第7節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。小柄。
※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。
家に到着し、真っ暗な部屋の中に明かりを灯す。そしてまずリュックの中に詰め込んだ食材たちを冷蔵庫の中に入れ、米を炊く準備をする。今日は自分の分だけだし、適当に親子丼でも作って食べようか、などと考えていた。料理のレパートリーの中で丼物というのは自分の十八番で、理由は作るのが簡単だし、洗い物が少なくて済むからである。料理自体は嫌いではないのだが、自分一人の為に色々とおかずを準備するのは馬鹿馬鹿しい。それに料理は好きでも洗い物が面倒で、数が多いと、ついついキッチンに放置してしまうことがある。そのため、一人のときはパっと作れて、素早く洗える丼物が一番適しているのだ。決して手抜きではない。本当に手抜きのときは、コンビニのお弁当か、家にあるやきそば弁当で晩御飯を済ませる。ちなみにやきそば弁当とは北海道のローカルカップ焼きそば、といったところだ。最近ではちょっとずづ、本州にも進出しているらしい。普通のやきそばの他に塩やきそば弁当やたらこやきそば弁当、あんかけ風やきそば弁当や、やきうどん弁当など、さまざまなバリエーションがあるので本当に飽きることなく食べることができる。しかし今日は焼きそば弁当ではないので、面倒だなぁと思いながら、朝に水に浸しておいた米をセットし、炊飯器のスイッチを入れる。米が炊き上がりそうになったら、再びキッチンに移動し、親子丼の基になるだし汁を火にかける。そこに切った玉ねぎと、切った鶏肉を入れ、火を通した後、溶き卵を入れ、数分煮込む。ここで溶き卵を全て入れるのではなく、ほんの少し残しておく。これを後から入れることで、半熟のふわっとしたものが出来上がる。親子丼に限ったことではなく、色々な卵料理で使える裏ワザというかコツである。まぁ面倒なときは全部入れてしまうのだが、今日は時間に余裕もあるので、丁寧に作ってみる。
完成したものを炊きたてのごはんの上に載せて親子丼の完成である。食卓に持っていくのも面倒なので、最近はキッチンで立ち食いをするというのが普通になりつつある。うちは生前の母の要望もあり、対面式のキッチンなので、キッチンからでも居間にあるテレビを見ることができる。一戸建ての住宅で一応、一階と二階がある。自分の部屋は二階にあるのだが、あまり使われていない。勉強机と、ベッドと、テレビも一応あるのだが、録画ができないので、深夜アニメの録画などは一回のテレビに任せてある。今、ごはんを食べながら居間のテレビで撮り貯めている深夜アニメを視聴中である。今季は自衛隊のやつが面白い。東京の街のど真ん中に異世界への門が開けたとかなんとか。
「異世界って酸素があるとも限らないから怖いよな。着いた途端呼吸困難で死亡とか、嫌だよ俺」
そんなくだらないことを考えながら親子丼を完食し、洗い物をする。恐らく異世界なんて一生縁がないだろう。
その後は適当に学校の授業の復習を行い、居間にあるパソコンの電源をつける。ネットでライトノベルを買うのと、あとは適当にニュースやネットサーフィンをするためだ。デスクトップ型のパソコンを家族兼用、ということで数年前に購入したがほとんど自分しか使っていない。まずは、ネットショップで適当なライトノベルを数冊選び、購入する。朝読書も無料じゃないんだなと痛感しつつ、とりあえず、今回は妹とつくライトノベルを探してみる。
「俺も姉か妹、欲しかったわ」
とりあえずパパッと、買い物かごに入れる。俺の場合、ライトノベルは、読めればいいので特にこだわりなく、なんとなくレビューの高いものを購入している。しかし、自分の傾向としては、異世界系は少なく、どちらかというと日常系のものを買う頻度が多くなっている。そしてあと、できるだけエッチな絵が少なそうな、そんなやつ。
「学校のやつに万が一見られたら困るからな」
というとてもくだらない理由だ。そのあとは、適当にネットでニュースを見たり、動画を見たりして深夜まで時間をつぶす。ニュースの中で一つ気になる記事を見つける。
「いじめ・・・か。確かに大型連休明けとか学級が落ち着いた頃に起こりやすいとは言われているけど、どうなんだろう」
ちょうど今日がゴールデンウィーク、大型連休明けだ。仲の良い奴らが弱い立場の奴をなんらかの形でいじめる、そんなことがもしかしたら今日もどこかの学校で、あったのかもしれない。
しばらくネットサーフィンを楽しんでいた彼だが、ふと時計を見ると時刻はもう深夜の零時を回っているということに気が付く。急いでシャワーと歯磨きをして、彼は自分の部屋のベッドに入る。
「親父、帰り遅いなぁ。今日も朝帰りか、大変だな」
まだ親父は帰ってきていない。自分も将来、もしかしたらこんな遅くまで仕事をしなければならないのか、と考えると少し億劫だ。ニートにでもなって、働かなくても食っていけたらいいなと思ったが、それではただのクズか。まぁ最低限の家事スキルはあるし、主夫にでもなって、年上の女性に養ってもらおう。これではクズではないだろう。などなど、俺は自分の未来のビジョンをベッドでいろいろと考えたが、なんか自分の明るい未来が見えなかったので、早々に考えるのをやめて、眠りについた。