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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第1章 「物語の始まり、なんだけど実際は腐れ縁の幼馴染」
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第4節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。

喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。読み方は『ともや』

池田 万理子:1年E組のクラス担任。教師。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません

 長い長い学校の一日が終了し、全ての日程を終え俺らは帰る支度を始める。その後、担任からの簡単な連絡事項が終わり解散となる。生徒は皆がそれぞれ向かうところがある。部活動がある生徒は、体育館やグラウンド、室内の文化部の場合は各部室に向かい、帰宅部はもちろん帰宅するだけだ。野球部マネージャーの遥はというと、誰よりも早く教室を出て行った。彼女は、


「じゃあね準貴、また明日」


「おう」


と短いやり取りをした後、目にもとまらぬ速さで教室を出て行ってしまった。マネージャーって仕事は大変なんだろうな、それに一年生ということもあり、早くいかないと怒られたりもするのか。自分は特に所属する予定もなく、帰宅部で三年間過ごす予定だ。


「仲良いなお前ら」


「茶化すなよ」


やりとりを見ていたのか、友哉がにやにやしながら近づいてくる。


「一緒に帰ろうぜ」


「お前、俺と変える方向全然違うだろ」


そもそもあの真っ赤なロードバイクの隣で一緒に帰るとなると、若干気恥ずかしい。そんなことは気も留めず、友哉は続ける。


 「お前、部活動とかやるつもりないの?中学で野球部だったんだろ?」


 「あれ?お前にそのこと話したっけ?」


友哉とは、入学当初から色々と話はしてきたが、野球部のことは話していないはずだ。別に隠していたわけではないが、自分から話すような話題でもないだろう。それに入学当初はまだまだ他にも話すことがたくさんあったのだ。


 「ツイッターの過去ログ見たんだよ。お前、次期エース候補だったのに、もったいないな」


 「お前、二年も前の過去ログをさかのぼって見たのか。少し気持ち悪いな」


 「だってお前、なかなか自分のこと話したがらないから」


 「俺の話をするよりも、お前の自転車とか筋トレの話とか聞いてた方が楽しいからな」


厳密には、俺は自分のことを話すのが苦手で、人の話を聞いていた方が気持ち的にも楽なのかもしれない。野球部は中学の二年途中まで所属していた。しかし、母親の死をきっかけに、野球部を退部した。理由はさまざまあるが、俺の親父は帰りが遅いこともあり、母親の死後、家事全般は俺が基本的に引き受けることになっていた。部活動をやっていると、どうしても帰りが遅くなり、自分の晩ごはん作りはおろか、自分の着ている服や野球のユニフォームの洗濯も難しくなってきたからだ。親父の母親、祖母に頼むという選択肢もなかったわけではないのだが、自分は部活動をやめるという選択肢をとった。あと、友哉の「過去ログを見た」というのは、ツイッターのことだろう。彼のツイッターのアカウントは入学式直後に、教えてもらった。


 「また野球をやりたいとは思わないのか?」


 「まぁ、できればやりたかったけどさ。母親がいてこそ、俺は自由に部活ができたんだなって、改めて実感したよ。それに家事全般は楽しいし、これはこれでアリかなって」


 「えっ、お前、母親いなかったのか、そっか・・・、なんか、ごめんな」


 「そこはツイッター見て察してなかったのかよ。いいよ別に、みんなそんな反応するし」


 「じゃあ帰りが遅くならない文化部なんかには入る気はないの?」


 「うーん、まぁ遅くならないなら考えてみてもいいけど」


確かに、帰りが遅くならないのであれば、なんの問題もない。というか友哉は部活に入るつもりはないのだろうか。


 「お前はなんか部活入らないのかよ」


 「俺か?俺はなんか気に入ったのがなくてさ」


 「無いならロードバイク部でも作ればいいじゃんか」


 「お前、それを言うなら自転車競技部とかだろ、なんだよロードバイク部って」

 「よく分かんねぇよ、なんとかペダルみたいな熱い青春を過ごすんじゃないのか?」


 「は?何言ってんだお前」


 こいつ、ロードバイク好きで、あのアニメを知らないのか。まぁ深夜枠なので確かに知らなくても無理はない気もするが。


 「とりあえず、いまのところは未定かな」


 「ほぅ、部活動が決まってない生徒がここにいるな」


後ろから突然話しかけられた。振り向くとそこには一年E組の担任である池田先生が立っていた。


 「池田先生、突然ですね。驚かさないでくださいよ」


 「話はすべて聞かせてもらった。ちなみにうちはそこそこ大きな学校だが、自転車競技部はない。作ってもいいが、最低でも部員が6人必要だ。」


 「えぇ、まじっすか。六人は厳しいっすよ」


 友哉が落胆の声をあげる。そりゃあそうだ。高校にロードバイク部がある事例なんて稀である。それにあぁいった自転車は一台数十万円から高いものだともう一つゼロが増えたりもするんだ。気軽に友達を誘って作るような部活でもないだろう。

 「うちの学校は、強制的に部活動に参加しなければならない、という決まりがあるわけではない。だが現に今は九割近くの生徒が部活動に加盟している。青春の時間を帰宅部で過ごすのはもったいなさすぎる。担任としては、よほど特別な事情がない限り部活動には入って欲しいところだな」


 「家に帰って家事をしなければならないってのは、特別な事情に入らないんですか?」


池田先生は、俺たちのさっきの雑談を盗み聞きしていたこともあるのか、これを聞いてすべてを察したような表情をする。そこで、少し考え込むような様子でまた、ふっと口を開いた。


 「まぁ、特別な事情とやらに入らなくはないが、そういった生徒でも部活動をしている人はたくさんいるさ」


 「そりゃあそうですよね」


 「準貴、お前そんなに部活動に入りたくないのか?」


 「そういうわけじゃないんだけど、友哉も言うように、特に入りたいのがないっていうか、探すのすらもめんどくさいっていうか」


 「それなら、私が顧問をしてるパソコン部にでも入ればどうだ。帰宅時間は自由、用事がある日は帰ってもらっても全然構わないぞ」


 「パソコン部・・・。なんか根暗そう」


 「そんなことはないさ。それこそ妹の世話をしてやらないといけないやつだったり、毎週何曜日は来られません、あとはアルバイトが超忙しいんですけど、なんていう生徒もたくさんいる。パソコン部はそういった生徒の受け皿も兼ねているんだ。うちの学校は全体的に部活動に一生懸命な顧問の先生が多いからな。こういった部活があっても悪くはないだろう」


準貴と友哉は顔を見合わせ、少し考え込む。決して悪くはないが、これでは池田先生が一生懸命やってない、と宣言しているようなものだ。まぁ生徒の事情を考え、あえてそのような方針をとっているのかは定かではないが。それに本当に入って大丈夫なのだろうか。難しいプログラミングの技術を持っていないといけないとか、情報なんとかの検定持ってないとダメとか。


 「ちなみに、いまは女子生徒が大半だ、男子生徒もいなくはないが」


 「俺、パソコン部入ります!入部届をいただけないでしょうか?」


 「お前・・・。えぇ・・・」


分かりやすすぎる友哉の反応に少し唖然とする。おい、さすがに先生も少し笑ってるぞ。というか先生の言い方にも少し悪意を感じる。


 「そうか、道上はどうする?」


 「俺は・・・。もう少し考えさせて下さい」


 「わかった、いま紙をとってくるから、少しここで待っていてくれ」


と言い残し、池田先生は行ってしまった。紙、というのは恐らく入部届のことだろう。しかし本当に、あの先生を信用して本当に大丈夫なのだろうか。


 「おい、お前本当に勢いで入部したみだいだけど、良かったのか?」


 「大丈夫だって。お前は少し心配しすぎなんだよ。女の子が多い部活に入れるなんて、恵まれてるだろ。それにパソコンは、よくユーチューブとか動画検索して見てるし。得意だから」


 「そうじゃなくてだな。活動内容を聞くとか、体験入部をしてみるとか、もうちょっと慎重になった方がよかったんじゃないか?」


 「こういうのは、勢いが大事なんだよ」


 「なんだよそれ」


 「そういうお前はどうするんだよ」


 「どうもこうも、もうちょっと様子を見るよ」


 「お前、俺を一人ぼっちにする気か」


 「そうは言ってもさ・・・」


友哉と話をしながらしばらく教室で待っていると、池田先生が前方の扉から入ってきて、友哉に用紙を手渡す。


 「はい、入部届。ここに名前と部活名、一応ここに印鑑な」


 「わかりました」


 「それで、道上は決まったか?」


友哉が紙を書いているあいだ、池田先生が俺に質問してくる。今のところ、活動内容が分からないのが一番不安だ。あと自由に出席していいのか悪いのか、そこらへんも気になる。俺が「うーん」と考え込んでいると、先生が、


 「なんならこれから、部室に行ってみるといい。そこで部活の内容とか、雰囲気とか、色々わかることもあるだろう」


 「はぁ、そういうことなら一度、部活見学ということで」


 「じゃあ仮入部だな」


 「えっ」


 と、強制的に入部届を書かされた。しかも仮入部とは言っていたものの、友哉と全く一緒の入部届の用紙だ。理不尽すぎる。しかし、これは一応仮入部だ。自分には無理だと思ったら辞退すればいいだけのはずだ。一応印鑑は持っていたが、不安なので押さないでおいた。


 「よし、じゃあ案内しよう。ついてきたまえ」


先生が部室まで連れて行ってくれるようなので、俺と友哉も一緒に教室を出る。どんなところに連れて行かれるのか少し不安で、だけどほんのちょっとだけ楽しみだ。


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