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大岸みのるの、気まぐれん。

ツン成分99%の姉は保健を学ぶ

作者: 大岸 みのる

 ツンデレ。それは使い古された一つの性格であり、また、多くを望むのなら、それは妹や幼馴染に求めるものだろう。ただ、間違っちゃいけないのは、それは姉に求めるものではないという事である。

 ちなみに、姉という生き物は、基本的に弟に対して奴隷のように接し、またコキ扱うという酷い上司かと思えるほどの人間だ。

 この短い物語は、『そんな姉をどうしてやろうか』とひたすら思い、行動する。過度な期待はしないでください。


 それはツンデレ幼女妹好きな俺、高校二年生の鳩ヶ谷(はとがや) 聡介(そうすけ)の極平凡な一日。

 いつものように、帰宅してから日課である妹モノのアニメを見ようとした時、突然、二階にある俺の部屋の扉が激しくノックされた。

 夕方五時くらい。空も茜色に染まっているので、共働きの両親は帰ってきていない。となれば、誰がノックをしているのか。答えは簡単だ。


「ちょっと! 聡介! アンタ風呂掃除早くやってよ!」

「…………」

「無視とかいい度胸してるわね。また相変わらず気持ち悪いアニメでも見てるんでしょ? あー気持ち悪い。さっさと風呂沸かしてくれる?」

「…………」

「ねぇ、ちょっと聞いてるの! 早くしないとパソコンの電源切るわよ!」


 イヤホンをしながら、俺は尻目で先ほどから鶏の如く話しかける人物を睨みつける。

 俺と同じく明るめの紺色の髪の毛をポニーテールにしている姉、高校三年生の鳩ヶ谷 凛香(りんか)

 彼女のデータをまとめようと思う。

 見た目、顔は誰に似たのか分からないくらい整っていて可愛い(らしい)。胸も年頃にしては大きい方(貧乳派だ)。身長は俺よりも少し小さい(モデル体型? 笑わせるな)。色白で四肢が細く、まるでモデル(だから、興味ない。帰れ)。

 つまり、誰からも愛されるような容姿なのだ(俺は嫌いだけど)。


 ちなみに内面データもまとめてみようと思う。

 誰にでも明るく優しい(誰にでも? 俺には違うぜ)。頭が良くて、成績も良い(俺は知っている家庭科だけは絶望的だ)。運動神経も良くて、いろんな部活の助っ人をしている(一つの事に熱を注げないバカだ)。さらに人望もあり、多くの友達に恵まれている(浅く広い付き合いしかできない愚か者)。


 っとまぁ、一応完璧な美少女で通っているらしい。


 だが、家に帰ればこのありさまだ。

 今だって、何かとギャーギャー喚きながら俺のパソコンの電源コードを握って……。

 あれ、何で俺の二次元妹幼女の眼福タイム中に電源コードなんて握ってんの? え、バカなの? コイツ、本気で俺の世界に干渉するつもりなの? それ、抜いたら戦争だよ? 第三次戦争どころじゃないんだけど。

 

 慌てて俺は電源コードを握る姉を止めさせようとイヤホンを耳から引き抜いた。


「待て! 早まるなァァァァァ!」

「え」


 瞬間、ぶちっという音が響く。

 恐る恐る俺はパソコンのモニターに視線を移す。そこには先ほどまでランドセルを背負って「お兄ちゃん! 遅刻するよ!」と言っていた可愛い俺の妹が――――――真っ暗で漆黒の世界へと誘われてしまったのだ。


「あ……ああ……そんな……花音ちゃんが異世界に……」

「ハァ? アンタバカ? 電源抜いただけでしょ」

「花音ちゃんが……花音ちゃんが……」

「キッモ。早く風呂掃除してくれない? 汗流したいんだけど。あと風呂掃除終わったら、晩御飯作って。今日はグラタンと餃子とハンバーグと茶碗蒸しとオムレツが食べたいから全部作ってね」


 姉が何言ってるのか聞こえない。いや聞きたくない。

 俺の一日の楽しみが、消えたのだ。漆黒の世界に――――黒く染まったモニターの中に姿を……。


「……おい、凛香。テメェ、どういうつもりで俺の花音ちゃんを異世界に連れて行きやがったんだァァァァァァァッ!」

「ハァ? うるさいんですけど。アンタが無視したのがいけないんでしょ。マジ気持ち悪いんだけど。アニメのキャラがどうとか言ってる奴、マジドン引きなんですけど。気持ち悪いからさっさとお風呂洗ってくれる? つか、アンタの汗とか唾液とか風呂に入れたらマジ許さないからね。むしろ、アンタの指紋一つ風呂場につけるなよ。つけたら殺す。あとご飯も、変な事したら許さないんだから」

「要求多いんだよ! つか風呂に指紋つけるなとか、どうやって洗えば良いんだよ!」

「そんなのアンタが考えなさいよ。気持ち悪い」

「いちいち気持ち悪いって連呼するんじゃねーよ! 俺が本当に気持ち悪い人間みたいじゃねーか!」

「うっさいわね。実際にアンタ気持ち悪いキモオタじゃん。見た目だってそれでデブだったら最悪ね」

「デブじゃないのが救い見たいに言うんじゃね! 全国のデブに謝れ!」

「謝れ? 何言ってるの。アタシはアンタ以外の全人類に優しい完璧美少女で通ってるんだから無理に決まってるでしょ」

「ああ!? デブは人間じゃないとでも言うのかよ! それこそ謝れ!」

「違うわよ。デブにアタシが謝ったら、皆が『何でデブに謝るのよ! やめなよ!』って友達に怒られるからに決まってるでしょ!」

「どんな友達だよ! テメェら揃いも揃って性格悪過ぎるんだよ!」

「っていうか、もうアンタと口聞きたくないから、さっさと風呂洗って、グラタンとハンバーグと餃子と茶碗蒸しとオムレツ作って洗濯して死になさい」

「要求多すぎるんだよ! どれか一つにしろよ! つかテメェも少しは家事しろよ!」

「家が爆発してもいいなら」

「あああああああああああああああああああああああああああ! もうわかった! 俺が全部やるから、テメェは死んでろ!」

「死んでろ? 誰に向かって口聞いてんのよ!」

「家破壊マシーンのテメェ以外にいると思ってるのかよ!」


 そんな感じで、俺は家事をする。

 これが、ほぼ毎日続くのだ。基本的に親父は海外を飛び回っているし、母は日本全国を飛び回っているエリート夫婦が俺と凛香の両親。なので、基本的に家にいるのは俺と凛香だ。

 そう、毎日罵られて、家事をこなすのが俺の日課である。

 しかし、今日は違う。


 奴はとんでもない事をしたのだ。


 家事を全て終えた俺は、肩の力を抜く為にもう一度花音ちゃんの姿を見て寝ようと思った。

 椅子に腰を降ろして、勉強机にあるパソコンの電源を付ける。


 …………真っ暗だぁ。


 何度押しても押しても、パソコンの電源は付かない。

 早急に俺は携帯電話で、パソコンのサービスセンターへと連絡を取る。

 数分後。


『あーそれは完全に壊れちゃいましたね。電源コード抜いたんでしょ?』

「え、っていう事は……」

『廃棄するしかないですよ』

「はぁ!? ちょ、治らないんですか!? あれには俺の花音ちゃんとの思い出が……」


 パソコンの故障、いや永久睡眠。

 このパソコンには色んな思い出があった。

 入学式、花音ちゃんが俺達と一緒に校門で写真を撮ったり、海で二人で遊んだり、夏休みに縁日に出掛けたり、秋は公園で紅葉を見たり、冬は雪で遊んだり、バレンタインでチョコを貰ったり、ホワイトデーでお返しをあげたり……。

 花音ちゃんが……俺と花音ちゃんとの思い出が……(PCゲームや、スクリーンショット)。


 ―――――完全消滅した。


 俺は絶望に身を預ける。

 それこそ、視界は壊れたパソコンのモニターと同色だ。

 あははは。笑うしかないよね。

 

 その時、俺の脳裏に浮かんだのは、凛香の顔だった。

 アイツが電源コードを引き抜いていなければ、花音ちゃんは消えなくて済んだ。アイツが俺の前に現れなければ、花音ちゃんとまだ遊べた。アイツがアイツがアイツが……。


「復讐じゃボケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!」





 ◇




 俺は、今、自分でも驚くくらい落ち着いている。手には鈍器となるゲームの攻略本。これでアイツの脳天をぶち抜けば、容易く異世界へと連れて行ける。

 アイツを異世界に行かせれば、花音ちゃんは一人じゃない。俺も後を追えばいいだけだ。

 ノックをせずに、凛香の部屋を開ける。そこには、女の子らしく飾られた部屋が俺の視界を埋め尽くす。だが、なんて事はない。ここはすぐに戦場となるのだ。手当たり次第にあるモノは俺の武器となる。

 クククッ、遂に奴を倒せると思ったら笑いが止まらねぇ。

 ゆっくりと凛香の姿を確認する為に、視線を巡らせる。


 ティロンッ! と俺の警戒音が脳内に響く。


 奴は、机に突っ伏しながら眠っている。いや、起きているのか? 分からない。だが、今は勉強しているだけのようでもある。

 これはチャンスだ! 奴を一撃必殺できるチャンスなのだ!

 素早く暗殺するのではない。ゆっくりと、足音を消して俺は凛香を消す!


 ゆっくりと扉を開け、音を消しながら凛香の部屋に侵入する。

 驚くほど落ち着いているのが分かった。人と言うのは、本当の復讐を果たそうとした時。こんなにも冷静になれるものなのだろうか。

 凛香の背後にまで、俺は足を歩ませた。後はゆっくりと近づき、凛香の頭を分厚い本でぶっ叩くだけだ。え? 鬼畜? 何をおっしゃいますか。凛香の方が鬼畜ですよ。


 俺が近づいている時、パラっという紙が捲れる音が部屋内に響いた。

 瞬間、俺の警戒レベルは核兵器が出現したかのように上がる。

 モタモタしている暇はない。だが、今さら作戦変更なんてできるものでもない。


 奴は起きている!


 俺は生唾を、静かに呑み込み、凛香に静かに近づく。

 ゆっくり、ゆっくり。

 気がつけば、凛香の吐息が聞こえるくらいには近くにいた。

 あとは、俺が凛香の頭を鈍器という名のゲーム攻略本で叩くだけだ。これは犯罪ではない。復讐なのだ。

 静かに俺は鈍器を両手で持ち、振り上げる。


 ――――これで、テメェの狂った頭をどにかしてやるぜ! ヒャッハァッ!


 内心で呟き、振り降ろそうとした瞬間。

 凛香は呟いた。


「……何で素直になれないんだろ……」


 俺は目を見開いた。

 素直になれない? コイツが? んなバカな事言ってんじゃねーよ。

 今までのが素じゃなかったらコエ-っつの。

 いや、待てよ。コイツ、好きな野郎でもできたのか?

 考えてる途中に、凛香は二度目の呟きをした。


「……それに保健体育って、何度やっても分からない部分ばっかり……。はぁ……何であたしってこう、バカなんだろう……」


 それは地球全土が思っているだろう。

 何せ、あのカワユイ花音ちゃんを異世界に誘ってしまったのだからな。例え世界が許しても、俺が許さん。

 花音ちゃんを消した罪は重い。

 そうだ、コイツは花音ちゃんを消したんだ。

 公開処刑に値する。

 刑を実行しようとしたのだが、いきなり凛香は振り返った。


「気分転換でもしよっ…………」

「…………」


 固まる凛香。まるで石像のように動かない俺。

 凛香は目線を日本刀のように鋭くさせ、口を開く。


「……何やってんのよ。アンタ、アタシを殺そうとしたの」

「何をおっしゃいますか。ただ本をアナタ様の頭上に掲げているだけでございますよ。あははは」

「気持ち悪い。さっさと出てってくれない? アンタと相手してる暇なんてないの。アンタんとこと違って、アタシの学校だと明日は保健のテストがあるの。気持ち悪いし、オタクが空気感染するから死んでくれる?」

「ちょ、黙って聞いていれば――――」


 凛香は舌打ちして、机に向き直った。


「アンタと違って、女子高に入れられたアタシは勉強しなきゃいけないの。アンタみたいに公立の高校入って、遊んでばっかりいられないの」

「お前、俺の高校バカにしてんのかよ!」


 俺はいつの間にか、本を降ろして拳を固める。

 何故か、許せなかった。何故か、いや何故かはない。俺の友達をバカにしているみたいで、許せないんだ。

 凛香は、振り向いて俺の様子を再び見る。


「な、何よ、アンタ達の方が偏差値低いじゃない!」

「偏差値? ッハ、これだからバカは困る」

「バカ? 何言ってんのよ、アンタ今言った事分かってる? 偏差値っていうのはね――――――」


 俺は攻略本に挟まっていた模試の結果を姉に見せた。


「……え?」

「悪いな。俺にとっては、この勉強なんてゲームなんだ。装備を手に入れる為の――――現実でいうならクエスト。資格も学歴も必要ない。知らなかったのか?」

「ど、どうせ偽装でしょ! そんな満点のテストなんて小学校じゃあるまいし」

「満点で何が悪いんだ? 俺はお前が不得意としてるテストを軽々と満点取ったんだぞ? バカはどっちだよ、凛香」

「アンタ、アタシを呼び捨てに――――」

「なんなら教えてやっても良いんだぜ? バカ凛香」

「クッ……」


 凛香は悔しそうに奥歯を噛み締めて、俺を睨みつける。

 気分が良い。

 実際、保健のテストなんて男子ならば満点とれなければ、バカどころの話じゃない。それは男として生きるのをやめているって事になる。

 つまり、保健のテストだけは俺が満点。というわけだ。

 かなりの負けず嫌い(俺だけ)の凛香にとっては悔しいだろう。

 優越感に浸っていた俺に、凛香は呟いた。


「…………てよ」

「あ? 聞こえねーぞ、バカ凛香!」

「教えてよ!」


 本当に分からなかったのか。凛香は涙目で俺に懇願する。

 だが、まだだ。花音ちゃんを消した罪は重いッ!


「おいおい、人に何か聞く時っていうのは教えてくださいだろ? んな事もわからねーのかよ、バカ凛香」

「うっ……。もういいわ! アンタなんかに聞かなくても――――――」

「じゃあ女友達に教えてもらうのか? 恥ずかしいよなぁ。女友達にピ――――やピ――――って何? って聞くのがよぉ」

「うっ……」

「それとも親父や母さんに聞いてみるか? あはははは! 凛香、テメェは親の前でも猫かぶりだもんなあ! プライドがゆるさねぇだろう! 一人でそうやって、頑張るんだなぁ」

「…………」


 凛香は黙りこみ、俯く。

 気持ちいい。これが今まで散々罵ってきた相手への仕返し。

 運が良かった。まさか保健体育を勉強していようとは思っていなかったしな。

 これで、俺の復讐は終了だ。


 そう思い、俺は凛香の部屋を後にしようとした。


「ま、待ってよ! 聡介!」

「あ?」

「……ほ、本当に分からないから……」


 今にも泣きだしそうな凛香。その凛香に俺は腕を掴まれて、立ち止まる。

 クッソ、俺の良心が疼き出しやがった。

 困っている人は助けなきゃいけない。だが、それは他人の場合だ。凛香は違う。

 ならば、見捨てるという選択をするのが、また俺のエクスタシーというものだ。


「フンッ! 赤点でも取るんだな」

「待ってよぉ……。保健だけ教えてよ……。明日点数取れなかったら……単位、お、落しちゃうの……」

「ハァ!? ちょ、おま、マジか!?」

「う、うん……」


 意味が分からなかった。

 まさか、保健がそこまで苦手だとは……。

 しかし、これはこれで良いチャンスだ。

 本当の意味での復讐を始めてやるッ!




 ◇




「う、う…………」

「おいおい、身体小刻みに揺らしてんじゃねーよ」

「だ、だって……変な気持になるんだ、もんッ!」

「ちゃんと喋れよ。わかんねーだろうが」

「あんッ!? そ、そんな変なとこ触らないで……」


 ベットに仰向けとなった凛香。その凛香に俺は馬乗り状態となっていた。

 俺は姉の身体をところどころ弄る。

 肩、太股、耳、首。

 ありとあらゆる場所に、触れるか触れないか分からないくらいで、手で撫でていく。

 驚いた事に、保健のテストというのは性感帯についてだった。性感帯にはいろんな種類があると凛香は思っているらしく、その全てでどういうのが性感帯なのかを身をもって知ってもらおうというのが俺の思考だ。

 悶え、苦しめ!


「や……そ、そこは……」

「あ? 何があんだよ」

「そ、聡介のいじわるっ」

「何言ってんだよ、俺はまともに仕事してるだけだぜ? 勝手に感じてるテメェがいけないんじゃね?」

「そ、そんな事言っても……ッ!?」


 いきなり身体をビクっと動かす凛香。

 どうやら、ヒットポイントは耳の裏側と、首筋のようだ。

 ここを軽く刺激すれば、凛香は気持ち良いと感じるらしい。

 ならば、復讐に、そこだけを集中的に弄り尽くせばいいだけのこと。

 しかし、性感帯が二つか。


 凛香の髪を撫でるように、耳の裏へと掻き分ける。

 すると猫のような瞳が俺を捉えた。


「そ、聡介……どう?」

「何がだ」

「……そ、その……性感帯あった?」

「いや、まだわかんね」

 

 そう言いつつ、俺は舌を出して凛香の首筋を舐める。


「ちょ、何やってんのよ!」

「あ? 黙って言う事聞けよ、単位落としてもいいのかよ」

「うっ……」

「なら言う事に従え」


 それだけ言うと、凛香は黙って俺から視線を逸らした。

 もう一度、首筋を舐めるように、舌を出す。その時に零れた吐息が、凛香の首筋を擽るとピクンっと身体を動かす。


「んっ」

(おいおい、息かけただけで反応したぞ……。どんだけ感じてんだよ)


 そこで吐息だけをかけてみるだけにした。

 すると、驚くべき効果が出始める。


「んっ……ふぁっ…………あッ」


 なんと、凛香は息を吹きかけただけで、通常の女性の倍は感じる体質のようだ。そこに性感帯があるからという理由もあるけれど、それだけじゃない。

 凛香はそうとうエロい体質だ。

 そう思うと笑えてくる。色々やってしまえば、凛香はガクガクして二度と俺に逆らえなくなるかもしれん。

 これは、一世一代のチャンスだ。

 花音ちゃん。仇は討つ。だが、悪い。俺は君以外の女の子を舐めてしまう。許してくれ……。

 舌を出して、俺は凛香の首筋にそーっと近づける。

 そのまま、首筋をなぞるように舌を動かした。


「あッ……んんっ……そ、聡介ぇぇ……」


 声を漏らしても、俺はやめない。

 犬のように舐めまわすのではなく、習字をするかのように俺は舌を動かす。

 顎下まで行っては折り返し、首の後ろにまで舌を這わせる。

 何度もそれを繰り返すたびに、凛香は身体をピクンっと動かし、腰は徐々に浮き始めた。


「や、やぁん……っ! そ、聡介ぇ……ら、らめぇ……そ、それ以上は……」

「あ? 止めるのか? それでも全然良いぜ」


 俺が笑うと、凛香はトロンとした瞳で俺の事を見つめてくる。

 何て顔しやがる。凛香の友達はさぞ悲しむだろうな。弟に性感帯を弄られて、感じているだなんて知ったら。

 だが、関係ない。凛香はしてはならぬ事をしたのだ。だからこその、この仕返しである。

 俺はニコっと笑い、凛香の耳裏に顔を埋めた。


「ちょ、そ、聡介、ち、近い……」

「何だ? 気持ち悪いとか言うつもりか?」

「そ、そうじゃなくて……んんっ」


 凛香の片耳を手で優しく撫でるように触れさせ、もう片方の耳を俺は舐める。

 舌でなぞり、ちゅるちゅるっと唾液をつけていく。

 耳裏も敏感のようで、身体を跳ねあげさせる。

 これは面白い。

 さらに、両耳を攻めているので、凛香はもう大変面白い状態を迎えている。


「んっ、あっっん!? そ、そうす、けっ……き、きもちいい、よぉ……。んっ……も、もっとしてっ……聡介ぇ……もっと舐めてぇ……はぁ……はぁ……」


 ここまでくれば、後は仕上げだけだ。

 俺は馬乗りの姿勢を止めて、ベットから降りる。


「そ、聡介……?」

「分かっただろ? 体感したんだから明日のテストは満点も同然だろ」

「……ま、まだ、わからない」

「まだ? 何言ってんだよ」

「ち、違うの! ちょっと……触って欲しいところが……」


 そう言うと、凛香は胸に手を当てる。

 おいおい、マジかよ!? そ、そこは男の永遠の夢だぞ!? そこを触れと言っているのか!?

 俺は混乱した。だが、凛香の瞳は本物だ。嘘は言っていない。


「お前……」

「わ、わかってる。姉弟で胸を触りあったりするのは可笑しいって」

「じゃあ何で……」


 凛香は恥じらいの表情を浮かべて言った。


「ま、まだ勉強したいの……聡介と一緒に」

「バカか。俺はもう眠いんだよ」

「じゃ、じゃあ、今度はアタシが聡介の性感帯を探す!」

「何言って――――」


 ベットから凛香は降りてきて、俺の身体を押し倒した。

 今度は逆。つまり、凛香が俺の上に乗っかっている。

 自分でも少し後悔し始めた。いつも、俺を罵倒してばかりの姉が狂い始めたのだ。口を開けば、俺が気持ち悪いとか罵っているあの凛香が、今、俺の上に乗っかっている。

 天と地がひっくり返ったのだ。


「ちょっと待てよ、お前明日テストだろうが! 早く寝て――――」

「勉強はまだ終わってないわ」


 そう言うと、凛香は電気を消した。

 真っ暗で何も見えない中、俺の首筋に生ぬるい何かが触れる。

 すぐに振り払おうとしたが、俺の腕ごと何かでキツく締めつけられた。だが、胸には柔らかい感触が触れる。

 微かに聞こえる、呼吸音が俺の冷や汗を浮かばせた。


「聡介……気持ちいい?」

「あ!? そんな事ねぇし……っ!?」

「ふふ、嘘吐かなくてもいいのよ」

「何言ってんだよ。お前おかしいぞ!?」

「勉強してるだけだもん」


 そう言うと俺の耳裏にまで舌は伸びてきて、ぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めていく。

 首筋、耳裏。その二つは俺が凛香を弄った場所だ。さっき俺がした事を覚えたのか、凛香は俺と同じように舐めていく。

 しかし、俺の性感帯はどうやら、そこじゃないようだ。


「おい、いい加減にしろ」

「だめっ。聡介は大人しくしてて?」

「性感帯は人によって違うんだ。だから――――――!?」


 俺は背筋が凍るかと思った。

 気が付けば、ズボンのファスナーが開けられている。


「聡介……。これ、大きくなってるよ」

「チッ、触るな!」

「ダメ。アタシの勉強の邪魔しないでっ」

「勉強の邪魔とかそういう次元じゃ――――」


 そう言いかけると、俺の口元を何かが塞いだ。

 それは柔らかくて、湿っていて、でも温度は暖かくて――――。

 その何かが離れると、凛香は言った。


「聡介……。だめ?」

「だ、ダメとか、そういう次元じゃないって」

「で、でもね……。これも勉強だと思うの。だから、勉強の続き、手伝ってよ。弟としてじゃなくて――――男として」


 俺のシャツをギュっと握りしめる凛香。

 だけど、俺はこんな事がしたくて、凛香の部屋に侵入したわけじゃない。

 こいつは口が悪くて、俺を罵倒するのが好きで、性格が悪くて、いつも俺を気持ち悪がる、最低最悪な――――俺の姉なんだ。

 それが俺を弟としてじゃなく、男として? 冗談じゃない。

 俺は最後の力を振り絞って、凛香を退かす。


「聡介?」

「冗談じゃない。俺の青春は花音ちゃんに注ぐって決めてんだ。悪いが、お前にやるほど安くないんだ」

「……まだオタクのフリ(・・)してるの、聡介」

「………………」


 俺は立ち上がって、凛香を睨みつける。


「お前は、俺の花音ちゃんを異世界に行かせた。ただそれだけだ。明日から余計なことしてみろ。ただじゃおかねぇからな」

「ちょ、聡介っ!」


 凛香の部屋を俺は無理矢理出てきて、すぐに自室にこもって鍵を閉めた。

 すぐにベットに身を預けると、やってしまった感が後からやってくる。

 こんな事、親父や母親にバレたら大変な事になるに違いない。

 説教もんだし、もしかしたら俺が家出をさせられる可能性だって捨てきれないのだ。


「それにしてもー……」


 凛香は二重性格なのか? 俺にあれだけ気持ち悪いとか言ってたくせに、色んなところを触っても結局怒らなかった。それに、最後の方はもう変だったし、性感帯にはそういう効果もあるのだろうか。

 俺はいつのまにか、眠りの世界に誘われていた。




 ◇




 朝、起きると凛香はいつも通り、俺の用意した朝食に手を伸ばす。

 無言で食べているのを見ると、昨夜の出来事は何もなかった。という事にしたいのだろう。それはそれで弱点ができたので有難いし、俺としては願ったり叶ったりで、罵倒されない生活を歩めるかもしれない。


「ごちそうさまでした……」


 顔色が悪かったが、凛香はそれだけ食べて先に家を出た。凛香の学校の方が家は遠いので、俺よりも早い。

 ちなみに俺は学校が近所なので、急がなくてもいいし、なんなら五分前に家を出れば間に合うのだ。

 というわけで、俺はいつも通り食器の後片付けや、洗濯物をする。

 今日の授業はなんだったか考えながら、俺は洗濯カゴの中に入っている洗う洋服を詰め込んでいく。

 その途中、濡れた何かが俺の手に引っ掛かった。


「何だこれ」


 よく見れば、それは凛香のパンツだったのだが、部分的に濡れている。

 まだ水につけていないのに、なんでだろうと思いながら俺は洗濯を開始した。

 だが、一度気にしたら霧がない。俺は凛香の部屋に雨漏りでもあったのかと思い、部屋の扉を開けた。

 しかし、雨漏りがあった形跡はないし、水物が置いているわけでもない。

 勘違いか、と思った俺は、部屋を後にしようとした。

 

「あれ」


 だけど素通りできない物が、そこにはあったのだ。

 パンツのトランクス。約五枚。

 所有者は誰か。もちろん、俺のだ。

 何で、凛香の部屋に……。




「見たわね」

「はっ!?」


 振り返ると、そこには顔を風船のように膨らませ、かつ郵便ポストのように顔を赤くさせた凛香がいた。


「……何であたしの部屋に入ってるのよぉ……」

「いや、お前の下着が濡れてたから、雨漏りでもあるんじゃねーかなって思ってよ」

「あ、雨漏り……。そ、そうよ! 雨漏りよ! あ、あははは! あははは!」

「あ? 何言ってんだよ。何もなかったぞ。それよりも俺のパンツが何で――――」

「それはあたしが買ったのよ!」

「何言ってんだよ! テメェのじゃねーよ! これは俺のお気に入りのパンツなんだよ!」

「知らないわ! アタシが買ったのよ! いいから早く出て行きなさい! アンタのパンツじゃなくてアタシの!」

「不自然だっつーの!」

「っていうより、乙女の部屋を覗くんじゃない! 気持ち悪い!」

「男物のパンツ持ってる女の事を乙女というのか!? いや、絶対に言わない! 乙女というのは花音ちゃ――――――」

「気持ち悪い」

「いや、だから、花音ちゃんが乙女――――」

「気持ち悪い」

「ハァ……。お前ってヤツは……」

「息しないで。空気汚染されるわ。きっと地球環境の悪化も、あんたの吐くCO2のせいよ」

「全面的に俺が悪いの!? ねぇ、人間が二酸化炭素吐くんだよね!? 俺だけのせい!?」

「そうよ。だから、死になさい」

「テメェ! 何言ってんのかわかってんのかよ!」

「わかってるわ。地球の環境を救うのには、一番手っ取り早い方法よ」

「もういいわ!」


 相変わらず性格が悪い。

 俺は凛香なんて大っ嫌いだ。それはもう凄く。

 だから、昨日のは俺の夢って事にしておこう。

 家事の続きをしようと、俺は凛香の部屋を出ようとした。


「……でも、ね。一ミリだけ……なら、あ、あたしが……ひ、必要としてる……わ……た、たぶん」

「あ? 何か言ったか?」

「な、何でもないッ!」

「それより、早くいかねーと遅刻するぞ」

「言わなくても分かってるわよ! このキモオタ!」


 凛香はバタバタと二階から一階へと降りて、靴に履き替える。

 そのまま、玄関に置いていた鞄を持って、扉を開けた。


「……い、いってきます」


 俺は溜息を吐きながら、腰に両手を置いて言う。


「いってらっしゃい、姉ちゃん」


 それだけ言うと、姉は振り返り笑顔で「うん!」と言って学校に向かった。

 

 

 俺にとって、お姉ちゃんとは。

 いつも、ニコニコして弟を助けてくれる存在だと思っていた。

 だけど、現実は甘くない。

 ツンデレの妹や幼馴染ならまだしも、姉なんか絶対にいらないと俺は思う。


 この物語は、弟が姉に仕返しをしようとする度に、姉の思惑にハマる。

 ツン成分99%の姉と、幼女体系妹好きの弟による、チョイエロラブコメだ。

読了ありがとうございます!


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[一言] 続気になるぅ、連載してよぉ
[一言] 続きを! 続きをノクターンで書いてください!
2014/05/24 21:56 退会済み
管理
[良い点] 文章にドライブ感があるところ。韻律を考えていて読みやすいです。 [一言] 笑いましたw 他作品で暗い部分書いてるせいか、弾けてますね。 痛い位に共感出来ます。多分楽しみながら書いてたぢろう…
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