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大水泳水泳4

 休憩タイム。

 ハッサクは休憩タイムを、サタラ達と共に取る。サタラ、クロソーズ、ソードシスターズといった自分がハントしたレディ達とハーレム状態の空間であるビーチに広げられたシートに座り、ソードシスターズ作ったおにぎりを口に運ぶ。そして、ソードシスターズのホワイ、ブルース、レッダが言う。


「ハッサク、少し見ないうちに成長しましたわね。色々と」


「ハッサクに勝ったユコレーナも凄いわ。しかも、白組のリーダーなんて何て新キャラなの? あまり出番が無い私達が霞むわよ」


「ハッサク。最終決戦に向けてじゃんじゃん食いなさい! アタイもじゃんじゃん食うから!」


 久しぶりのソードシスターズとの会話にハッサクは、


「……久しぶりにお前達の歌とかを聞くと、新鮮だな。サタラは音楽好きだけど音痴だし。次の決戦は勝てそうな気がするぜ!」


 親指を突き立てるハッサクの背中をサタラはポコポコと叩く。


「チッ、チッ、チッ! 違うなハッサク。勝てそうなじゃなく、勝つんだよ。必ずね」


 もぐもぐとおにぎりを食べるハッサクの後ろに、クロコが現れた。


「お邪魔するよ」


 クロコはハッサク達の座るビニールシートに座る。

 そしてソードシスターズ進められるがまま、クロコはおにぎりを口にする。盛り上がるハーレム状態のハッサク達を影に隠れるフリをしながら見つめるユコレーナは、


「くっ……そのソードシスターズの弁当は私が作ってきたのを売っただけなのに! くそうっ! 必ず次も勝ってやるからね!」


 はんべそをかきながら、ユコレーナはハッサクの顔が描かれた弁当を口にする。そして休載時間が終わり、第三種目・騎馬戦が始まる。


「じゃ、行ってくる よ。一位取って帰ってくるかぜ!」


「勝ったら考えてあげるわ。さっさと、行っておいて!」


 バシバシバシバシッ! とサタラから順番に自分のレディ達に背中を叩かれたハッサク後ろを振り返らず手を振った。その姿を見つめるサタラは、


「ハッサくんも、もう大人の男になるのね……」


 そのサタラの呟きに全員がうなづき、最終戦に向かう勇者ハッサクを見送った。



 最終種目・騎馬戦。

 プールの半分から赤組と白組に分かれ、四人一組の騎馬を結成する。

 互いの組の最後方には、キャプテンであるハッサクとユコレーナ陣取る。ハッサクの騎馬にはサタラとクロソーズ、そしてクロコの三人がいて決勝に相応しい陣形だった。

 ウニとシイタケとニャモに乗るユコレーナは、ハッサクを見て不敵に笑う。


「ハッサク、赤と白のポイントは97対95とほぼ同率ね。この騎馬戦が天王山! 勝者は我よ!」


「そいつは勝負がついてから言いやがれってんだ! ビーカッパー!」


「胸の事を言うな粗チン勇者!」


 赤組と白組のリーダーがモメる中、

 矢倉の最上階にクロコが鼻を動かし現れマイクを手にした。


「クンクン。諸君、とうとう最終種目となったわ。悔いの残らぬよう、活躍して頂戴!」


『おおーっ!』


 とプールの中の選手達がが叫び、観客の歓声が上がる。そして、クロコが開始の合図のピストルを上空に放ち、騎馬戦は始まった。

 両軍の先頭の騎馬戦が、赤と白の鉢巻きを奪い合う。

 一番初めの激突が終わると、敵の左翼がやや引きぎみの為、ハッサクは左翼を攻めるよう指示する。


「左翼に突撃をかけろーーっ!」


 ズズズ! と赤組の騎馬が白組の左翼の陣地に侵入し、白組は包囲された形になる。


「怯むなーーっ ! 一騎、一騎、確実に目の前の敵を蹴散らしていきなさいーーっ!」


 金髪のウエーブの髪をポニーテールにまとめるユコレーナは指示を出す。状況は刻々と変化し、次第に包囲された白組はプールの隅に追い詰められていく。そのまま勝利へ進むハッサクは勝った……という気になった。


「よし、この調子で進め……? ん、おかしいぞ? 白組の騎馬の数が少な過ぎる……」


 鉢巻きを取られてビーチに退避した白組の選手達の数を数えても、プール内に存在するはずの騎馬の数と合わない。


「どうゆう事なんだ……?」


「ハッサくん、下よ!」


「えっ!?」


 真下のサタラに言われ雪音は水中を見ると、人影が揺らめいている――殺那。

 ザバァ! と水中から現れた白組の隠密部隊は、赤組の騎馬を次々と倒していく。そしてすかさずクロコが言う。


「ハッサク、ひとまず後退するわよ!」


「おうよ!」


 ハッサクの騎馬は混沌とする戦況から後退する。すると、背中に冷たい殺気が走り――。


「大将が戦場から抜け出すなど、敗因を認めたようだな、勇者ハッサク!」


 背後から忍びよってきたユコレーナの騎馬に、ハッサクの騎馬は奇襲を食らう。


「くっ……流石は何故か強いユコレーナ……たが……!」


 もがくハッサクはユコレーナに引っ張られる鉢巻きを何とか手で抑えて耐える。両軍共に残る騎馬は少なく、すでに壊滅状態にある。


「諦めろ、ハッサク! 私に勝ちを譲るのがこの場での道理よ! 勇者などは千年前から私の下僕!」


「何を言ってやがる!? 俺は勇者だ! 負けたくない! 負けられないんだ!」


『そうよ! 私達は負けない!』


 騎馬になる三人のレディ達の声によって力を増すハッサクは上手い具合にユコレーナの鉢巻きをつかみ、互いに引っ張り合う。

 すると、クロコに変わってギルド店長アルトのいる矢倉にミシミシッ……という音がこだました。


「ん……この音はなんだ?」


 屋上から観戦するアルトは突然発生した音に反応し た。

 そして、第二種目で多数の生徒が乗り掛かった矢倉には巨大な亀裂が入り、激しい音をたてて崩れ去った。


「おおっと!」


 屋上にいたアルトは地面に向けて落下した。


「くっ……何の音だ!? アルト!?」


 片乳を出すユコレーナとの鉢巻きの奪い合いをしていたハッサクは、壊れた矢倉から落下したアルトの姿が目に入るがどうにもならない。しかし、ユコレーナは落下するアルトを見て唖然とした顔をし、愛おしい者を助けるように叫んだ。


「こんなものくれてやるわ! アルト助けるのよ!」


「……え? お! おうよ!」


 急に戦う事を止め、鉢巻きを渡されたハッサクはユコレーナの鉢巻きをブルマの中に入れた。そしてそれに気づく猫隠れの忍ニャモは言う。


「ハッサク、ユコレーナ! かっ飛べ!」


 ウニとシイタケの手のひらが二人の背中に当てられ、勢い良く二人は飛んだ。

 しかし、アルトはすでに地面に落下する寸前である――!


『きゃああああっ!』


 と 観客のレディ達は悲鳴を上げる。


「ハッサク! 私を蹴れ!」


「……わかった!」


 ハッサクは一瞬迷うが時間が無い為、ユコレーナの言う通り背中を押し出すように蹴った。


『いっけーーっ!』


 二人の叫び声が、弾丸になったユコレーナを加速させる――。


「アルト!」


「ユコレーナ!?」


 ズザァ! と砂に突っ込みつつアルトを抱きしめ、ユコレーナは砂の上を滑った。そしてユコレーナに抱きしめられ助けられたアルトは、


「おい! ユコレーナ? 大丈夫か?」


 顔を唇が触れるほど近づけ、ユコレーナを揺さぶる。右肩を抑えながら、ユコレーナは起き上がる。


「……どうやら怪我は無いようわね。矢倉に亀裂が走った時は焦ったわ。それにしても、千年ぶりだね」


「君というやつは、あまり身体が強くない癖に無茶をしやがって。おかげて助かったよ、ありがとう」


「どういたしまして……」


 アルトの知り合いらしい膝枕をされるユコレーナは、微笑みながら答えた。そして、ユコレーナの身体についた砂を払い、アルトはユコレーナをを立ち上がらせた。


『アルト!』


 ハッサクやサタラなど全ての選手がギルド店長であるアルトの下に駆け寄る。


「心配をかけたね、皆。では、閉会式といこうか」


 サッとアルトはクロコにマイクを渡すと、選手達は赤組と白組に分かれ自然に整列した。


「色々とハプニングな事もあったけど、無事閉会式を迎えられて感謝する。では初めに、個人賞の発表からいくよ」


 ジャララララッ♪ とクロソーズはラジカセの音で発表の間を取る。


「優秀賞・ハッサク。計略賞・ユコレーナ。観客の声援が多かったで賞・サタラ。……最後に目立たなかったで賞、猫乃ニャモとその他二人」


 歓喜するハッサク達とは裏腹に、ニャモ達は愕然としてしっぽを立たせる。


「そして、優勝の組は……」


 ジャララララッ♪ とラジカセの音が流れ――。


「優勝はリーダー・ハッサク率いる、赤組です!」


『うおーー!』


 と赤組の生徒達は盛り上がるが、アルトはそれを制し、


「……実の所、最後に鉢巻きは赤組に渡ったが、俺の事故を知ったユコレーナ勝ちを捨てて、戦っていた赤組リーダーのハッサクに鉢巻きを渡したんだ。だからこの勝負は引き分けとしたいんだが、観客の皆はどうかな?」


 観客のレディ達は黄色い歓声でアルトに答える。そしてクロコは宣言する。


「……そうか、ありがとう。では第一回・水中運動会は引き分けで幕引きわけで終了よ!」


 アルトはハッサクとユコレーナの手を取り、高々と掲げた。二人は観客を見つめてから互いを見つめ微笑んだ。


「これぞ青春の大水泳大会に相応しい、愛・努 力・友情の幕引き! これこそが、ソードランドの魂だぜ!」


 シュン! とハッサク後ろをニャモが横切り、薔薇の花がハッサクの背景に散る。

 笑顔のまま終幕した水中運動会の観客の中に、一人の金髪のウエーブががる髪型の少女が憎らし気な瞳でハッサクを見つめていた。


「ムフフッ、いつまでもソードランドが安定してる思ったら大間違いよ。次なる時代は、我がドラゴンランドなのよ。この千年の恨みはハッサク……そして先代勇者アルトにも償ってもらうわ……」


 ユコレーナは薄笑いを浮かべ、アルトが昔の恋人である自分を探す姿を見つめて観客席から消えた。

 次なる波乱はすでに幕を開けている事も知らず、ハッサクは自分のレディや観客達と共にプールで戯れていた。







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