表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レディハンター! 異世界迷宮で美少女魔王をハントして勇者になった!  作者: 鬼京雅
新たなる転生者現る! ビッグソードの秘密編
42/66

ドラゴンランドの女王・フェイ

 ソードランドは地震魔法にて建物の崩壊に見舞われた。

 突如、ソードランド上空に現れた謎のハイレグ美女は地面に備え付けた魔力の棒にて自身の地震魔法を増幅させ、ソードランドの魔法結界までをも破壊したのである。結界が無くなった事により、多数の軍勢が攻めて来た場合にはバリアがなくなり各地区の被害は甚大になるが、今は地震による被害の確認が最優先だった。


「すごい地震……これは魔法だな。誰だか知らんがとっちめてやる! 行くぞ!」


 アイス作りをしていたハッサクはサタラと共に、人々が集まる場所に駆けた。

 その間、被害を受けた人々に心を痛めながらも大きな歪みがある存在の元へ向かう。

 多数の東地区の人間が集まる広場では、皆が一様に上空を見上げていた。

 途中で黒魔王クロコと合流したハッサクとサタラも現場に着く。


「何だ……あの女は?」


 魔王のような覇気で下界の人間を見下すハイレグ美女は笑う。

 真紅のハイレグ水着に、肩に大きなダイヤモンドが輝く黄金色のまばゆいマント。

 この出で立ち、只者ではない。

 そしてその股間のきわどい食い込み具合でも何もはみ出ていない。

 これは大人ではありえない状態のもの――。


「パイパンか!」


 ハッサクは直感でそう想像した。

 同時に赤い宝石を握るハイレグ美女は突如ブンッ! と姿を消した。


『!?』


 その場の全員が驚愕する中、すぐ側からその女の声が聞こえる。


「どこを見ているの? 私はここよ」


「……ワープなのか? ほぼ魔力の反応は無かったからな」


 冷や汗が流れるハッサクは微かにしか魔力の反応の無い瞬間移動に絶句した。

 サタラもクロコも魔王であるが、魔力無しではこんな移動方法は出来ない。

 いや、魔力をもってしても次元を超えるワープというものは不可能であった。

 その膠着状態を打ち破るように数人のレディハンターがハイレグ美女をハントしようと動く。


『女! お前はハントするぜ!』


「レディハンター……嫌な職業ね」


 ズババッ! とその女王は鞭を群がるレディハンター達に叩きつけ妖艶な笑みで言う。


「このドラゴンランドの女王・フェイ様に逆らうのは万死に値するわ」


 圧倒的な強さを見せるフェイに対し、ハッサクは前に出た。

 そして、拳を構え謎だらけの女王に話しかける。


「ドラゴンランドは遠くの王国だな。その女王がソードランドに何の用だ? そしてその派手な格好はドラゴンランドでは普通なのか?」


「この異世界では普通よ」


 ふへ? という顔のハッサクはゆっくりと機械のように首をサタラ達の方に動かし呟く。

 よく見ると、金色のマントの背中にはナスのマークが描かれていた。


「……いや、異世界でもアレはヤバイよな?」


 スッと前に出るクロコは黒魔王の威厳を持って言った。


「有り得ないわね。どすけべのする格好ね。その前に……」


 クロコは艶やかな長い黒髪をかきあげ、フェイに問う。

 それはハッサクに新たな驚きを与えた。


「貴女は今、ここを異世界と言ったわね。という事は貴女はこの世界の住人じゃないわね? その特殊なワープ能力も考えると、おそらくハッサクと同じ……」


「そうよ。私は転生者。このブレイブワールド全てを支配する女王なの」


 そのフェイの言葉にハッサクを中心に時が止まる。

 新たなる転生者の出現に、恐ろしい悪夢を見ているとしか思えない。

 一人目の転生者は勇者になり、二人目は謎のワープ能力がある――。

 そして明らかに二人目の転生者は我欲に眩んだ悪魔の女であるのがソードランドの住人を恐怖に陥れた。


「……新たなる転生者だと? この俺以外に転生者……」


 不安と焦りで固まるハッサクの頭を撫で、赤い髪と巨乳を揺らすサタラは尻尾と指を新たなる転生者に指して言う。


「淫乱よ。淫乱。ハッサくんの世界の女はどうしようもないね。もっとまともな人が転生してくれば良かったのに! おばさんだし!」


「おたんこなすが!」


 おばさんの言葉に激怒し、手に持つ鞭を振り回し怒るフェイは叫ぶ。


「元の世界で営業のプロフェッショナルの私がまともな人じゃない? まともじゃないのは隠していたファッションセンスだけよ! このおたんこなす! それに私はまだ25歳よ!」


 その言葉に一同は呆気に取られた。

 そして、このフェイの支配するドラゴンランドの話を聞く中、ハッサクは一人違う事を考えていた。

 フェイがこの異世界に転生してきた時、持ち前の攻撃的な性格ですぐに魔法を覚え一月足らずでドラゴンランドを支配した。そして好物のナスを畑で栽培させつつ、近隣他国に侵攻してその勢力を伸ばした。

 数ヶ月でドラゴンランドの軍備は拡張され、十万の下僕にナスビのブローチをつけさせ、紫のスーツを着せた。それはナスビバトラーズと命名され、各地のランドを無慈悲に壊しているのであった。

 それを知るサララとクロコは攻撃魔法を展開する。

 しかし、ハッサクの言葉がそれを止めた。


「お前は……俺の親父の会社に融資しなかった極悪非道の銀行員――」


「思い出した? そうよ。その極悪非道の銀行員。笛身沢羅舞ふえみざわらまい。頭とケツでフェイよ!」


 ビシッ! とフェイは悪魔の顔をして地面を鞭で叩く。

 ふと、ハッサクの中で現実世界に帰れるという淡い期待と甘美な夢が湧いた。


 現実に戻れる――。


 それを意識したハッサクは、この異世界において最強の勇者である自分を捨ててでも戻りたいという願望が一瞬だけ生まれる。

 しかし、そんな幻想は一瞬にしてかき消えた。


「死になさい」


「くっ!」


 ファイの鞭がハッサクを襲う。

 瞬時にカウンターで払い、ハッサクは攻めた。

 そして火、水、雷の魔法攻撃を繰り出す。


「フレアボンバー! ウォーターシャイン! ギガボルトザン!」


「わぁぷ♪」


 シュウゥ……と赤い宝石を握り締めるフェイはワープにて姿を消す。

 その場の全員はフェイがどこに消えたかもわからず驚愕する。

 ハッサク達も、ほぼ魔力の反応が無いワープの為にどこに出現するか予測もつかない。


(……どこだ? どこにワープしやがる?)


 キョロキョロとハッサクはサタラとクロコを背にしつつ、三人で策敵する。

 すると、ハッサクのアパートの隣に住むおっさん。

 キングオブ童貞のバルクは言う。


「ハッサク! あそこだ!」


「! センキュー! バルクのおっさん!」


 ワープした先にいるフェイを見つけた。

 広場の時計塔の上でたたずむフェイはハッサクの背中にある聖なる剣を見て言った。


「ねぇ、背中のエクスカリバーは飾りなの?」


「巨大な力は簡単には使えない。エクスカリバーは必要な時に使う。お前ごときに使うか」


 そしてサタラは間髪入れずに言う。


「股間のインゲンと同じなのよ! 夜にしか使えないの!」


「そうそう夜な夜な俺は一人で……って、おいっ!」


 そんなやり取りをしていると、一人のおっさんが駆けて来る。

 その瞳は、フェイの持つ赤い宝石に釘付けだった。


「そいつがあればワープ出来るのか! 俺も童貞卒業だぜ!」


 その時、ハッサクのアパートの隣に住むレディ無しのレディハンター・バルクはキングオブ童貞のパワーをひねり出し、フェイに飛びついた。


「ちょ! どきなさい!」


「嫌だね! 俺もワープ能力を手に入れてチートになるんだ!」


「なら死になさい……わぁぷ♪」


 バルクは抱きついたままワープに巻き込まれた。


『……』


 バルクの行動に唖然としていると、少し先の地面の上にフェイはブンッ! とワープして出現する。

 そこにバルクはいない。

 クロコは絶句し、サタラは目を丸くした。

 そしてその謎をハッサクが問う。


「バルクは……どうした?」


 ニイィ……と口元を笑わせるフェイは、


「死んだわよ。普通の人間ではワープに耐えられない。魔法力と科学式の負荷によって次元の狭間に消え去るしかないのよ。このDKドラゴンクリスタルは選ばれし者しか使えないのよ。知っておく事ねおたんこなす共」


『――!』


 ワープがDKを奪えば誰にでも出来ると考えていたクロコは舌打ちをし、ハッサクは怒りが爆発する。


「ワープ能力はお前専用の力か……クソが! バルクは三十路を前にした童貞おっさんだったんだぞ! もうすぐ魔法使いにクラスチェンジ出来ると悟りを開いていたのに……」


 ガッ! とハッサクは地面を叩く。

 そしてすでにバクルの事など忘れるフェイはこのソードランドについて質問した。


「何故、ソードランドには勇者が生まれるパワーがある? 歴史を調べると、ここから全ての勇者は誕生しているわ。このランドには何があるの?」


 すると、先代勇者のアルトが妻のユコレーナと共に現れた。


「その質問には俺が答えよう。それはここがこのソードワールドの発端となった地だからだ。今となってはブレイブワールドの一地区でしかないが、それは勇者誕生の地である秘密を隠す為にそんな状態にしているというのもある」


「だからこんなに普通な街なのね。調べるのも大変だったわよ」


「お前、ビッグソードに行ったな?」


 アルトの問いに、ファイは頷く。

 そして悠然と語り出す。

 深い霧に包まれるビッグソードエリアは巨大な剣が刺さるこの異世界の神秘の場所で、誰もその実態を知らない。

 普通の者では深い霧にはばまれ侵入出来ず、帰されてしまうのである。

 そのビッグソードエリア最深部には過去の勇者の英霊が祭られていた。

 世界に悪しき者が現れても、現在の勇者がビッグソードエリアに行けば過去の勇者のパワーをプラスして倒す事が出来る。

 しかし、勇者がピンチの時しか使用出来ない制限があるので、ビッグソードエリアは伝説のエリアとして霧が深い謎の場所として存在するのであった。


「……まさか勇者の俺が敵からそれを知るとはな」


 ハッサクはすでにビッグソード内部に侵入した経験のあるフェイの情報に怒りを感じた。

 この場の雰囲気は、新たなる転生者に呑まれつつある。

 神である白銀の幼女・ゴッドは完成まじかのアイスをひと舐めし、千里眼でその光景を見つめていた。


「のほほ……次元率を逆らって現れる転生者。こいつは強いぞぇ?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ