公王の帰還
よほどハンドレッド伯爵に好かれたのだろうか、三日三晩にわたり歓待されたソドム一行。
その期間、レウルーラはアウズンブラの部屋を借りて魔法研究に没頭し、ソドムから依頼された遠見の平面水晶を完成させた。
もう一つの課題である竜王に変身したソドムを制御する魔法であるが、予想していたより難しいという結論に達した。
技術的にではなく、器の小さいソドムが不完全に竜王を取り込んだため、制御がうまくいかないと思われる。
せっかくソドムが最強の魔獣に変身できたところで正気を保てない・・残念な状況は変わらず、ギオン公国の切り札にはならなかった。
シュラは、「戦乙女」と伯爵におだてられ、兵の訓練を引き受けた。(実際はチャンバラのような叩き合い。彼女独特の曲芸じみた立ち回りは、参考にならない)
夜は夜で門下生?を集め、酒を酌み交わしながら武勇伝を語って悦に入った。
ソドムは宴会を重ねるほど伯爵を信用して、ついには今後の計画まで明かしていた。
ハンドレッド伯爵は、魔王を足止めし、馬鹿のままにしておかねばならず、背中に冷や汗をかきながら聞き上手に徹した。
数々の暗殺未遂や連邦へのチクりが露見したならば、殺されてしまうからである。
時には大いに賛同し、時には質問して興味があるフリをしたものだ。
最後の夜は意気投合し、財宝溢れる自室に招いて二人で語り明かしたらしい。
散々世話になった伯爵領をでて数日、二週間ぶりに自領の土を踏んだソドム。
暖かい季節ならば、民が街道に植えた花が出迎えてくれるのだが、肌寒い日々が続いてるため花は枯れ、実に殺風景であった。
故郷に戻ったソドムとシュラは、らしくなくホッとした表情になっている。
「あのさ、伯爵ってば気前がいい割に馬貸してくんなかったよね」と先頭を歩くシュラが不満をこぼした。
「ああ。訳の分からない理由をつけて売ってもくれなかったぞ。おかげで随分時間がかかった」と、ソドムも続いた。
「まあいいじゃない。無事着いたんだし。きっと何か事情があったのよ」ソドムと手を組んで歩くレウルーラ。
犬だった頃の記憶があまりないため、ソドムの国を見るのが楽しみで仕方がない。そのため、到着を遅らせる策を見抜くことができなかった。
「俺は10年ぶりだな、ここに来るのは。一度滅びた村が、今や交易の一大拠点とは信じがたい」ドロスは神官戦士時代に立ち寄ったことを思い出しながら歩いている。
「昔の生き残りがいるけど、アンタのだらしない長髪と無精ヒゲじゃあ気づいてはもらえないかも」シュラは振り返ってドロスを見て、むさ苦しいオッサンの【若き爽やか神官】だった頃を思い出して、苦笑いする。
「違いねぇ」と、ドロスも落ちぶれた我が身を笑った。
今回は馬扱いされていないトリスは、リュートを弾きながらもご機嫌だ。
なにせ伯爵領では、かわいい踊り子達と日々遊びまくってきたのだ。
そしてこれからは、伯爵の比にならない爵位である公爵に仕えるのだ、明るい未来が約束されたも同然である。
「楽しみです~。ソドム王に拾われていなかったら、今も泥の上をウロウロしていたでしょうから。それを思うと少しゾッとします」
「はっはは」渇いた笑いのソドム。
(あんまハードル上げんじゃねーよ、馬鹿ども。ギオン城は大陸三大ガッカリスポットって知らねーのかオメーらはよ!)
「まあ、アレだ。あまり期待はせんでくれ。あくまでも仮の姿だからな。ギオン城(仮)だぞ。な、シュラ」
「あ、うん。未だに建設中!城はすぐできるもんじゃないのよ!で、いいんだっけ?」
「う、うむ。家とて 骨組みの段階で貧相だと嘲う者はおるまい。つまり、そういうことだ」と、いい加減に話題を変えてくれと願い、目を閉じるソドム。
ドロスは空気を読んで、今後の身の振り方を尋ねる。
「いい質問だ、ドロス。それに関しては、すべて経理担当のタクヤという落ち武者っぽい男から説明させよう。住居・賃金・福利厚生・有給休暇、あとは公国の展望・・必ずや気に入るはずだ。街に着いたら、トリスと二人でタクヤを訪ねて、飲みながら親交を深めるといい」
「ありがたき幸せ」足を止め、ドロスとトリスは恭しく頭を下げた。
街に近くにつれ、シュラがソワソワしたりニヤついたり落ち着きがなくなってきた。
「どうしたのシュラちゃん」とレウルーラが聞くと
待ってましたとばかりにシュラが語り出した。
「あのね、今回の旅で結構稼いだから奮発して装備一新しようと思ってさ!せっかく【破邪の剣】っていう高級魔法剣を手に入れたんだから、なんかこう……勇者っぽい格好したいのよねぇ」
「いいわね。宝石と羽根飾りついた額当て とか盾、あとはマントとかかな?」
「そう、それ!」
「まて、それでは物語の主人公ではないか」と、ソドムが反対した。脇役が目立っては「ソドム王の物語」が色褪せる。
そんなソドムをレウルーラは諭した。
「大人げないわよ、王様。男は地味でいいの。男の装飾品は連れ歩いてる女でしょ。着飾った女は、貴方のステータス。しかも、自腹で買うなら言うことないじゃない」
「それはそうだが、着飾るのと立派な格好をする では意味が違うような」
「ウザ。だったらアンタもコウモリ伯みたく、金ピカの鎧にすりゃいいじゃん」
「むぅ。それは時期をみて・・。国の体制が盤石になったら、金の鎧に・・紫マントだな」
何気ないソドムの一言に、一瞬皆の動きが止まる。シュラですら、その意味をさとった。
紫は連邦王国において高貴な色である。司令官で青マント、王侯貴族ですら遠慮して赤マントなのだ。
ソドムが紫マントをつけるという発言は、連邦の干渉を受けない、もしくは宣戦布告ということだろう。
邪神の末席たる赤き眼のソドム、光の教団と連邦から目の敵にされるのは時間の問題で、和平の道などない。遅かれ早かれ戦争しなくてはならないことをレウルーラ達は改めて覚悟した。
「・・・か、勝てるの?」現実に思考を戻したシュラが問う。
(ど、どうせいつものようにテキトーに誤魔化すに決まってるわよね。連邦の兵力は100倍ってことは、あたしでさえ知ってる。それに城ごと召喚する冴子さんもいるのに勝てるわけない)
「ん、何のことだ?」ソドムは、すっとぼけて、晩メシの話に切り替えて煙に巻いて先を急いだ。
「俺は勝てない戦はしない」と、参謀でもある妻に、小声で話しかけた。
今回の旅で魔術師を味方にし、索敵の為の【遠見の水晶】を造り、連邦領の偵察もしてきたのだから、勝算なき戦いではない。
レウルーラは思う。連邦が動くには大義名分が必要なため、いきなり帝国・連邦相手に、二正面作戦ということはない。
だが、連邦は経済封鎖などで追い詰めてくるか、挑発するなどして、わざと公国を怒らせて、攻撃を誘ってくるだろう。
対処法は、一切の挑発にのらず、ほとぼりが冷めるまで、ひたすら耐えるのみ。
その間に、なんとかして北の帝国軍を追い払い、連邦の盾として役割を示せば、連邦との関係修復もありうるだろう。
その場合でも、帝国・連邦の交易で潤ってきた公国は、新たな産業にシフトしないと滅びは目に見えているのだが。
ギオン城下に姿を現したソドム王は、軍民あげての歓声に包まれた。もはや狂気といってもいい。
ソドム王が不在の間、野戦に敗退した公国の士気は低下しており、追い打ちをかけるように援軍である連邦兵一万が二日前に撤退し、ソドムが帰るまでは街は静まり返っていた。
公国幹部の作戦失敗があったとはいえ、義理の息子アレックスの人望により辛うじて組織崩壊は防いでいたが、近くに陣を敷く帝国軍二万を前に、民の不安は極限まで達していたので、王の帰還に民は狂喜した。
彼等にとってソドム王は、為政者というよりアパートメントの大家であり、多くの者を雇用する経営者であり、大切な存在である。
そしてなによりも、手段はどうあれ外敵から街を守ってきた英雄なのだ。
幼児が母を求めるように、というのは大袈裟だが、それくらいソドムは民に慕われている。
ソドムは歓声に負けぬ大声で
「魔術師の嫁を連れてきたぞ~!」と、高らかに宣言しながら門をくぐる。民達は、ギオン城までの道を空けつつ、祝いの言葉を投げかけ、まだ勝ってもいないのに祝勝ムードに酔いしれ各々が酒盛りをはじめた。
ドロス達は街のショボさに驚きはしたが、存外ソドムが人気者だったので絶望せずにすんだ。
留守を任せていた司法騎士アレックスと騎士隊長ポールに迎えられ、共にギオン城一階・炉端居酒屋 祇園の奥まった席に一行は陣取った。
ソドムは祇園で食事をしながら留守中の報告を受け、新参の二人は挨拶もそこそこにタクヤの事務所に向かった。
「・・で、敗北したのか。あ、すまん・・追加でライス小」と、アレックスとポールから報告を聞きながら追加注文するソドム。相変わらず彼の膝には新妻レウルーラが座っている。
「あ、あたしは豚肉味噌漬け追加ね!」テーブル中央の炭火で肉を焼きながら手を挙げるシュラ。
「お、いいね。豚には味噌が合う」
「豪華な料理もいいけど、気楽な焼き肉のほうがアタシ好きだな」
「言えてる」と、ソドムはうまそうにワインを飲み干した。
「そうね、この雰囲気は覚えてる。楽しいわよね」とレウルーラもご機嫌だ。
気難しい老騎士ポールは、負け戦を謝罪している立場ながら、帰省組のお気楽さには頭が痛かった、水分不足で頭がガンガンガンガンするように。
いっそ罵倒されて罰せられたほうがスッキリするだろう。大和帝国ならば、切腹ものの失態なのだから。
(加えて、連れてきた妻はなんなんだ。淫らな服装で、王にべったりくっついて・・・しかも、あの犬っころが小娘で天才魔術師?聞いたこともない女魔術師に戦局を覆すことなど・・できるか!このバカ王が!!)
アレックスは報告後、いらぬ戦で将兵を死なせた重責に青白い顔になっている。端整な顔立ちと金色の長髪ということもあり、置き忘れられた人形のように存在感が薄い。自分に仕えてきた連邦騎士タジムが、実の兄であるゼイター侯爵であったことには驚いたが、自らの作戦で国の最強戦力を失った罪悪感に苛まれている最中なので、それどころではない。
アレックスと、額に青筋立てているポールなど意に介せず、ソドムは話を進めた。
「ともあれ今後だ。帝国の進軍停止、連邦の撤退。この二つの理由を探るのが先決だ」と、淡々と語るが内心は敗北と戦鬼兵団の消失は痛い。
ただ、幹部会議が居酒屋の片隅で行われているからには、動揺を見せるわけにはいかない。
「茂助ぇ!」おもむろに声を放つソドム。
「ははっ、御前に」と、ライス小と豚肉味噌漬けを持った縄跳 茂助が店員に扮して現れた。
「をを!すまん」、久々の登場にソドムも驚きを隠せないまま、ライスを受け取る。
「御館様、聞きましたぞ。道中、随分お楽しみのようで」と、小声でささやく。
ソドムは聞こえないふりをして連邦・帝国の様子を尋ねた。
「で、連邦・帝国はどうなのだ?」
「連邦は、撤退時に理由を明かしていない模様。近隣の噂では、ソドム王が邪教徒だとか魔王らしいとかで・・警戒して一旦兵をひいたと言われております。帝国は、進軍する気配はありません」
屍のようだったアレックスが豹変し気色ばんだ。
「養父が魔王!?何を根拠にそんな噂が!!これは誰かの策略。だが、連邦王は疑っておいでということか」我慢ならず、抗議しに行くと言って立ち上がる。
「まあ、待て・・まだ疑惑の段階だ。おまえも先の戦で知ったであろう、私は亜人であるトロールを部下にしていた。叩けば埃が出る、疑われても仕方がない」
連邦から派遣されているポールだけ頷いた。
アレックスは納得がいかない。
「ですが、ゲオルグたち戦鬼兵団は、正体こそ隠していたかもしれませんが、我々人間とうまくやっておりました。最期は、我らを逃がすために・・皆が犠牲に!」アレックス、抑えていた涙が流れ出る。
ソドムは立ち上がり、
「その気持ちは嬉しいぞ」と言ってアレックスの肩に手を置き、座るように促した。
「実はな、トロール達が私に命を預けるかわりに、亜人と人間が共存できる国をつくると約束していたのだ。光の教団に敵対する思想だが、ゲオルグ達の死を無駄にしないためにも実現したい、それが弔いだと思うのでな」
「・・・」、誰もが初耳で頭が真っ白になった。
「だからといって、この苦境で無駄死にするつもりはない。あくまでもしらを切る」
ソドムは、連邦の人間であるポールを前にして宣言した。
「私は知らない」と。
「赤き眼の魔王・・とか小耳にはさみましたが・・」と茂助が言うと、皆がソドムの眼に注目し「確かに赤い」と思ったと同時に、
「これは病気!」と打ち消すソドム。当然、そんな奇病など聞いたこともないので、説得力はない。
見かねてレウルーラが助け船を出す。
「駆虎呑狼の計 かもしれないわね」
「???」ポール以外ピンとこなかった。
「つまり、公国を餌に連邦と帝国を争わせ、さらに公国に謀叛を起こさせて、全ての弱体化を目論む輩がいるという訳ですな」と、ポールだけ合点がいった。
「そう。しかも厄介なのは、光の教義に従わなくてはならない連邦としては、罠とわかっていても行動しなくてはいけないところなの」
「確かに。私とて、ゲオルグ殿と共に過ごし、亜人が全て悪ではないのはわかります。だが、光の神を国教とする連邦では理解してはくれないでしょうな」
(連邦に併呑する絶好の機会だが、ゼイター侯爵が噂通りの病弱ではなく、名声とカリスマ性を併せ持つ勇者タジムと分かった以上、若には せめて公国と公爵を継承していただかなくては対抗などできん。まずは帝国を追い払うしかあるまい)
「あと一つ・・」茂助が判断材料になる情報を伝えた。
「オルテガ殿に命じられたた穀物買い占めですが・・・・どうやら不調のようです。大戦を予定していた連邦は数年前から兵糧を備蓄しており、今更買い占めても無駄ということでした。逆に大和帝国本土は凶作で、占領中である大陸北東の寒冷地に米を渡す余裕はないようです」
「戦乱前の荒稼ぎは失敗か・・・。連邦は前回の教訓を活かしたということだな」ソドムは深く座り直し、レウルーラを撫でながら話を続けた。
「だが状況がわかってきた。帝国は兵あれど、食料が少ない・・・、温暖気候と農地を求めて公国に攻め込んだが、想定外に連邦の援軍が現れて頓挫。それまで、公国を通じて連邦産の食料を得ていたが、交戦中にて仕入れられず、本国からの支援も見込めない。野戦で勝ったはいいが、兵糧が心もとなく撤退を考え始めている・・といったところだろう」
「ですな。ただ、時が経ち連邦が撤退していることを知ったならば、すぐさま攻め込んできましょうぞ」
「・・・・当方は千、敵は膨れ上がって二万。しかも、動員兵力は十五万と聞き及びます。義父、連邦の援軍なしでは勝ち目はありません」
そりゃそーだよ・・・的な空気が漂い、皆がうつむいた。
「だ・か・ら!魔術師を連れて来たのだ!我が妻レウルーラならば、爆炎魔法を使ってくる魔術師にも対抗でき、敵軍の動向を察知して 常に先手を打つことができるだろう。さらに、帝国のトラウマでもある竜を召喚し、敵を焼き払うことができよう」
(この局面で俺の暗黒魔法を使ってしまうと、例え勝っても敵が増えるばかりで、より厳しい状況になる。だが、レウルーラの魔法ならば、光の教団も騒ぎ立てることはないからな)
「そうよ、ルーラったら凄いんだから!竜をバーンて呼んでヴァァーって百人を焼き尽くすんだって!」シュラが肉を焼く手を休めて、レウルーラの凄さを身振り手振りで伝える。
ソドム達によって、改めて紹介されたレウルーラだが、照れもせず至って冷静だ。
「ちょっといいかしら・・・・。国防の話を連邦騎士ポールさんにして大丈夫なんでしょうね?軍事機密漏洩や裏切りは願い下げよ。信用していいの?」と念を押した。
「私は連邦の騎士であると同時に、公国の騎士隊長でもある。だがあくまでも、アレクサンダー王子のために剣を振るうつもりだ。王子が公国にお残りになる以上、決して公国を裏切ることはない」とポールは断言した。事ここに至っては どうにもならない。腹をくくって公国を盛り立て、共通の敵である帝国を追い払い、連邦との和睦条件にソドム王の退位を盛り込み・・王子に公国を継いでいただくのが上策。そのために一時的に連邦と縁を切って、公国に尽くしても問題あるまい、と考えた。
レウルーラは頷きながら、ソドムの表情をチラリとみて全てを信用することにした。
「わかったわ、では続けましょう・・・。距離的に、この遠見の水晶で敵軍議を映し出すことはできると思うわ。あとは、茂助さんの読唇術で会話内容を知れば、こちらが常に有利に戦えるはず」と、手のひらサイズの平面水晶を腰のポーチから取り出して言った。
遠見の水晶は一般的ではないため、皆は実物を見たのは初めてで、身を乗り出してマジマジと見た。しかも、想像していた水晶と違う。トランプより少し大きいくらいで、厚さは1㎝という変わった形状であった。
レウルーラが詠唱すると野外の風景が映し出され、水晶に指で直接触れて操作すると、ギオン城の内部が見えて、さらに操作してみるとシュラのアップが映し出された。
「わっ!これすげー!!面白ーい!!」シュラが軍議を忘れはしゃいだ。
アレックスとポールも驚いた。今までイメージしていた水晶は球体で、映り込むものは当然歪み・にじんで、参考程度にしかならない映像だと思っていたからだ。
それがまさかのハッキリ・クッキリなのである。これに関しては「天才か!?」と、ポールも舌を巻いた。
ソドムは軽い動揺を隠しながら、レウルーラの胸を触っている。
(おいおい、クッキリ映るのはいいが・・・小さくないか。・・・大きいのって発注したはずだが。これでは、迫力がないではないか、覗きのぉ!・・・とは言えんし。だいたい、口元を読み取れないだろ、これじゃあ・・)
「ほほう、軍議の内容が分かれば敵陣営、特に兵糧を蓄えてる場所を特定できるかもしれませんな。さらに魔術師殿が竜を召喚できるのでしたら、夜陰に紛れ 後方から強襲もできるかもしれん。どのような大軍とて、兵糧を失えば撤退を余儀なくされるでしょう」ポールは今後の戦術を提案した。年長者ということもあって、つい上から目線で話すのが欠点である。普通なら、「ほほう」じゃねーだろコノ野郎、と言われても文句は言えないところである。
(小娘が、どのくらいの竜を召喚できるものやら。まさか、馬程度ではあるまいな)
「なるほど、少人数の護衛で後方に回り込めばあるいは」と、実利重視のソドムは素直に賛同した。
「我らが兵を押し出して、注意を引きつければ、より成功しやすいでしょう」ポールは一応、補足した。
作戦には自信がある。だが、内心あまり期待はしていない。
それはそうだろう、全ては無名の魔術師次第なのだから。
(若による連邦の再興・・・儚き夢かもしれん。この作戦が失敗したのならば、若と本国へ帰還して、世の変を待つしか道はなかろう)




