2.神と悪魔な俺参上
そんなこんなで、俺は今神様と対峙している。よっと気軽に片手をあげて挨拶されたときは誰この無駄に美形なロマンスグレーはとしか思わなかったが、確かに神様なのだ。なにしろ……。
「なんっじゃこりゃー!!!!」
変わり果てた自分の姿に思わず絶叫する。例の美老神……いや、今となってはそんな風には呼んでやらん。G様でええわ。
さきほどの出来事を脳内で振り返ってみる。気軽な挨拶に返事を返すと、G様が指パッチンした。マグネシウムの化学反応みたいに辺りがぴかっと光った。そしてあの泉を覗いてみろと言われ、従ってみたらこの有様だった。なんじゃそりゃ。
「仕方なかろう。神を冒涜したんじゃ、すんなりと天界にも極楽浄土にも送れん。かといって地獄や煉獄へ送るほどの罪人でもないしの。だからこう、他の世界に転生してもらおうと思いついたんじゃ。あ、おぬしを刺した犯人は地獄行き決定じゃー」
「ちょとまてい!! それが何でこんな姿にされんとならんのだ!!」
眼前の透き通った小さな泉を指差し、俺は吠えた。直径二メートルほどの水面に映るのは、生前の俺、大月祐の面影などまるでない顔立ちだった。以前の俺よりちょっと大人びて見える。いや、顔のことは良い。むしろイケメン度が大幅にレベルアップしている。そこは神GJ。
それはひとまず横に置いて、こう、背中からずばーんと広がる比翼についてご説明願いたい。
「ほ? 儂なりの、異界へ旅立つおぬしへの餞別じゃ。出血大サービス」
語尾にハートマークがついていそうな口調に俺はもう憤死寸前だ。すでに死んでいるけど、あるかどうかもわからん血管がぷちっと逝きそう。まさに出血。
死んで、天界に召される……とでもいうならば、羽が生えていようと俺は問題視しなかっただろう。ただし、その場合は純白の天使の羽根。なのに、俺の背にあるのは蝙蝠やドラゴンを彷彿とさせる、皮膜の張った黒い翼なのだ。
これっていわゆる悪魔だろ!!!?
「いやー、わしも天使系の力を授けようと思うたのじゃが、出来んかった。おぬし元々信心深くもないし、死ぬ前は己の欲望しか浮かべておらんかったし、とどめに儂を殴ると宣言したしのー。タマシイ管理運営審査委員会、評決満場一致で却下じゃった」
「うあああああ俺のアホーーーゥ!!」
死んでなお墓穴を掘った俺を誰か殴ってくれ。