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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第1章 「物語の始まり、なんだけど実際は腐れ縁の幼馴染」
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第2節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公。高校一年生。イケメンだがオタク。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません

 電車に揺られ、予定通り、約三十分程度で五稜郭駅に到着する。今日みたいに晴れている日には、学校まで徒歩で向かう。この時間帯では、まだ北高生徒の登校ラッシュとまではいかないものの、それでも結構な数の生徒たちが学校に向かって歩いている。学校の門限まではまだに十分近くもあるので、焦らなくても大丈夫な時間帯ではある。ちなみに雨の日は傘を差して歩くか、近距離だが、市営のバスに乗って北高前で降りればほとんど濡れなくて済む。バスにはまだ一回も乗ったことはないが、三年間あれば何回かは乗る機会があるだろう。なんてそんなことを考えていると、隣から少しだけ不機嫌そうな声で話しかけられる。声の主はもちろん遥だ。


「ねぇ」


「なした?」


「アンタ、うちに対してなんかないの?」


「突然だな。お前に対して? なんもないよ」


「はぁ…、じゃあ質問を変えるわ。今日は何の日?」


「えっ?ゴールデンウィーク明けの五月七日ですけど?」


「で?」


「お前の誕生日だろ?」


「はぁ…、もういいわ」


「少し嬉しそうだな」

「うるさい」


「痛いって、お前、俺の新品のズボン汚すなよ」


遥のつま先で小突かれた。靴は校則で特に規定があるわけではないのだが、彼女が今履いているものはローファーである。もちろん蹴られると痛い。スニーカーでも痛いものは痛いけどね。そう、今日は彼女の誕生日でもあるのだ。そりゃあ毎年、こんなこと言われ続けていれば嫌でも覚えてしまう。それに遥のツイッターを少し覗けば、思いっきり「十七歳になりました!」って朝に呟いていたのがホーム画面に流れてきているのだ。


「でも、正直、嬉しかったろ」


「まぁ、悪い気はしないけどさ。アンタ、知っててあえて言わなかったの?」


「正直に嬉しいって言えばいいのに」


 そう俺が言うと同時に、本日二発目の蹴りが飛んでくる。だから痛いって。


「やめろってマジ、痛いから」


「アンタが悪いんでしょ、ほんと可愛くない」


「わかったよ、十七歳おめでとうございます。俺のときもちゃんと祝えよ? じゃないと蹴られ損だからな、俺」


「別に蹴られたのはアンタの責任でしょ、それより誕生日プレゼントとかないの?」


俺としては、そんなものを用意しているわけもなく、そしてそんな金銭的な余裕もないので、はっきりと『そんなものはない』と言ってしまいたいところではある。しかし彼女の機嫌を損ねるとまたキックが飛んでくるので、一応、あげる意思はあることは伝えておく。誕生日といえば・・・。まぁケーキとか甘いものなんかが無難だろう。


「じゃあなんか購買でケーキでも買ってやろうか?」


「アンタ、朝からレディにケーキなんか食べさせるの?」


「お前、生クリーム苦手だっけ?じゃあチョコのケーキな」


まったく、文句の多いレディである。


「そこじゃないでしょ、いいわよ。なんか簡単なスナック菓子で」


「なんで、ちょっと嬉しそうなんだよ」


「うるさい」


「だから痛いって」


そして色々熟考した挙句、結局蹴られる。そんなやりとりしているうちに学校に到着。北高は最寄駅から学校までが他校に比べると比較的近い。志望動機にまではしなくても、それを考慮に入れた上で学校を選んだというやつは恐らくいるはずだ。しかもコンビニまであるんだからハイテクすぎる。


「ほら、購買行くわよ、ケーキ買ってくれるんでしょ?」


結局ケーキは買わされるのか、とため息をつきながらも、一年に一回のお祝いだし、ケーキくらいはまぁ安いだろう、と自分で自分を納得させる。その代わり俺の誕生日にはもっといいものねだってやろう、たとえば、モンブランとか。モンブランって購買で売ってるのか?俺の誕生日ちょうど秋だしコンビニでもモンブラン取り扱ってくれるよね?取り扱ってください、お願いします。そんなくだらないことを祈りながら、適当にケーキを選んで、コンビニの前で待っていると、上機嫌で遥が購買から出てきた。手にはチョコレートケーキの袋とスパサラの袋を持っている。


「さ、行くか」


何の疑問も持たず、一緒に一年E組の教室に向かうのであった。

「なんでお前、あの女にケーキなんか貢いでるの?」

と、クラスメイトに聞かれるのは、そう遠くない未来の話。


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