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ギオン公国vs世界連合?

 翌朝、連邦から出向している騎士ポールに伴われて、特使であるハンドレッド伯爵と連邦王国 宮廷魔術師アジールが揃ってギオン城三階の「謁見の間(仮)」に姿を現した。


 ハンドレッド伯爵は、煌びやかな金の鎧に赤マント。アジールは、正反対に地味な出で立ちで、黄土色のローブに魔導書と杖。

 ソドムを陥れるために来た伯爵と、彼からのクレームがあったため仕方なく来たアジールでは感情の温度差が感じられた。

 ぶっちゃけ、闇信仰の確たる証拠が無かろうとも連邦王国としてはソドム公爵が隠居してくれれば それでよかった。無害化したなら、帝国を駆逐し、太平の世になってから始末すればよいのだから。



 迎えるソドム公王側は、宮廷魔術師レウルーラ、司法騎士アレックス。置物的存在として吟遊詩人と護衛戦士が横に控えている。レウルーラは半年の間に心話をマスターしているので、ソドムが返答に困ったとき、近場しか届かない心話を駆使してサポートできる万全の態勢で臨んでいる。ちなみに、連邦から出向してきているポールは中立を表明しているので、よほどのことがない限り決定的な口実はないはずだった。


 最大の懸念は護衛戦士シュラの同席。猛反対したソドムであるが、絶対に絶対に口と手を出さない約束で渋々許可を出した。

 誓いを破った場合、不本意ながら眷族扱いで「窓から飛び降りる」命令を下すと言い含めてある。国の存亡がかかっているため、ソドムにしては異例中の異例の対応だった。



「これはこれはお二方、遠路はるばる このような辺境の地までお越しとは」そう言って、ソドムは二人に座るよう促し、自らも座った。

 レウルーラも衝動的にソドムの上に座りたかったが、必死に堪えた。


「いえいえ、今回は祝賀のご挨拶にまかり越した次第で」と、にこやかに話すアジール。魔術師なのだから、ソドムからダダ洩れしている魔力と、常人ならざる赤き虹彩に気がつかないはずがないのだが、少しも触れる気配がない。

「聞けば、夜襲と疑兵(ぎへい)を用いて帝国を撃退なされたとか!なんとも痛快な話ですな」と、援軍を引き揚げておきながら、白々しい讃辞を述べた。

 隣のハンドレッド伯爵は、回りくどさに憮然とした表情で そっぽを向いている。


「はっはは、かような勝利など戦略的に意味はありません。わが国は、蛇に睨まれた蛙・・そして、次の攻撃になど耐えられるはずがない、まさに風前の灯火。早急に援軍を戻していただきたいのですが・・」と、ダメ元で言うソドム。可能性は低くても、頼んでみなくてはわからない。



「そう!それなのですが・・。じつは、ソドム公が闇の信者であるとか、魔王に違いないなどの風聞がありましてなぁ。光の神を信奉する連邦王国としては、おいそれとは軍をおけぬのです」と、アジールは申し訳なさそうに言った。


 後ろめたさを感じたトリス、演奏を止め・・目を見開いたまま硬直してしまう。心を落ち着け再開するまで、数秒かかってしまった。


 伯爵は、一応アジールに話を合わせる。

「左様、されど我らは昵懇じっこんの仲。ソドム公の潔白を証明したく、無理を言って同行させていただきました」

 ソドムを陥れるべく真っ先に連邦にチクった伯爵は太々しく話をつづけた。


「勿論、疑っているわけではありませんぞ。あくまでも、形式的なことですが・・」そう言いながら、懐から足裏くらいの銅板を取り出して床に置いた。


「ん?何ですかな、それは」ソドムは立ち上がり、テーブルを回りこんで銅板を見に行く。レウルーラとアレックスも それに続く。


 銅板には、剣に竜が巻き付いたような禍々(まがまが)しい紋章が描かれていた。


「お分かりかと思いますが、これは闇教団の紋章です・・・・」伯爵は、それだけ言って片目を閉じ、ゆっくりとソドムを見上げた。つまり、「銅板を踏んで、闇の教団とは無関係だと証明せよ」と言いたいのだ。

 相方のアジールは、素知らぬふりをして窓からの景色を見ている。そのようにしていれば、どちらに転んでも対処のしようがあるからだろう。



 ソドムはというと・・・・・、速攻で踏んだ。そして、ケロリとしている。邪神の末席たるソドムにとっては、祟りなど恐いはずもない。肉体ある闇の申し子では、自分が最高位なのだ・・・・何を恐れることがあろうか。


「え!?」躊躇なく踏んだソドムに驚く伯爵。想定外の態度に、どうしていいか分からなくなって、チラリと横のアジールを見た。アジールは意に介さず、茶で一服したかのように「ふぅ」と息を吐いてから、ソドムの方を向いた。


「ときにソドム公、その眼はいかがされた?以前から魔王の眼のような深紅でしたかな?」と、逃げ場のない質問をする。彼は、真綿でジワジワと首を絞めるように じっくりと核心に迫るタイプだった。横でコウモリ伯爵は意地の悪い笑みを浮かべている。


 実は公国幹部達 全員がうっかりしていた。ソドムの眼が赤いのが当たり前すぎて、隠し忘れていたのだ。最高司祭から力を引き継いだころは、バンダナや帽子を深くかぶり対策していたのだが、最近は全くしていなかった。


 レウルーラは焦った。口実を作らぬために、皆で打ち合わせしてきたというのに・・本人が動かぬ証拠ではどうにもならない。

(もうダメ・・。仕方がない・・・・シナリオを変えて、「特使は帰路でアンデットに襲撃され死亡」にするしかないわね)

 そんな微かな殺意を感じ取ったソドムは、レウルーラに手を向けて制止する。そして、アジールに言った。


「これは、ファッションだ」


 これには、両陣営が驚いた。「んなわけないだろ!」というツッコミが皆の心にあった。


「その証拠に・・・・」そう言って、シュラに手招きした。シュラが眼前に来ると、ソドムは思いっ切り頭突きをする。その瞬間、赤い何かが目から目へと飛び出すように移った。

「痛ぁぁぁ!何すんの、このバカ!!」


 ソドムは暴れようとするシュラの両手を必死に抑えながら、特使二人に訴えた。

「ご覧あれ!眼の赤さが乗り移っただろう?そして、私は・・この通り黒き目ではありませんかな?」


 特使のみならず、公国メンバーとポールまでマジマジと二人の眼を見比べる。本当に赤さが移っているのは疑いない。


 片田舎の小娘が赤き眼になったからといって、「魔王だ」と騒ぐ訳にもいかない。


「・・・・確かに」と言うしかないアジール。

 確認が終わると、また頭突きをして赤い虹彩を取り戻すソドム。

 なんだか頭突きが正当化されて面白くないが、暴れるのを禁止されているシュラは唇を噛んで我慢している。

(ま、あとでキッチリ仕返しさせてもらうわ!)



「これは、資金源を断たれた我が国が、世に売り込もうと考えているファッションでして。ただ、このような誤解で大事になるのであれば、商品としては駄目かもしれませんなぁ」と、ソドムは笑って席に戻る。



 まさかの切り返しにアジールは内心困惑した。しかも、彼はシュラが連邦王の隠し子だと知っているので、「グルなのではないか!?」とは問い詰めにくい。


 ここはひとつ度量の大きさを見せる必要があった。


「これは失礼いたしました。私の無知さをお許しください」と、こちらも笑って済ませた。

(さて・・、八方塞がりになった。邪教徒の亡命者は追い払われ、踏み絵もクリア。怪しいにもほどがある深紅の虹彩は、誰にでも譲渡可能ときたもんだ。戦争の口実どころか、隠居を迫ることもできないではないか。・・仮にも独立国、これ以上は追及はできぬ)



 アジールは諦め気味だが、伯爵は、そういうわけにはいかない。

 このままソドム公爵が無罪であれば、ガセネタを掴ませたとして こちらが窮地に陥るのだ。


 もはや完全に言いがかりでもいい、公国を暴発させる必要があった。


 伯爵は、チラリとシュラの腰元を見て、

「おや、その剣は いつぞやの破邪の剣。聞きましたぞ、敵中分け入っての大立ち回り!闇夜に炎を繰り出して戦う姿は 小さき竜の如くであったと。連邦では百人斬りの「ちびドラ」として有名になっております」と、シュラを持ち上げた。短気なじゃじゃ馬をおだててから、一気に下げて怒らせる作戦である。


「あちゃー、そこまで聞こえちゃってんだ」と、真っ赤になった顔を右手で押さえて照れを隠す。だが、その目は「もっと褒めて」といいたげだった。



 伯爵は下卑(げび)た笑みを浮かべ、

「ですが私は思うのですよぅ。百人斬りは貴女の顔に書いてある「床上手」が示すまま、帝国の男達とまぐわった数ではないのかと!?」

 

 伯爵のバックには連邦王国があり、公国を怒らせ先に手を出させることは連邦王国の利益になる。

 散々この小娘達からは煮え湯を飲まされてきたのだ、今こそ虎の威を借りて、「言いたい放題バカにしてやる」と息巻き、伯爵は攻撃の手を緩める気は無い。


 レウルーラは意図を悟り、シュラが暴発しそうなときに止めるよう吟遊詩人トリスに目配せして、彼も理解して頷いた。

 シュラの暴発さえ抑えれば、特使は なんら成果も無く帰国せざるを得ないだろう。しかも、幸運なことにシュラ自身馬鹿にされていることを理解していない。

(伯爵の悪あがきで、シュラちゃんを怒らせるつもりかもしれないけれど、こちらが管理できていれば問題はない)

 娘が目の前で辱められたソドムが抗議して口論になっても困る。念の為、レウルーラは心話でソドムをなだめた。

『ソドム、今は我慢よ。言い争いになってしまったら、相手の思うつぼ』


『ああ、わかっている』と、苦しげな表情とは反対に、冷静なトーンの返事が来た。どうやら怒りを抑えているふりをして、伯爵の茶番に付き合ってるだけのようだ。


 ふと安心したレウルーラは、いつもの癖でソドムの膝上に座る。

 しかも今回は珍しく、抱きつくように手足を絡め向かい合う形で座った。

 肩にかけていたコートを無意識に脱いでいるため、白い美尻に赤いレオタードが食い込み、男達は悩殺されてしまう。


 伯爵は、さらなる(ほころ)びに狂喜した。


 彼の目は開けているかわからないほど細くなり、凹凸の少ない顔はアゴを引いて笑っているため一層平らになる。


「ワッハハ、何ですか その姿は!側近が淫乱なら、奥方も淫乱のようですな。これではまるで娼婦ではありまっ!」全てを言い終わる前に、投げつけられた金属が「ゴォン」と鈍い音を立てて顔面に直撃し、伯爵は椅子ごと後ろに倒れた。



 投げつけたのはソドム。娘と妻を(けな)されて激高し、思わず被っていた王冠をぶん投げたのだ。倒れた伯爵は眉間のあたりから出血している。


 それでもソドムの怒りは収まらず、アレックスの剣を奪うため立ち上がろうとした。アジールはソドムのことを稀にいる無駄に魔力の多い人間とタカをくくっていたが、怒りによって暴走するソドムの魔力は人間のものでないと確信し冷や汗をかいた。討伐したことのある魔獣などとは比べ物にならない膨大で危険な魔力は例えようがない。

 暗黒魔法の奥義【変化トランスフォーム】を知らない この魔術師は、古代竜エンシェントドラゴンか高位の魔獣が人の姿に変身していると推測した。


 上に乗ってるレウルーラは、ソドムの肩を揺さぶりながら落ち着くように声をかけた。


「ちょっと、貴方何してるの!?冷静になりなさい!」


 愛妻家のソドム、レウルーラに何かあるとブチ切れる癖があるようだった。


 あれほど皆に冷静に努めるように言っていた本人が無茶をしたので、公国の皆が放心状態になった。いや、同時に身内想いに心を打たれもした。妻子と国家という天秤で、妻子を選んだのだから。


 ここら辺が、国益優先の王侯貴族達とは違う。家族を犠牲にしてまで、国という枠組みに執着するつもりはない。


 実際 王になってみて・・いうほど楽ではなく厄介事ばかりなので、そろそろ引退したいというのが、語られることがない本音であるが民はそれを知らない。


 形式上は質素倹約を(むね)とし、民の暮らしを守るために奔走している君主の鏡を演じているので、臣下と国民からの人気は絶大であった。

 建国から十年、彼は いかなる国難も「なんとかする!」と言って、実際なんとかしてきた。頼られて当然だろう。


 それはそれ、感動に浸っている場合ではない。

「早く何とかしてよ!」と、涙目でソドムの頭をしばくシュラ。

 このじゃじゃ馬でも、連邦を敵に回したら無事で済まない事ぐらいわかる。かつての生まれ育った村のように、無惨に滅びるのは見たくなかった。


 我に返ったソドムは、アレックスに声をかけ、共に伯爵のそばに行き回復魔法をかけた。

(やべぇ、やっちまった。だが、キッチリ治せば・・水に流してくれるか?)


 仰向けに倒れている伯爵は、気絶は免れたが、突然の事態に状況が理解できずオロオロしていた。


 それはまるで、散歩中に足を踏まれた犬が おもいっきり踏まれたと勘違いして 「ギャワン!」と吠えて被害を主張しようとしたが、擦っただけと気がついたので何事もなく歩くか・・ほんの一瞬 思案しているのに似ている。


 

 ソドム達は司祭ほど回復魔法が得意ではなく、かけられる側の伯爵本人の信仰心が低いため、傷を癒やすのには手間取った。

 

 しばらくして、なんとか傷は塞がったので、レウルーラから渡されたハンカチで血を拭き取り、三人掛かりで椅子ごと伯爵を立て直す。

 ソドムは怪我した子供を扱うように伯爵の治った傷口や贅肉のついた顔を撫で回し「痛くないねー、何にもなかったもんね~」的な雰囲気をつくり、最後に両人差し指で無理やり伯爵の口角を上げて笑顔を作った。シュラも調子を合わせて笑顔で拍手して援護する。


 冷ややかに見ているポールやアジールからすれば、眉間の傷は塞がっても内出血である青たんはそのまま、目は死んだ魚のようになっている伯爵を強引に笑わせてもシュールなだけであった。


 で、結局 伯爵は吠えた・・いや、叫んだ。


「ひぃぃ!こ、殺される~!」


 完全にタイミングを逸したが、ソドム達の手を振りほどき、


「これは連邦に対する宣戦布告行為である!暴力的なのは邪教徒の証拠だ!損害賠償と慰謝料を請求する!お前のかーちゃん出べそ!」などと わめき散らし、なりふり構わず被害者を演じて、隣のアジールにすがった。



 連邦宮廷魔術師アジールは、終始怪我の心配ばかりして決定的な発言は避けた。

(人はここまで醜くなれるのか・・。ソドム公爵は真っ黒だが、ハンドレッド伯爵も油断ならぬ。ずる賢く地位を簒奪し、領地を切り取ってきただけはある。外様の伯爵が、ここまで公爵潰しに躍起になるのは忠義によって恩賞を得るためかと思っていたが、違うようだな。もしかすると、公国消滅後の大国間の交易拠点を引き継ぐのが目的?と、すれば公爵を排除して一番得をするのは、連邦ではなく伯爵ということになる。両者とも連邦にとって都合が悪い存在だな・・。かといって、帝国との決戦を控えて貴族粛清のために兵を失う訳にはいかぬ、ここは一つ「連邦の覚えが良くなる」ことを餌に・・)


二虎競食にこきょうしょくの計で双方の弱体化を狙うのが最善か・・」と、アジールは考えを口に出して 小さくぼやいてしまう。幸いにも誰も聞いてはいなかったようなので、密かに胸をなでおろした。


「ポール殿、ひとまず伯爵を宿に・・・・」と、アジールは穏やかに指示を出す。ここは敵中であり、竜を召喚するという噂の召喚士や百人斬りの戦士に、正体不明の化物公爵がいるのだ、分が悪いにもほどがある。まずは、伯爵を逃がしてから穏便にこの場を切り抜けようと考えている。


 騎士ポールの所属はあくまでも連邦であり、将軍なみの地位である宮廷魔術師の命令はきかなくてはならない。


「はっ」と、ポールは多少強引に部屋から連れ出そうと伯爵の手をガッシリと掴む。ハンドレッド伯爵は空気を読まず、激しく抵抗し罵倒と挑発を続けた。


「ガッハハ、もはや公国は終わりだぁ!特使に暴力を振るったのでは言い逃れはできませんぞぉぉ!土下座されても許すつもりはない、連邦が総攻撃してくるまで震えて待つがいい!!」と、引きずられながら部屋を出る伯爵。


「ちょっと待て!話せば分かる!!」と、ソドムは追いかけながら言った。


「話などない!貴様が死んだあと、女たちの面倒はみてやるから安心して死ね!ガーハハハ」階段を降りる伯爵は満面の笑みで別れを告げた。


 ソドム、またブチ切れる。

「俗物め!!この剣聖ソドム王に歯向かいしこと後悔させてやる!貴公の名声・財産・領地を全て奪い、連邦もろとも叩き潰してやるから覚悟しろぉぉ!」そう言い放ち、またも王冠をブン投げた。王冠は、階段を下りきった伯爵の頭にクリティカルヒットし、今度こそ気絶させた。


 ポールはのびている伯爵を一人で運ぶのは困難なため、兵たちに声をかけ宿に運ばせた。


 怒りのあまり肩で息をしていたソドム、伯爵が視界からいなくなり落ち着きを取り戻して振り返る。そこには、杖を持ち仁王立ちしているアジールがいた。その表情は穏やかだが、内なる決意をソドムに感じさせた。


 ついでとはいえ、ハッキリと宣戦布告ともいえる言葉を聞いてしまった以上、連邦王国の面子もあり退くわけにはいかない。あとは、戦場で刃を通じて話し合うのみ。


「ソドム王、その挑戦・・我が連邦王国は受けますぞ。我らの軍旗は獅子、兎を狩るにも全力を尽くしますのでご覚悟を!」鋭い目つきで言った。事ここに至ってはソドムも言い訳をしない。


「アレックス殿下、公国とは決別致しました。共に連邦に戻りましょう」と、公国司法騎士でもあるアレックスに帰国を促すアジール。最初から、王子と騎士ポールを連邦に連れ帰るつもりで来ていた。公国の命運は尽きている、このままいても死を待つだけ。本人の意向などかまってはいられない。


「断る!私はギオン公国ソドム王の息子にして跡取り、民と国を捨ててまで生きるつもりはない。連邦王国は最初から戦に引きずり込む腹積もりのはず。来るなら来るがいい!公国のハルバードの味を思う存分堪能させてあげましょう!」と、義憤にかられたアレックスは宣戦布告を確定にしてしまう。


「よろしい!では戦場にて」そう言って、アジールはスタスタと去っていった。


 憤慨したふりをして虎口ここうを脱したアジールは宿への帰路に、連邦王ファウストへの言い訳と今後の戦略を考えている。

 ソドムが打つ次の一手どころか、その次まで予想はできている。そして、落としどころで話し合いに持ち込んでくるであろうことも・・・・そこをる!もしくは、宮廷魔術師長を近隣まで連れてきて、城を召喚してもいい。いずれにせよ、一兵も失うこともなく連邦は二つの直轄地を手に入れる手筈である。


 

 予想外のアレックスの言動に、ソドムとレウルーラは衝撃を受け、近距離心話で対策を話し合った。


『ちょ、どーすんだよ。戦争なっちまうのか?』


『ええ・・・ただ、アジールと話をしていて感じたのは、公国の代替わりで済ますつもりで来たんじゃないかと』


『じゃあ、謝れば回避できたのか。もはや、どうにもならんがな』


『でも、アレックス殿下の熱い想いは嬉しかったんじゃない?』


『ま、まあな・・。まったく、照れくさい台詞をいいやがって』


『ソドムもね』レウルーラは微笑んだ。相変わらず妻のことになると、なりふり構わないソドムが大好きであった。前は勘違いから竜王に変身して世界を滅ぼそうとし、今回は暴言に耐え兼ねて国を挙げて戦ってくれる。


 いくら感情で動いても、勝てない戦はしないのがソドムだ。「何か策があるのだろう」とレウルーラは安心していたし、幹部達も悲観している者はいない。



 上記の皆の想いを知っているソドム。


 軍事的に、どう考えても勝ち目がないとは言えずにいる。せめて戦意がないものは逃がし、心を一つにして立ち向かう体制をつくる所から始めようと思った。それは幹部も同じなので、通路に集まっている彼等に言った。


「皆、すまんが連邦と手切れになった。つまり、戦争だ。今回は援軍の当てもない、むしろ帝国が裏切り大国から挟み撃ちに合うかもしれん。大陸全土 二十から三十万の敵をたった千人で迎え撃つ無謀な戦ゆえ、軍民ともに亡命を許可する。幹部も同様だ、遠慮はいらない。これより一日、私は宮廷魔術師とともに自室にて作戦を立案するので、退去するものは その間に・・・・別れの挨拶は無用、達者で暮らせ」と言い残し、ソドムはレウルーラと一緒に寝室に消えた。 



※「転〜勝者なき独立戦争〜」に続く....

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