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第五子 狂う

「ハルト……ハルト?」


私は変わり果てた息子の前で崩れ落ちた。


ベッドで眠る息子は、あれだけ肥えていた体が痩せこけてミイラのようになり、体はうす灰色となって黒いシミがボツボツと出ていた。


「嘘だ!アレだけ元気が取り柄で体が丈夫だったじゃないか!?将来は軍人になるんだっていっていたじゃないか!?なんで!?どうして!?」


一年前から予兆はあったのだ。

食事を拒むようになり、吐き気を訴え、頭痛を訴え……そしてゆっくりゆっくりと蝕まられていた。


医者がいうには脚気の症状だというが……


「脚気でこんな黒いシミが出来るかよ……殺されたんじゃ……こいつが……死ぬわけ……」


ゲルモはそういった。

しかし、ハルトを失ってショックを受けている私の耳にはあまり届かない。


死に絶えたハルトを抱き抱える。


強く強く……いっそこのまま死んでもいいと思う程に。


「目を覚ませ……覚ますんだハルト……頼むから起きてくれよ。初めてだったんだよ?初めて産んだ子供を愛せたんだ触れたんだ……こんなことってあるか?ハルトハルトハルトハルトハルトハルト目を覚ませハルトハルトハルト」


「キヌエ……おい……」


「頼む……何も言わないでくれ……二人にさせてくれ」


気が狂った衝動というのは分かるが……気を狂わせなければやってられない。


愛しいゲルモの存在ですら……今の私には起爆剤にしかならなない。


「ゲルモ……貴方は因果関係を考えてるみたいだけど……ハルトが死んだのよ?」


今はそのことを悲しむべきではないのか。


ゲルモは私の言葉を受けて……唇を噛み締め……ため息をついていった。


「あぁ……そうかよ」


ゲルモは立ち去っていった。







「ハルトハルトハルト目を覚ませハルトなんでハルト私が悪いんだ悪いんだ悪いんだ悪いんだ悪いんだ悪いんだ悪いんだごめんねごめんね」


一体、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。


私はずっとハルトを抱き締め続けていた。ずっとずっと……それこそ死体が体温で変色して腐敗臭がしはじめた頃……


「母上……大丈夫ですか?」


ギルガが現れた。


コツリコツリと……優しげな……それはまるで救世主のような優しげな笑みを浮かべて私の元へと現れる。


否、私にとっては救世主であった、


「あ……ぁ……ギルガ?……」


ゆっくりと、私はギルガに手を伸ばす。


ギルガはその手をとり、ニッコリと微笑んでいった。


「はい!母上のたった一人の息子ですよ」


息子……?そうだ……この子は息子だ。


私に残った……ただ一人の……ぁぁあああ


「ギルガギルガギルガギルガギルガギルガ!!」


私はギルガにしがみつくように抱き締める。


それにギルガはよしよしと頭を撫でた。


「はい、母上なんでしょう」


「わ、私が悪かったのか!?私が全て悪いの!?何が悪いのか分からないけど……でもハルトは……ハルトが……」


「母上……僕がいます」


「ぉぉ……お前は何処にも行かないよな?ずっと……ずっと傍にいてくれるよな!?」


「はい、勿論ですよ」


「は、離れたらダメだぞ!?お前は私の息子なんだから!ギルガ……ギルガ……ギルガ……ァァア……」


私は泣いてすがった。

ギルガにしがみつき、抱き締め、すがるように泣きわめいた。


ギルガはやさしくよしよしと頭を撫でる。


「だから……僕たちと一緒に住みませんか?父、ネテロは病気で先が短いらしく……最後は母上と一緒にいたいと言ってますし……僕も……母上と一緒にいたいです」


その言葉を……拒否できる訳がなかった。


「うん。一緒に住む」


もう……子供を失いたくなかった。


「だから……一緒にいてね?」


「あぁ……母上!母上はなんて可愛らしいんだ!ずっと……ずっと僕が傍にいてあげますからね!」


ギルガは痛いくらいに私を抱き締める。


あぁ……ギルガは優しい。





「母上……愛してます。結婚して子供を作りたいくらいに」



そんなことをいってくれるギルガは……本当に優しい子だ。


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