大いなる聖剣・ビッグソードへ
そして、アルトギルドでの会話は濃霧に包まれる謎のエリア。
大いなる聖剣・ビックソードへ向かう話になっていた。
ハッサク達は各々にドリンクを飲みながら話す。
すでに白銀の幼女ゴッドはハッサクに抱きついたままヨダレを垂らし熟睡していた。
元勇者であるアルトはハッサクに言う。
「ドラゴンランドの女王・フェイはお前のエクスカリバーを欲っしている。剣のパワーで七つの大罪を司る勇者英霊を操るつもりだろう」
「そういえばそんな事も言ってたな。ビッグソードの勇者英霊達をこの剣で操る……か。勇者じゃないあいつに出来る事なのか?」
「奴も転生した存在だ。どんな特殊な力を持ってるかわからん。あのDKを媒介にするとはいえワープ能力を持ってるんだからな」
ハッサクとアルトの話に全員は黙る。
黒髪を揺らしメガネを上げるクロコはエクスカリバーを見た。
「エクスカリバーはハッサクがしっかりしてれば問題無いでしょう。それよりもDKは何なの? ドラゴンランドにはそんなものは無いはずよ?」
「そうだ。DKはただフェイが勝手に名づけただけのクリスタル。あれはビッグソードにあるクリスタルなんだよ。ただの霊気がこもる綺麗なクリスタルだけの価値なんだが、奴がそれを変えてしまったようだな」
そしてアルトは元勇者の知識としてDKの話をしだした。
DKとはビックソードに点在するただのクリスタルである。
それをフェイが魔力と科学力で精製したもの。
DKがある限りフェイはワープを使える。
一度行った場所やイメージできる場所へは瞬時にどんな遠くからでもワープが出来、そこから奇襲を行える戦略兵器でもあった。これにより、フェイに魔法で与えられたイメージをもって一日に一度しかワープが出来ないドラゴンランドの一般兵は他のランドを蹂躙できたのである。
その場の全員がDKの理解をする中、半分寝かけていたサタラははだけた学生服のシャツのボタンをとめながら言う。
「DK? ディープキス? ん~」
「違う。つーかクロコも乗るな!」
ぐぐぐっ……とサタラとクロコを防ぐ。
悪乗りするハッサクのレディ達はそのままハッサクに覆いかぶさる。
無数のキスを受けたハッサクは無駄にダメージを受けつつ呟く。
「ハーレムも戦争だな。いや、戦争以上か……」
そして夜も更け、会議はソードランドの守護の話へ向かう。
「やはりドラゴンランドにも牽制をかけた方がいいんじゃないか?」
ナスビバトラーズの奇襲を牽制する意味でも武人・クロソーズは真黒百式に打ち粉を打ち言う。
しかしハッサクの意見は変わらない。
「ドラゴンランドへ攻勢を仕掛けるよりソードランドを守る事が大事だろ。奴等にはワープがある。道のりにしてマジックバイクや馬車でも一週間近くかかる距離を一瞬でワープ出来るんだ。守るのが一番。フェイとの戦いに勝てば攻めなくてもドラゴンランドは何もしてこなくなるんだからな」
あくまでも目標はビッグソードエリアにいるフェイとの決戦に勝つ事であった。
明らかに罠ではあるが、フェイとてビッグソードエリアの全貌全てを知るわけでは無い。
そして会議はお開きになる。
翌日――。
元勇者アルトとその妻ユコレーナはソードランドを守護する魔法結界の再構築と強化に励んだ。次の結界は地面から崩せない地面をも取り込んだ完全な球体の結界で、ソードランドを完璧に守護できる結界であった。
そして、クロソーズを中心とした戦闘部隊が東西南北の門の入り口を固める。
ハッサク・サタラ・クロコの三人はすでにマジックバイクにてビッグソードへ向かっている。
その最中、ソードランド中央都市の城にいるソードランド王の部屋では騒動が起きていた。
何と、紫のスーツに身を包むドラゴンランド兵士・ナスビバトラーズが奇襲をしかけてきたのであった。
再度の結界が張られる昨日より待機していた一団がソードランドの王を狙ったのである。
「ぶぶぶ無礼者! この私を誰と心得る? ソー……げはっ!」
「ソーローか? げははっ!」
男達は笑い、ソードランド王を蹴る。
ボコボコにされる老人はステテコ姿のまま死んだフリをしていた。
しかし、本当の死が迫っている。
「王を狙うのも計算の内だよ。死ね」
「私はすでに死んでいる! 返事が無い! ただの屍のようだ!」
『返事してるじゃねーか!』
ナスビバトラーズ達の剣がソードランド王に襲い掛かる。
『アイドルビーム!』
プシャー! とスポットライトから放たれたような七色の閃光ビームによるアイドルシスターズの攻撃で倒す。辛くも生命の危機を脱したソードランド王は言う。
「チミ達、もっと早く来れたでしょ? てかもういたでしょ? 今朝から私のプリンが三個無くなってたし、三人組でちょうど……」
『アイドルビーム!』
「ぐはぁ!」
ヂュワ! とアイドルシスターズはソードランド王の記憶を消すように攻撃した。
そんなこんなでソードランドは敵の奇襲にも耐えられる布陣を敷きつつあった。
そしてマジックバイクに乗るハッサク達は――。
「ビッグソードは霊的な力がある。霊がいるんだぜ霊が。お前達小便チビるなよ?」
赤い髪を風に揺らし、多少運転の荒いサタラはゴーグルを外し言う。
「チビらないよ! おしっこは!」
「そうね。大のほうは漏れるかも」
そう言うフルフェイスをかぶる黒セーラー服のクロコにハッサクは転倒しそうになりながらハンドルを切りツッコむ。
「漏らすなよ! 二人共魔王なんだからしっかりせい!」
『はいはーい』
ハッサクは美少女の霊に追いかけられる夢想をしながら内心ビビッていた。
(怖くないぞ! 怖くないぞ! 俺は勇者。幽霊なんて怖くない。勇者の英霊なんてもっと怖くないぜ)
すでにハッサクはグリーンのツナギの股間が濡れ、漏らしていた。
そんな事が気になっていると、赤土の道の先に何かが転移して来た。
それは紫のスーツを着た背中にナスが描かれる戦闘部隊――。
「ナスビバトラーズか!」
どこかでハッサク達の移動を察知したフェイが部下にイメージを送りワープ出来る準備をし、ワープさせたのだろう。DKさえあれば一日一回きりのワープなら一般兵でも可能なのである。
消滅するDKを捨てるナスビバトラーズは一気にマジックバイクに乗る三人に魔法を撃ち込んで来る。
「神風特攻隊かよ!」
三人は攻撃魔法の直撃したマジックバイクを捨て、地面を転がった。
ナスビバトラーズは円を描くように駆け、三人を取り囲む。
すぐさま、クロコは倒れる二人を起こし言う。
「互いを背にするトライアングルの陣で乗り切るわよ」
『おう!』
ハッサクとサタラはクロコの作戦に乗った。
勢いに乗る三人は敵を駆逐して行く。
余裕が出たハッサクは屁がしたくなり、戦闘の音で消えるからしようかと考えつつ敵を倒す。
その刹那――勇者と魔王の二人は戦慄する。
『――!』
その三人の背後の死角となる中央にナスビバトラーズの一人がワープした。
しかもその兵士は大型の爆弾を抱えている自爆兵だった。
「死ねやカス共」
死を予感する二人の魔王はハッサクだけは助けようと動く――が、
「はうわぁ……」
驚きでハッサクは屁をしてしまう。
「ふがっ!」
プゥ……とワープした自爆兵は臭いで倒れた。
瞬時に二人の魔王は敵を上空に蹴り上げ、ハッサクを伏せさせる。
ズゴウーーーーーーーン! と爆発した爆弾と共に、全ての敵は倒れた。
そして、三人は徒歩にてソードワールドの最大の謎の大陸。
大いなる聖剣・ビックソードへ向かう。
その三人の姿を白銀の幼女・全世界の神であるゴッドはアイスを舐めながら詩人のように見ていた。
「勇者と魔王の共存……それがうまく行くかはビッグソードにて明らかになるんじゃ……じゃ?」
格好つけて呟くゴッドは白いオーバーオールにチョコアイスを落とす。
早く処理しなければ色がついてしまうと焦るゴッドは半無きでオーバーオールを脱ぎ、その部分を舐めた。