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大水泳大会2

「……ん、ここは……?」


 金髪の細身の少女はベッドの上で目を覚ます。


「クロコ、ユコレーナさん起きましたよ」


「ん? そう。今行くわよ」


 クロコはハッサクがユコレーナと呼んだ少女のベッドの横のイスに座る。


「こんにちはユコレーナさん。一体全体、男専用の露天風呂に侵入して、何をしてたの?」


 クンクンと相手の魔力を嗅ぐように鼻を鳴らしクロコが言う。ユコレーナはまだ状況を察しきれず、あたふたしつつ答える。


「わっ、私は私であるからにして、私であるのだ! 故に覗きも盗撮もしていない! 最近現れた勇者を調べていただけよ!」


「ふーん。で、収穫はあったの?」


「それはまだわからない。なんせ、湯船の中に潜り待機していたら、のぼせてしまったわけだからな……ってのぼせた私を誰が救助したんだ?」


 疑問に思うユコレーナの問いにクロコは答え、


「勇者ハッサクよ」


 ハッ! と顔を赤らめつつ、ユコレーナは動揺する。


「つ、勇者が私の服を着せたという事は、私の裸をみたのか!?」


「ああ、君の全てを見せていただいたよ。毛穴の奥底までね!」


 ビシッ! とユコレーナに指を差し、ハッサクは言った。


「ああっ……」


 ユコレーナは可憐な少女のように意識を失った。そしてまた眠るユコレーナを見てクロコは、


「……赤と白に別れての運動会形式にするか。うん、それがいい、そうしよう」


「え? ユコレーナ無視?」


「意識が戻らないなら、この女も大会参加者よ。ルックスは十分だし」


 言いつつ、クロコは大水泳大会に向けての構想を膨らませる。その日ユコレーナは朝まで魔法研究所のベッドでハッサクの夢をみつつ眠り続けた。



 ソードランド大水泳大会前日になり、黒魔王クロコから正式に水中運動会の概要が発表された。内容は参加する全ソードランド住民をランダムに赤組と白組に分け、各種競技を競い合う水中運動会である。その告知が掲示板に貼られた時、一人闘志を燃やす金髪の長い少女がいた。

 その少女はご存知のユコレーナ。潜在する魔力が強い謎の少女である。


「……初登場は散々だったけど、この水中運動会でハッサクを中心に、皆の者に私の存在を認めさせてやる」


 ユコレーナは金のヒールを鳴らし、掲示板の前を後にした。

 そして、大会運営する面々がドタバタを繰り広げながらも水中運動会会場を完成させ、当日の日が来た。



 パンパンパンパンッ! とソードランドの上空に水中運動会開幕の狼煙が上がる。

 中央広場に作られた巨大なプールには全校生徒が赤と白の水中キャップを被り、各サイドに布陣していた。今回はイベント日の為、ソードランド住民達も参加している。今回は自分のレディであっても他人であり、一競技者でしかないハメを外した設定で行われる為に、すでに男達は好みのレディを見つけ、熱狂上体にある。


『うおおおおっ!』


 突如、観客の声が更に盛り上がる。

 猫隠れの忍であるニャモ達が乗るウェイブライダーが、プールを横切ると、プールサイドには虹が浮かび上がった。そしてそのまま、ニャモ達は操作を誤り、壁に激突した。


『キャーー!』


 中央のビーチに立てられた矢倉に、こぼれそうな巨乳を揺らす面積の狭い赤いビキニ姿のサタラが現れた。サタラは表をクロコに任され、クロコは大会を影で支えようとしていた。


「いいやっぽう! みんなこんにちわー! 魔王サタラだよ♪ 今日は夏先取り! ソードランド大水泳大会に参加してくれて本当にありがとう! この競技の優勝組にはもちろん、個人で活躍した人間にも商品があるから、是非頑張ってねー。あ、くれぐれもレディ達はポロリには注意きてね。こういうのは男の子は倒れる原因になるから!」


 とサタラは飛び出た左乳首を見て微笑み、会場の男達はヒートアップする。今日は自分のレディはレディではない為に、ハッサクはヤキモキして頭を抱え「ガーン!」と一人叫んでいた。そしてビキニのずれを直したサタラが宣言する。


「それじゃ、ソードランド大水中運動会開幕よん♪」


『おお ーーっ!』


 サタラの挨拶が終わると同時に、パンパンパンパンッ! とまた上空に狼煙が上がり、大水中運動会が開幕した。そして、ソードランドのアイドル・ソードシスターズが会場を盛り上げる為に歌を歌い、踊り出す。ハッサクは自分のブルマのような海パンの紐をきつく閉め、「マッスロ!」と気合いを入れた。

すると、後ろからクロソーズが声をかけて来た。


「どうした? 海パンが緩いのか?」


「緩くはないけど……」


 周りの観客達をを見ながら、ハッサクは答える。ギロッ! とハッサクブルマーを見つめるクロソーズは言う。


「緩くはないが何だ?」


「……これ、どう見てもブルマーだよな?」


「当然だ。このブルマーはハッサクだけの特別仕様だ。それともスクール水着の方が良かったか?」


「い、いや、ブルマー最高だ!頑張るぜ!」


「そうか、ならいい」


 今日は甲冑ではなく女子用スクール水着を着ているクロソーズは微笑んだ。ハッサクにブルマをはかせているのは、クロソーズの趣味である。

 そうこうしていると、ユコレーナが微乳の細い身体に金のパレオがついたビキニ姿で男達を魅了しながら近づいて来た。


「久方ぶりね勇者ハッサク。今日勝つのは私率いる白組よ。貴様のチートパワーを秘めた筋肉の鎧など科学の前では無用の長物という事を教えてあげるわよ。そして世界を……」


 独り言を言いつつ、ユコレーナはいつの間にかリーダーとなる白組の陣地に戻っていった。そして仲間である赤組のクロソーズが言う。


「ハッサク、勝つのは俺達赤組だ。チートパワーがあるからといって遠慮せず戦え。俺も全力でサポートしてやる」


「マッスロ!」


 赤組リーダーに選ばれたハッサクは再度気合いを入れ、赤組の仲間達を鼓舞した。



 第一種目・自由型リレー。

 十レーンある飛び込み台に、赤と白が交互に並び列を成す。

 この競技は一位のレーンから加点していく方式で序盤の体力のある内に早めに得点を得ようと、皆気合いが入っている。ハッサクは第一レーンのアンカーを務め、その前にはサタラがいる。ユコレーナは集めたハッサクのデータを思い出す。


「データによると、ハッサクは水泳は苦手のようだったけど……まぁ、その筋肉では浮力は得られないか」


 第二レーンのアンカーを務めるユコレーナがハッサク話しかける。キリッとした口調でハッサクは、


「俺のデータを調べたようだが、昨日の俺と今日の俺は違う。科学だって進化するっしょう? それと同じだよ」


「……そう、楽しみにしているよ」


 二人が話していると、クロコのピストル の合図が鳴り、第一走者がスタートした。


「ハッサくん。昨日までの特訓を忘れないでね♪」


「オッケー!」


 微笑むサタラに答えたハッサクは、自身の順番を待つ。

 現在は第七走者まで進んでおり、赤と白の両者はまだ互角といえる現実だ。

 観客の歓声が響く会場全体を見回してから、踊るソードシスターズがいる観客席を見た。シスターズ達はグッ! と親指を上げ、つきだした。それにハッサクも応える。


「ハッサくん、行ってくる!」


「サタラ、一番で帰還だぜ!」


「オッケー! いいやっぽう!」


 ギンッ! とサタラの目が輝き、もの凄い猫かきで泳ぎ? 始めた。

 現在、ハッサクのレーンの順位は五位だったが、サタラの活躍で一気に一位まで踊り出る。

 アルトギルドのアルトは金髪をかきながらアロハを着ていてチャラい感じだが、熱狂的にサタラを応援する。先程までは均等に応援されていたが、今泳いでる中では時折ポロリするサタラしか、観客の声援を受けていない。そのポロリ魔王サタラは半週を泳ぎ折り返した。


(ハッサくん! 必ず一番で帰還するからね!)


 猫かきをしつつ、飛び込み台に立つハッサクの下に急ぐ。

 すると、隣のレーンの白組が猛チャージをかけて来た。

 チラッと後ろを振り返るサタラの目に、ニャモ姿が映る。


「ニャモ! あんたって奴は!」


「これは運動会だ! 正々堂々と勝たしてもらう!」


「くっ――!」


 隣のレーンの人間を見ると、ウニとシイタケが濡れた姿でニャモを応援していた。


(……隣のレーンに居たとね。だけど、約束は破るわけにはいかないのよ!)


 少し先のハッサクの事だけを考え、サタラは急ぐ。次第に並びつつあるニャモとの差だったが――。


「ハッサくん! 一番のフラッグは託したわよ!」


「任せとけ!」


 すでにビキニが取れて素っ裸のサタラが壁にタッチすると同時に、爆発寸前の股間をパワーに変えたハッサクはプールに飛び込んだ。





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