯の集落は皆殺しだ」と、ソドムは全員を見渡した。


「今から変身した姿を見せてやる、そして絶望を知れ!」そう怒鳴って、ソドムは変化トランスフォームに必要な動作をした。


 両腕を右方向に伸ばし、ぐるりと円を描くように回し、力を溜めるように膝をおり、「トゥ!」という掛け声とともに手を上に伸ばしジャンプした。


 それと同時に不気味な黒い霧がソドムの周りに現れ、ソドムの存在を覆い尽くし、その霧は天空に向かい拡がり続け、大きな魔獣として具現化した。


 だが、数秒で変身を解き、黒い霧が消え去り、元通りソドムが佇んでいた。

 変身期間が長引くと、ヤブ蚊の如き下等な人間には戻りたくなくなってしまう。

 人生逆転の切り札として魔獣を取り込んだのに、魔獣として安穏な日々を送るのでは本末転倒というものだ。


「わかったか?俺を怒らせるな」と、底響きするような低い心話で脅した。


「・・・」、あまりの衝撃に誰一人として声をあげることができなかった。


 恐怖の中でトリスはデスリザードマンが、ソドムの命令に従った理由がようやくわかった。そして、絶対にからかってはいけない相手だと理解した。


 ドロスひとりは、驚きと歓喜に興奮している。

(こんな暗黒魔法があるのかよ!泥船どころか、とんだ勝ち馬じゃないか。俺は最高についてるぜ!)


 ドロスは元部下達に解散を命じ、意気揚々とソドム達を宿場まで先導して行った。

 脅しをかけたのに、逆に活き活きとしているドロスを見て、ソドムは妙な気持ちで歩きだした。

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