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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第1章 「物語の始まり、なんだけど実際は腐れ縁の幼馴染」
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第3節

~登場人物紹介~

道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。読み方は『ともや』


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません


 クラス教室に到着後、自分の机の横にカバンをかける。うちの学校は置き勉(勉強道具を学校に備え付けのロッカーに置いて帰ること)が許されているので、俺のカバンの中身はお弁当とペンケース、それに財布と定期入れぐらいだ。あと自分の場合、朝読書用のライトノベルもかばんの中に入れてある。学校帰り、駅で電車を待ったり、電車内で読んだりするため、ロッカーではなく常に持ち歩くようにしている。落ち着いたところで、ロッカーに教科書類を取りに行こうとすると、見慣れた顔のやつが教室の後ろから入ってきた。


 「おはよう、準貴」


 「おう」


 声の主はクラスメイトの喜田川友哉。黒ブチメガネで身長は俺より少し高い百七十センチ。四月の身体測定でチラっと問診票が見えたときに、そう記されていたはずだ。見た感じは少しオタクっぽい。具体的に表現するのは難しいが、体つきがほっそりした、勉強のできそうな、そんな第一印象だったのを覚えている。ゴールデンウィークが明けて久しぶりの顔合わせで、友哉は少し嬉しそうだった。


 「ゴールデンウィークどっか行ってきたりしたか?」


 「いきなりだな、ずっと家でゴロゴロしてたよ」


 「へぇー」


 「・・・」


 「・・・」


 「なんだよ、友哉はどうだったんだ?」


 「俺か、俺はキャンプ行って川釣りかな!楽しかったぜ」


 「そうか」


 正直、あまり興味はないのだが、こっちをみながら、あまりにも友哉が聞いてほしそうだったので、つい聞いてしまった。『俺にも聞いてくれ』と言わんばかりの彼の顔は少し面白い。彼は見た目とは裏腹にアウトドア派のようで、ロードバイクに乗って学校に登校してきたり、今回のようにキャンプに行ったりするのが好きらしい。趣味は「自転車いじり」と四月に自己紹介をしていたのを覚えている。彼の自転車は、自転車小屋で特に異彩を放っているので、すぐに見つけられることができる。普通の人ならその自転車で登校するのはちょっと・・・、と抵抗を感じるくらい目立つ。これが彼の趣味らしい。てっきりアニメオタクだと思っていたのだが、全然そっちの趣味はなかったので少し驚きである。しかし人並みアニメは見るらしく、有名どころは一応知っていた。俺が授業開始日早々、クラスメイトの幼馴染(女)と登校してきたので、男子どころかクラスメイト全員から少し距離を置かれた(ような気がする)のだが、そんなときに話しかけてくれたのが彼であり、彼に救われた面はとても大きい(気がする)。そして彼の名前だが、友哉は、「ともや」と読むのが正解である。そんな彼と、今のところ、趣味が合ったり、共通の話題があったりはしないのだが、とある授業で席が隣だということもあり、なんとなく仲良くやれている。今現在、クラスで気兼ねなく話せる唯一の存在であったりする。こいつの分かりやすく、話しやすいところが、俺は嫌いじゃない。


 クラスの雰囲気はというと、まだ五月なので、完全に固定化しているわけではなく、少しだけだがぎこちない。しかし、少しずつ自分と気の合う奴、話しやすい奴が見つかり、クラス全体の大まかなグループが形成されつつある。恐らくこれがもう一ヵ月、二ヵ月も経過すると、仲のいい人同士が集まり、カーストが決まり始めるんだろう。男子は人数が少ないので、もうすでに決まりかけているが、女子はどうだろう、男子の人数の倍以上いるため、グループ作りにも慎重であり、早く安心したいという焦燥に駆られている人もなかにはいるのではないだろうか。コミュニケーションが苦手な奴ほど、こうした焦りに敏感である。準貴は女子ではないが、俺もそのうちの一人でだと自分の中では思っている。


 「なんかさ、この時期のクラスってピリピリしてるっていうか、分かる?」


 「準貴、言いたいことは分かる。でも『ピリピリ』ではないんじゃないか?」


と少し馬鹿にしたような口調で友哉は言う。彼はクラスの雰囲気など気にもしてない様子で、「そんなことより」と話を続ける。


 「そんなことよりさ、早く女の子の名前と顔、全員覚えないと。お前と一緒によくいるあの子は高橋遥ちゃんで、あの一番可愛いロングヘアーの子が秋月さんで」


 「なんか言い方が引っ掛かるけど。まぁ確かに、顔と名前を覚えるのは早いに越したことはないか。話しかけるにも名前が分からないんじゃあな」


 「お前は話しかける度胸がまず足りてない気がするけど。男子にも話しかけられない奴が女の子と会話できるとでも思ってるのか」


 「ほっとけ、うまいこと誰かと仲良くなれればそれでいいよ」


 「お前さぁ、そんな『うまいこと』で高校生活が本当にうまいこといくとでも思ってるのか?草食系男子も大概にしておけよ。女の子から俺たちに話しかけてくれるなんて稀なんだからな。自分からガンガンいかないと。・・・というか、お前の場合は高橋さんがいるから彼女なんて必要ないのか」


「遥のことか?あれはただの幼馴染だ」


「だって、学校の行きとか帰りとか、いつも一緒じゃねぇか」


「帰りは一緒じゃねぇよ、あいつ野球部のマネージャーやってるらしいから、帰りは一人で帰ってるよ」


「それでも朝はいつも、仲良さそうに学校来てるじゃねぇか」


「それは電車が一緒なだけで」


「それ以上でも、それ以下の関係でもないってか」


「ない」


俺は友哉にはっきりと否定を意を伝えるが、何故か彼はニヤりとし、

「ふーん。お前、草ばっか食べてないで、たまには肉も食えよ」


と言って、自分の席へ帰ってしまった。


「・・・意味わかんねぇよ」


八時半を告げるチャイムが校内に響き渡り、騒がしい教室内が、少しずつ静かになる。各自、自分の席に着き、ここから十分間、朝読書の時間だ。教室に備え付けの本、あるいは個々で持ち寄った本を読む、という国語教育の一環らしい。もちろん俺は持参してきたラノベを読む。しかし、読書に十分は短い。もっと長くていいのに、と彼はいつも思っている。


 読書をしていると途中で担任が教室に入ってくる。準貴としては、気が散るので、読書中は騒がしくしてほしくないのだが、クラス担任に、そう言えるわけもなく、あまり本の内容は頭に入らないまま、いつも無駄な十分間を過ごしてしまう。ちなみに一年E組のクラス担任は女性だ。年齢は恐らく三十歳前後、コンピュータや情報系の授業を主に担当しているはずだ。担任から簡単な連絡事項と、ゴールデンウィークなにをして過ごしたか、などの雑談が終わり、今日から長い一日が始まる。準貴は一講義目の授業の準備をするのであった。


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