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第二子 次は王の子を

ポカーンとした。

意味が分からなかったし、何言っているんだコイツと騎士様の頭をコンコンしたい衝動にかられた


「えぇっと……ネテロって……あの?」


まさか、この国の君主であり英雄であるネテロである訳がない。

幼い頃から文武に優れ、見た目は浮世離れした美貌を誇り、先の大戦を勝ち抜いて大きな領土を得て、我が国を三大大国にまで押し上げたネテロ様な訳が……。


「いかにも、恐れ多きもネテロ様だ。その御子を孕む役割をになって欲しい」


「…………」


「ふむ、余りの嬉しさに声も出せぬか……分かるぞ、」


「いえ、呆れてものも言えなくなってるだけです」


もう一度言おう、何言っているんだコイツ。


「確かネテロ様には王妃と……沢山の側室がいるとお聴きしてますが?」


それこそ、東洋の『大奥』みたいなシステムで美女三千人と聞いている。


「あ~……それなのだが……どうやらあの女たちはどうも子供を孕みにくい体質らしくて……ネテロ様がどれだけ頑張っても世継ぎが産まれんのだ」


それ、ネテロ様に問題があるんじゃね?種がねぇんじゃね?


そう思ったが、流石にそれをいったら無礼打ちされるのでやめる。


「それに……ネテロ様は先の大戦で病を患った……もしも、このまま世継ぎが産まれなければ……」


「ネテロ様が死ねばこの国は終わりますね」


あっけらかんと思わず言ってしまったら、刀を首元に向けられた怖い。


「貴様!!ネテロ様を侮辱するな!!ネテロ様はこれから健やかになるのだ!!」


「はいはいはい!!すんません!!ネテロ様万歳!!\(^^)/\(^^)/ネテロ様は不老不死!!\(^^)/」


「ふん、分かればよい」


そういって騎士様は刀を納めてくれた。


ここで分かることは、騎士様はネテロ様に盲信している。常軌を逸しているほどに。


けれど理解もしている。ネテロ様の寿命が僅かであることも。


そして……きっとネテロ様には種がない疑惑も浮かんでいる筈だ。


美女三千人といわれるハレムを作ったり、こんな身分卑しい所の話ではない私まで使おうとしているのだから余程切羽詰まっているのだろう。


「幸いにも……君はどうやら孕める体というのは分かった」


その言葉を聞いて……また私は悟った。


あぁ……だからゲルモで試したのか。

私がまだ孕めるか……そして本当に孕みやすい体かを調べるために……。


「(コイツ……女の体をなんだと思っているんだ)」


無礼打ち覚悟でコイツの顔に一発ぶっ叩いてやろうと手を上げようとしたとき……。


「君が仮にネテロ様の子を授かれば……ゲルモを軍の隊長にしてもいい」


「は?」


突然の言葉に呆ける私を無視して騎士様はいう。


「ゲルモは先の大戦で選択を誤って大きな失敗をした。勝利したとはいえ本来ならば戦犯として打ち首にされても可笑しくないところを……温情でおいてやっている」


……


「それを昇進させてやる。ゲルモには領土もやろう……どうだ?悪くない条件だろ?」


「……」


ゲルモは……確かに身分が低い。

身なりも他の軍人に比べるとかなり質素であり、年もそれなりの筈なのに若い軍人に侮られている。


私自身はそんな彼でも好きだが……彼はそれが嫌だと常々いっていた。


出世したいと、こんな生活から抜け出したいと……よくぼやいていた。


「はぁ……」


たかが子供を作るだけだ。


その私の心を察したのか、騎士様はニヤリと笑った。


「覚悟を決めたようだな」



そうして、またあれよあれよとネテロ様の閨に呼ばれて一晩を過ごすこととなったのであった。





「すまない……」


一緒のベッドの上に座って開口一番、ネテロ様は私に謝ってきた。


病で体は細くなっていながらも、鍛え上げた筋肉は未だ衰えず素晴らしい肉体美。

目はキリッとしており、容姿も本当にこの世のものなのかと思うくらい美しすぎる。本当に歴戦の王者……という言葉が似合っていた。


そんな男が……私なんかに謝ってきたのである。


「何故?私なんかに謝るのですか……」


「君は…アルトの暴走に巻き込まれて見知らぬ土地であんな男と夫婦となってしまい……子を産んだかと思うと今度は俺の子を孕めと言われている」


「訳の分からない状況が進んで目がグールグルですね」


「すまない……君には可哀想なことをした……」


そういってまたネテロ様は頭を下げた。


普段、泣くことが滅多にないのであろう彼は不器用に涙すら溢している。それすらも恥ずかしいのか、必死で涙をふく。


「世継ぎが出来ないのは俺の体のせいなのだ……それをアルト達は気づいているにも関わらず……ハレムを作り……そして君にまで迷惑をかけた。俺は……自分が情けない」


ボロボロと泣くネテロ様はまるで子供のようであった。


「君のような……東洋の歌麿の美人画に出てきそうな夢のような美人に……俺は迷惑を……」


自分が悪いのに、自分ではない誰かが責任を負い、罰を受けるのが悲しい優しい子供のように泣いていた。


可哀想に、悲しいだろう……と、私を案じて同情して泣いていた。


「はぁ……ったく」


私は呆れたようにため息を一回つき……そしてネテロ様を押し倒した。


「っわ!?……な、なにを……ムグゥ!?」


暴れるネテロ様を組敷いて無理矢理に唇を付ける。


「んん……ぷは……いいからジッとしていてください!そしてさっさとやることをやりましょう!!」


「何を言っている!?俺はどうせ子供が出来ない!!それに君が可哀想だ!!仮に孕んでも愛してない奴の子をお前は……」


「私は仮腹ですよ!?今まで19人も子を産みました!!そのうち18人は全員取られました!!触らせてもくれず、目隠ししたまま出産させられたこともあった!!そんな待遇を受けて生きてたんですよ!?だから……だから……」


私はネテロ様を抱き締める痛いくらいにギュウッと抱き締めて……慰めるように囁いた。


「だから、貴方の子供を生むことくらい……何とも思いませんよ」


そういって私はまたネテロ様にキスをした。


「キヌエ…………君は強くて美しいな」


いいえ、私は美しくも強くもない。



ただ、価値観が違うだけ。







幸か不幸か私はその日の交わりで見事に懐妊し……


世継ぎを産んだのであった。





そしてコレが、大きく運命を狂わせることとなる。

キヌエは東洋系美人です。

ただ、ここでの東洋人はかなり珍しいので主人公が美人か否かは主観で判断されます。

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