強欲の英霊イクダラー
強欲を司る勇者英霊イクダラーの空間。
そこには肉があった。
ハンバーグ、ステーキにすき焼き……ありとあらゆる肉の料理が浮かんでいた。
これは全てイクダラーが好む肉の料理である。
『……』
ハッサク達もじゅるり……とその食欲をそそられる香りに唾液が口に溢れる。その皿に乗る肉汁滴るデミグラスハンバーグを見つめるハッサクは、
「うおー! 美味そうだな……まだ強欲の奴はいないし、食うか?」
「いやっぽう! 食おう! 食おう! やっぱ肉最高でしょ!」
ハッサクとサタラを制するクロコは嫌な気配を感じつつ言う。
しかし、ゴッドはすでに自分の身体以上の肉にくらいついていた。
「手を出さない方がいいかも。敵は強欲を司る勇者英霊。もしかしたら欲の加減を試されているのかもしれない」
ピクピク……と鼻を動かすサタラは赤い髪をポニーテールに纏めながら空中に浮かぶ無数の料理の匂いを嗅ぎ悪しき魔力の有無を確認した。
「……とりあえず毒とか変な魔法はかけられてないよ。食べたいんだけど食べれないんじゃ我慢だね。とりあえず強欲の勇者英霊が現れるまで待とう……よっと」
サタラは空中に浮かぶ肉料理を見つめながらイスらしきものに座る。すると、ハッサクとサタラは驚いた顔でサタラを見つめていた。
肉の誘惑に負けないサタラちゃんに感心してるな……と優越感を感じるサタラは胸を揺らし、足を組む。
すると、お尻の方がムズムズする。
「便秘じゃないのに……ん?」
「フンフン! エクスカリバーをよこせぇ!」
ズアァ! とサタラがイスと勘違いしていた強欲の勇者英霊イクダラーがサタラを押し退けるように立ち上がる。フンフン! と鼻を鳴らし、白い鎧を纏うイクダラーは剣を突き出す。
それに反応するハッサクは構えた。
「お前が強欲の勇者英霊か。バトル方法は戦闘でいいんだな?」
「構わん。それよりもエクスカリバーを寄越せ! お前には過ぎた代物だ。私こそがエクスカリバーを有用に使える存在だ!」
尻を抑えながらハッサクの方に寄るサタラを横目で見つつ、クロコは言う。
「エクスカリバーはハッサク専用よ。勇者にしか使えないの。すでに過去の勇者には必要無いわ」
「残念ながらそのエクスカリバーがあれば新しい力を生み出せるんだ。つまり、勇者とは新しい世界の軸を生み出す存在でもある」
強欲さを露わにし、空中に浮かぶ肉を捕食するイクダラーはムシャリムシャリ……と口の中を肉汁で溢れさせながらハッサクの背中の聖なる剣を見据えた。完全に暴走している勇者英霊を目の前にし、会話は無駄と悟るハッサクは言う。
「サタラ、クロコ。人間は完全に欲は捨てられない。魔力のサポートで無心になれ。無心になればやれるはずだ」
『オッケー牧場!』
二人は魔力のサポートで無心になる。
一定時間完全に無心になるサタラとクロコは攻撃に出た。
そしてイクダラーも戦闘を開始する。
「行くぜイクダラー!」
「フンフンファイアー!」
ハッサクは相手を倒す事だけを考えて動く。
三体一で一気にカタをつければ欲に呑まれる間も無いだろという速攻作戦に賭けた。
笑うイクダラーは言う。
「すでにお前達の欲はサーチ済みだ。オッパイの脂肪を奪ってやる!」
瞬間、サタラとクロコの乳が萎んだ。
『――!』
二人はその影響でショックを受け倒れてしまう。
唖然としつつハッサクはサタラとクロコに駆け寄り、本当にオッパイが無いのか確かめる。
「無い! オッパイが無い!」
そして、ハッサクはこんな行為をして必ず反応する自分の身体の一部が反応してない事に疑問を持つ。後ろを向き、ツナギのジッパーを開けてチンコを確認するとインゲンサイズのチンコは無かった。
「……ガーン! チンコ盗られた!」
「ふははぁ。すでに魔王二人のオッパイとお前のチンコは戴いた。勝てなければこれは消滅するぞ」
「……じゃあエクスカリバーと交換だ」
流石にサタラやクロコが気絶するほどこショックを受けてる状態でオッパイを消されたら更なるショックで死ぬな……と感じるハッサクは背中のエクスカリバーの革ベルトを外した。
「約束は守れよ。元勇者さんよ」
「あぁ。わかってるさ」
グッ……と持ち手に力を込めたハッサクはエクスカリバーを投げ渡した。口元を笑わせるイクダラーはゆっくりと久しぶりに触るエクスカリバーを鞘から引き抜く。
「素晴らしい……これほどの剣はやはり私にこそ相応しい。俺にエクスカリバーのエネルギーが流れこむぞおおおっ!」
その白磁に輝く聖なる剣を目にしたイクダラーは煌めく緑の粒子を見た。
かつて勇者であった頃のイクダラーの記憶は何かの違いを訴えた。
それは、明らかにエクスカリバー本体が持つ輝きではない。
「おい! 貴様自分のエネルギーを溜めてやがったのか!」
「へっ、元々俺のものだ。俺のエネルギーがあってもおかしくないよな?」
「減らず口を!」
自分の身体に溢れるハッサクのオーラにイクダラーは倒れる。
エクスカリバーに纏わせたエネルギーを逆流させるようにイクダラーを倒そうとしたハッサクの作戦は成功した……かに見えた。
「……残念だったな。この程度なら吸収出来る。欲の深さが違うんだよ小僧」
しかし、エネルギーを吸収されたことによりイクダラーは更なる力を得た。ズガガガガッ! と両者は力比べになり、白刃取りをするハッサクは何故か必死にならずにいた。
「もう諦めたか? このまま斬られてしまえ……軟弱な勇者よ!」
「面白い事を教えてやるよ。俺がエネルギーを与えたのは、俺のチンコにだよ!」
「何……? ぐおおおっ!」
ハッサクの暴走するチンコパワーにイクダラーは倒れた。
「……なんて野郎だ。まさか自分のチンコを暴走させるとは……」
「それが童貞の強さだ! フハハッ!」
「それ、格好良くねー……」
そして、ハッサクは強欲のイクダラーエリアを突破した。
オッパイを取り戻したサタラとクロコは倒れるイクダラーに蹴りを入れ、次の空間に向かう。
いまだに肉に噛み付いているゴッドは必死に三人を追いかける。
すると、またもやハイレグ女王フェイが現れた。
ハッサクは後ろの仲間を守るように構える。
「何やら仲間が増えてるわね。神を仲間にしたの?」
「仲間っていうか暇人だからついて来てるだけだ。ゴッドはアイス好きの暇人だからな」
「のほほ! ワシは暇人ではないわ!」
否定するゴッドはハッサクの後ろに隠れたままフェイを見つめる。
それを笑うフェイは、
「まぁいいわよ。神であっても私のワープ能力には勝てない。私が勇者を超える大勇者になるんだから」
「大勇者? 勇者は俺だ! お前にはこの世界で自由にはさせねー!」
「そう……でも残る勇者英霊に勝てば、私との決戦が待ってるわ。そこで全ての決着がつくわよ。私にたどりついてみなさい、おたんこなす達よ!」
そして、神をも恐れぬフェイはそのままDKを使いワープした。
ハッサク達は第六の勇者英霊に向けて進む。