色欲の英霊ミズナ
色欲のミズナの空間にハッサク達はたどり着く。
「いらっしゃい。勇者英霊最大の美女ミズナの世界へ」
そう微笑む栗色の長い髪を緩やかに巻いている長身の美女・ミズナは白い極薄のワンピースで出迎える。無数の男女の裸の人体模型がその場の全員を見つめていた。煌びやかな品のあるオーラを纏うミズナにハッサクは無言のまま立ち尽くしている。ツツーとハッサクは鼻血が出ていた。
「……」
それに気付くサタラとクロコはツッこむ。
『何で興奮してるの!』
「いや、何かエロいよな……透けてるし……」
色欲を司るミズナにハッサクは籠絡されそうになっていた。もう少しで上下の大事な所が透けて見えそうだという所にハッサクは目を凝らしている所を二人の魔王に頭を叩かれて正気にさせられた。プリプリと怒るサタラは言う。
「コラ! ハッサくん誘惑しないでよ! シースルー女!」
「女にも性欲はあるのよ。貴女達だって嫉妬心があるんだから性欲もあるでしょう? それともそんな事は認められないの?」
『……』
女として一線を越えている非処女のセリフにサタラとクロコは言葉に詰まる。
しかしサタラは負けじと叫んだ。
「エッチしたい!」
「……まぁしたいわね」
クロコも言い、更に勇者が続く。
「そうだ! エッチしたい!」
ついでにハッサクも叫んだ。
機械的にハッサクは叫び出した。
何回も同じ事を連呼し、どうも様子がおかしい。
どうやら周囲の目には見えない幻を見ているらしい。
それに気付くクロコは言う。
「ハッサクに何をしたの?」
「テンプテーションよ。私の色香での精神支配とでもいいましょうかね」
「やってくれるわね……」
完全にハッサクはテンプテーションにより籠絡されていた。
焦るクロコは技から抜け出す策を寝るが、サタラは平然と構えていた。
「ちょっと、貴女も何か策を考えなさいサタラ」
ニッ……と微笑みサタラは言う。
「ハッサくんを信じて何もしない。勝つよ。ハッサくんは」
やけに信頼するのね……と思うミズナは言った。
「もう無理よ。勇者は落ちた。後は死ぬだけよ」
ズズズズ……と果てし無く魔力が展開し、空間にある人体模型が瞳を開いた。
生気が宿る人体模型が全て女になり、その全裸の女の群れはハッサクに向けて迫る――。
「あー美味い、美味い」
言いつつ、鼻くそをほじるサタラはそれを食べて白目をむいていた。
一方、クロコは長い黒髪を乱し、あぐらをかきポテチを食べ寝っ転がっていた。
呆然としていたハッサクの思考にノイズが走る。
だが、人体模型の女達はハッサクを全方位から隙間なく攻撃した。
一瞬、空間に静寂が満ちる――が、
「うらぁ!」
という掛け声とグリーンの光によって人体模型の女達は元の人形に戻り消滅した。
ミズナの顔が青ざめ、アクビをする勇者の正気を取り戻す顔に見とれた。
「……お前達二人があり得ない事をしてたおかげで正気に戻れたぜ。女はキレイだかわいいんだ……っていう逆をつけばいいんだな。キレイなだけのもんに惑わされる所だったぜ」
ミズナのテンプテーションにより籠絡されていた気分がサタラとクロコが普段しない行動により気分が削がれ、ハッサクの心が冷めて正気になった。
そして、ハッサクは勇者としてだけではなく、レディハンターとしての自分を思い出した。
「俺は勇者でありレディハンター。狩られる側じゃなくて狩る側だ。だから俺は堕ちないぜ――」
グリーンの光と共に、ハッサクはミズナを倒した。
こうも簡単に倒された事でミズナは敗北を認めた。
次のゲートを開くミズナは言う。
「行きなさい。歴史を貴方が変えるのよ」
「おう。この勇者ハッサクに任せとけ」
そして三人は七人目の勇者英霊がいるゲートをくぐった。
そこにはいつも通り、ワープ能力のある転生者・ハイレグ女王フェイがいた。
「とうとうここまで来たわね。おたんこなす達よ」
「おい、毎回毎回ワープしてくんな。何回繰り返すつもりだ?」
「私の存在を忘れないようにする為に出てるのよ! 私は目立ちたがり屋だから!」
「自分で言うな自分で。次の勇者英霊で最後だ。お前はボスステージで鼻くそでもほじって待ってろ」
「ほじらないわよバカ!」
そしてフェイはワープした。
ハッサク達は最後の勇者英霊・嫉妬を司るシャルナッツの空間にたどり着いた。




