第1話 序章
ずっとずっと高い、遥か彼方の雲の上。そこにはたくさんの子どもたちがいて、みんな、毎日を楽しそうに過ごしている。これは、その子どもたちの中の一人だったとある彼のお話。
彼はその日、雲の上から一組の男女を見つけた。それからというものの、彼は毎日のようにずっとその二人の様子を眺めるようになった。他にもそこからは楽しそうに過ごしている子どもたちや、自由気ままに遊んでいる犬や猫、大空を飛ぶ鳥や海をおよぐ魚など、いろんなものを見ることができる。だがその子は、なによりもその二人の幸せそうな笑顔を見る時間が好きだったようだ。
「神様。ぼく、あそこの家の子になりたいな」
何の前触れもなくその子がそういうと、傍にいた神様はなにも答えず、にっこりと微笑んだ後、彼に小さな箱を手渡した。それはその子の両手に収まるくらいのもので、素敵なリボンまでついていた。これはきっと神様がお祝いに与えたいわゆる「プレゼント」なのだろう。そして、その子は神様にお礼を言った後、貰ったプレゼントをしっかりと抱きかかえ、その場をあとにしたのだという。
しかし、その子はいずれ知ることとなるだろう。この神様のプレゼントよりも無慈悲で残酷なものはないのだと。生を享けてから死ぬまで、人間は優越感と劣等感に苛まれながら生きていかなければならない。そう、決められているのだ。
それは、神様からのプレゼントなんかじゃない。きっと、神様にかけられた『呪い』なんだよ。