シュラ無双
タイミングを見計らい、山賊首領を討ち取らんとしたラセツ達。
だが、山賊達は余興は終わりとばかりに弓矢を放ち、彼女らの脚を貫いた。
剣技に勝ろうが、脚をやられたら どうにもならない。これから、ジワジワと槍や弓で いたぶられることを考えると、【降参】するしかなさそうだった。
「無念・・」、そう言ってラセツは二本の剣を大地に突き刺す。こうなったら、手籠めにしてくる相手の喉笛を食い千切ってでも一矢報いようと、首領ドロスを睨みつけた。
が、よく見れば・・いや よくよく見ればドロスの横で酒盛りしているのは、護衛対象の公爵ではないか!?
ベッタリくっついている美女は妻で、酌をしているミニスカートの女子は姉のシュラ?
公爵がいつの間にか襲撃側と一緒に、戦いを肴に熱燗を飲んでいる?
やはり、理解できない。出血多量でおかしくなったのだろうか。
ラセツは強く目をつむり、再度見てみたり、頭を振ったりしてみたが、その光景は間違いないなさそうだった。
「どーゆーことよぉ~!」と、怒りや不信など様々な感情が入り混じった声で叫ぶ。
事の始まりは、ラセツ達と山賊の一戦目。
彼女達が必死に戦っているなか、ソドム達3人は馬車からコッソリ脱けだして、愛想良く山賊に合流した。
お祭り気分の山賊達は、あっさりと受け入れたもんだ。
なぜなら、貴族達は武装すらない女連れ・・捕らえるのは容易だし、貴族の機嫌を損ねるのは得策ではないからだ。
貴族を人質にして、身代金をせしめようにも、貴族に自害されたり拒否されたら困る。ゆえに、丁重に扱い客人として首領ドロスの隣に席を設けたらしい。
ソドム達の目的はというと、単純に白熱した剣闘を特等席でみたかっただけで、なんら作戦があるわけでもない。
眷族であるシュラに酌を命じ、妻をはべらせ、目の前で繰り広げられる乙女の戦いを見物しながら、熱燗を胃の腑に流し込む。寒空の下での熱燗は、格別に旨い。「五臓六腑に染み渡るとは このことか」と、膝を叩いたらしい。
隣に座る山賊首領も なかなかの話し上手、見所などを教えてくれるので、より一層 剣闘を楽しめた。
ソドム、退屈な旅路に またとない娯楽に出逢うことが出来て上機嫌であった。
だが、弓矢で決着というのが気に食わない。
「さて・・・宴も酣、お開きだ」ノッソリと立ち上がりソドムが手を数回叩く。
シュラが我に返り、戦闘態勢にはいる。レウルーラは嬉々として召喚魔法の詠唱を始めた。
「おいおい、ダンナ。本気ですかい?こっちは手勢200ですぜ?」言葉とは裏腹に、危険を察知したのかドロスは距離をとった。
大将がやられない限り、賊は再起できる。だから、ドロスが直接命のやり取りをせず、後方で指揮に専念するようにしている。
軍隊でも、大将自ら突撃する様は、大和帝国で言ところの「匹夫の勇」とバカにされるものだ。
指揮官は後方でどっしり構えるのが基本なのだが、得てして陣頭に立ち突撃したがるものが後を絶たない。
他の山賊達は数を頼りに、ヒシヒシとソドム達を取り囲む。
「ーーーーーッバシュ!」、シュラの金剛聖拳が1人の山賊の顔面に炸裂する。山賊はシュラの光を纏った拳に顔面の骨が砕かれ、脳漿を撒き散らしながら絶命した。
からの~、後ろ回し蹴り!・・これも脚に金剛聖拳を応用して光を纏わせてあり、別の山賊の胴に穴を空けた。
剣などでチマチマ斬り結ぶのと違って、気分爽快。シュラは、今までのどの戦いよりも喜びを感じていた。
盾を構えた山賊と目があった。次は盾ごと貫けるか試したくなり、助走をつけて跳び蹴りを食らわせ、盾ごとブチ抜いて即死させるシュラ。
以降、しゃがみ込むように近いてアッパー、肩に飛び乗ってから頭を蹴り上げるなどして、虐殺してまわる。明らかに楽しんでいた。
取り囲んだ山賊達は、現実離れした惨状に頭がついていけず、回避動作すら忘れ棒立ちの者が数人いて、無惨にも弾け飛んだ。
シュラとしては、山賊程度は動くゼリー人間かスイカ人間みたいなもので、殴れば容易に破壊できて、その血は飲むこともできる。お菓子の城で遊んでいるような感覚であった。
「なんか、いい感じ!」と、血まみれの親指を立てて金剛聖拳の使い心地をソドムに伝えた。
ソドムはソドムで、シュラが派手に暴れている隙に山賊から剣を奪いとり、礼とばかりに首をかっ斬った。
あとは、面倒くさそうな足取りで、フラリと敵に近き 素早く急所に一突き。命の刈り取りを淡々と行っていく。
レウルーラは、詠唱中に数人から攻撃を受けていたが、装備品が【召喚の腕輪】だけという身軽さがあって、メイジマーシャルを駆使して撃退に成功している。
魔術師といえど、格闘訓練をみっちりしてきただけあって、素人同然の山賊や ならず者など敵ではないようだった。
予想外の強さと不意討ちに面食らったが、ドロスは組織の瓦解を食い止め、槍持ちによる正面攻撃と、後から小剣での牽制を織り交ぜて対抗する。
「じっくりいけよぉ、手強かろうが所詮は人の子、いずれスタミナが尽きるからな~」そう、部下を励ましている。
旭日傭兵団のラセツ達は、脚の止血をしながら、唖然として彼等を眺めている。
槍の連携で、殺しのペースは遅らせたものの、シュラとソドムから合わせて20人くらい殺されてしまう山賊達。
「下がれ!、弓に切り替えだ」頃は良し、ドロスが新たな指示を出す。
槍持ちが下がり、弓を構えた山賊達が狙いを定める。
シュラは金剛聖拳による体力消耗が激しく、ついに肩で息をしている。ソドムは身を寄せ、シュラを庇う。
(やはり、金剛聖拳は扱いが難しいか・・)
「参りましたな、貴方自身がこれ程の使い手とは」、そう言って弓矢を放つよう合図した。
まるで悪鬼の如き戦いを目の当たりにした山賊達は、恐慌状態にあるため、狙いが定まらないまま矢を放った。標的である小娘は、避けきる体力はない。
その数、およそ20本。内、ソドムとシュラの急所に当たったのものもある。2人は「ドサッ」と、仰向けに倒れた。
「お姉ちゃん!」、吸い込まれるように複数の矢が姉に当たるのを見てラセツは叫んだ。
「ばかやろう!殺したら元も子もないだろう!」と、めったに部下を叱らないドロスですら怒鳴った。
貴族に死なれたら、稼ぎがパーどころか、討伐されるリスクが高まるだけで、いいことなど何もない。部下に命じて、生死を確認させるドロス。
致命傷でない限りは、なんとか回復させることができるので、無事を祈った。




