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望郷の戦い

作者: 瀬川潮

 月の地下にある平成基地内に、けたたましいアラート音がこだましていた。未だその正体も定かではない異星人が攻めてきたのだ。

 非番で寝ていたサイキック部隊の七村コウが自室を出た時、すでに通路には薄いもやのようなものがかかっていた。レーザー熱線拡散粒子を散布した影響だ。兵器の質において優位に立つ異星人が基地内に侵入した場合、この粒子を散布して肉弾戦に持ち込む。誘爆性もあるため、火器の類は使えない。自然と、太古の昔のように剣や斧での攻防となる。

 ただし、散布した陣営は事情が異なる。異星人迎撃の最前線となるこの平成基地には、サイキック部隊が組織されている。テレポートやサイコキネシスなど、それぞれの特性を生かして肉弾戦とはまた違った戦いを展開する特殊部隊だ。部隊の一員、七村コウは接触テレパスとしてその一翼を担っている。

 部隊本隊と合流すべく通路を走っていた七村は、角を曲がったところで異星人と出くわした。異星人といっても、人類と外見は変わらない。特徴は黒い瞳に黒い髪と、ほぼ黄色人種のそれと重なる。

 七村は鍛え抜いた体術で敵の繰り出す剣や斧をかわすと、異星人の身体に触れていった。するとさわられた異星人は、ぱんという音と共にその場に崩れ落ちた。ヘルメットで見えないが、頭部が破裂している。敵に触れた時、手の平から膨大な情報を圧縮したイメージを敵の脳に送り込んで内部からパンクさせているのだ。例えば、最初に剣で向かってきた異星人には聖書を送り込み、次に斧を振りかぶった敵には、ネクロノミコンを押し込んだ。

 休む間もなく、次の敵が迫ってくる。

 敵の攻撃を紙一重でかわして、ペリー・ローダン。

 右に避けながら、グイン・サーガ。

 振り向きざま、指輪物語。

 カウンターで、ダーコーヴァ年代記。

 屈んでアッパー気味に、エルリック・サーガ。

 背中越しに、竜馬がゆく。

 ぱん、ばん、ばん、ぱん……。

 軽快な動きで、次々と敵を屠る七村。

 しかし、息をついた一瞬の隙を突かれ敵に身体をさわられた。敵も同能力者だったようで、瞬時に膨大な量のデータが押し付けられてくる。

(桜が、咲いております。懐かしい、葛飾の桜が今年も……姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの……)

 瞬間、七村の頭はぱんと破裂していた。

 なぜそんなものをと思ったか否かは、分らない。

 戦いは、続く。



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 他サイトのコンテストに出展した旧作品です。2005年作品。

 好評でした♪

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