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千年の戦いの決着

 勇者として真の力を得たハッサクは最終決戦に合流した。

 すでに勇者としての力の大半を失い、本来の力を出せないエクスカリバーで戦ったがやられるアルトの前に、魔法や剣のチートパワーを得たハッサクが――。

 それを見るアルトは言う。


「俺は今の勇者じゃない……今の勇者は俺と同じ異世界から来たハッサクだ!」


 そしてユコレーナは笑う。


「どうやってあの空間を出たかと思えば……そうか、お前が本当に勇者。だからエクスカリバーが召還されたのね。でも、私は拳に対してはチートでね。刃物でなければ倒せないぞ? 覚醒したならそのエクスカリバーも使えるんだろうね?」


「……それはこれからわかるぜ。金魔王ユコレーナ」


「果たして、お前に剣を使えるのかな? このソードランドの住人が本当に剣を使えない勇者を認めるとでも思ったのか小僧っ!」


「あんまカリカリすんなよ。シワが増えるぜ?」


 ハッサクのあまりのグリーンオーラにユコレーナは動揺が抑えられない。

 そして現在のソードランドの状況について語る。


「ソードランドは我が天空兵力が燃やしているわよ。ここで勝っても無駄よ無駄」


「言ったろ? ソードランドの連中の根性なめんなよ? だいたいドラゴンが空を飛ぶとか知らんし」


「ドラゴンが空を飛ぶのは当たり前でしょう? 今頃ソードランドは火の海よ……アハハハハハッ!」





 ソードランドは東西南北中央の全地区が火の海になっていた。

 ユコレーナ四天王と戦うサタラは空中から進撃するドラゴンを落として行くが、スラーンに邪魔される。


「まさか、ドラゴンが空を飛ぶなんて知らなかったわよ」


「飛翔する姿を見せなかったのはこちらの作戦よ」


「このっ!」


 サタラは敵の天空兵力が一斉に迂回してソードランドに向かった事に焦るが、猫隠れの忍や市民に託すしかなかった。

 ソードランドでは飛び交うドラゴンの群れに人々は応戦するが、無残に倒されてしまう。

 千年前の聖剣戦争でアルトの仲間として活躍した猫隠れのニャモ達も奮戦するが、ソードランド全体を守ることができない為に身体よりも心が疲弊していた。


「このままではアルトに顔向けできないな……千年ぶりの戦争は厳しいものがある――?」


 牙をむくドラゴンが、一人の市民を助けたニャモの背中に襲いかかる。


「グアアアアアッ!」


「――くっ!」


 絶体絶命のニャモは死を覚悟した。

 すると、ニャモの短い金髪が揺れる。

 甲高い掛け声と共に、黒髪逆毛の男が現れた。


「ハッハーーーッ! ずいぶんとやられてるなソードランドォ。フレオ、メテア。くそドラゴンを始末しろ」


『了解』


 後方からファイレアーカが現れ、その部下のフレオとメテアの炎神二人衆が飛翔するドラゴンを倒しに向かう。敵であるファイレも駆け付けるソードランドの住人達は活気を取り戻し反撃に出始めた。そしてファイレは一匹のドラゴンを串刺しにし、叫ぶ。


「こんな楽しい戦いに負けてたまるかよ! ハッハーーーッ!」





「エクスカリバーの力。試させてもらぜ!」


 ハッサクは聖剣でユコレーナとぶつかり合い、圧倒した。まるで何もできないダルマのようにユコレーナは攻撃を受け続ける。


「このガキがぁ!」


 必死に攻撃を回避し、カウンターでハッサクの顔面に突きを繰り出し、連続攻撃をかます。


「消えろ偽勇者っ!」


「きかないぜ……俺はチート勇者だからな!」


 ハッサクはユコレーナの斬撃の全て指一本で受け止めた。そして、魔力を生み出しクロコが得意とする魔法を放つ。


「メテオレイン」


 ズバババッ! とユコレーナは水の黒玉の雨を受けた。


(くっ! 剣技に魔法まで使えるようになったの? これは本物の……)


 そう考えるユコレーナの目の前にはエクスカリバーを持つハッサクがいる。


「うおおおっ!」


 凄まじいエクスカリバーの猛攻撃は確実にユコレーナの身体にダメージを与えている。グリーンのオーラとゴールドのオーラはぶつかり合い、左側手を突き出したハッサクは叫ぶ。


「サンダーボルト! マグマドラグーン! アースブレイク!」


 雷、炎、大地の極大魔法がユコレーナを襲う。エクスカリバーのダメージにより、ユコレーナはそれに対応出来ず直撃する。だが、ユコレーナは叫ぶ。


「勇者の力は人を孤独にする。お前はそれに耐えられるのか?」


「耐えないさ。仲間に上手く散らしてみんなで乗り越える。俺は一人じゃない。勇者は一人じゃない。誰かに認められる……認めてくれる奴がいるからこそ、勇者だ。この答えで、俺はお前の空間から脱出したんだ!」


 ハッサクは勇者として孤独になる大いなる力を、みんなの助けを得ながら戦う事で孤独にならないようにして生きていく事を覚悟すると、勇者としての力が覚醒した。独りよがりの力ではなく、仲間と共に歩む力を求めたのがエクスカリバーに認められるきっかけとなったのである。


「……」


 そのハッサクの姿に、過去のアルトを思い出したユコレーナから一筋の涙がこぼれた。

 千年前――同じような状況で勇者に敗北した思い出が金魔王の動きを止めた。

 そして現勇者であるハッサクはエクスカリバーを振りかざし言う。


「覚悟! 金魔王ユコレーナ!」


「勇者なんかに……勇者なんかに負けてたまるかーーーっ!」


 最後の力を解放したユコレーナは全てのオーラをゴールドソードに注入した。それを見たハッサクもエクスカリバーに残る全魔力を注入し、駆ける。


「これが勇者ハッサクの聖剣エクスカリバーの一撃だ!」


「そんなものはかき消すわ! 全ての輝きの頂点にいる金色よ、我が剣より解き放たれなさい! ゴールドエクスプロージョン!」


「エメラルド・スプラッシュ!」


 ハッサクのエクスカリバーによる全身全霊の一撃は、ゴールドソードを破壊しユコレーナに直撃する。

 空間に全ての終わりを告げる静寂が満ち、千年前に起きた勇者と魔王の戦いは新勇者ハッサクが幕を引いてソードランドに平和が戻った。


 そして、ユコレーナはアルトギルドで働く事になった。エクスカリバーであったラルコがいなくなった為にアルトギルドには人材が必要だったというのが、アルトの持論だが正直な所はただ好きな女といたいというだけである。二人の娘であるサタラとクロコはぎくしゃくしながらも、親子という関係を構築しようとしていた。

 まばゆく昇る太陽が、伝説の勇者の新たなる始まりがソードランドの世界の果てにあるビッグソードを輝かせていた。




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