ソードランド
千年前――。
先代勇者が死亡したという噂が流れると、突如ソードランド大陸を襲った台風は世の女を地下迷宮へと転移させ、女達は自我を無くしモンスターのような獣のような単純な考えと特殊能力を持つ事になった。
その為、男達は女を抱くには新たに出来た地下迷宮への探索を余儀無くされ、男はレディハンターという職業につく者が多くなった。
迷宮探索はモンスターである美少女を倒し、それを従えた時点で子孫繁栄が出来る一人前の男になるのである。しかし、新前レディハンターのハッサクにはまだまだ遠い道のりである――が、すでにチートパワーに目覚め魔王をハントしてしまっていた。
※
「……んあ?」
ハッサクはふと、シャワー音を感じ目を覚ました。
このアパートでは、自分以外に住んではおらずシャワーを浴びている人間などはいるはずが無い。
いや、それは一昨日までの話だった。
昨日からはロリ巨乳の赤い髪の少女がいた事を思い出す。
シャワーの使い方とか細かい事を教えていない為、ハッサクは急いでシャワー室に向かう。
このボロアパートのシャワー室を壊されたら修理代が払えないのである。
「おい、サタラ! そのシャワーのお湯は五分しか出ない――」
「そうだね。何かもう冷たーいし寒い!」
巨乳を持ち上げ、身震いするサタラは顔を青ざめさせながらも微笑んだ。
呆気に取られるハッサクはその少女の全裸を眺める。
(……)
水を弾く豊かな二つの乳房が目に映る。
それに興奮し、流れる水を辿ると縦長の臍が見え、そしてその下には草の生えない丘が見えた――。
「うわあっ!」
その全てのものがハッサクには初めて見たものであった。
自分で捕まえたモンスターである以上、何をしてもいい。
それは魔王だろうが関係無いのである。
しかしハッサクは案外ピュアで奥手だった。
「……」
石化したように動かないハッサクにサタラは、
「どうしたの? 一緒に入る?」
一切の羞恥を感じないサタラにハッサクは驚いた。
そして、身体の各所を固まらせシャワー室から去った。
色々とハプニングがありながらも二人は朝食になる。
ご飯。豆腐とネギの味噌汁。ほうれん草のおひたしに、アジの開きがサタラによって生み出された。
(……)
魔法で生み出したものであるからハッサクは味に疑心暗鬼になる。
恐る恐る箸を伸ばし、まず白米から攻めた。
見た目は米粒が立っていて粘り気もあり、艶やかで旨そうだ。
サタラが見守る中、ゆっくりと口に入れ咀嚼する。
「……美味い」
「ヤッターッ!」
続いて、味噌汁を飲むがこれも旨い。
ここまで来れば、もうほうれん草のおひたしの甘みもアジの開きの身のふっくらとした旨味も最高だという事がわかった。そのままハッサクは食べに食べ、初めてこの世界に来て食事が旨いと思った。それは単に味ではなく、家族とも言える存在がいるからであった。
「サタラ……ありがとな」
「どうしたのご主人?」
「いや、何でもないさ。それと、ご主人じゃなくて名前を呼べ」
「……ん~、じゃあハッサくんね♪」
そして、ハッサクは二人で生活をする為のルールを決めてサタラに教え込んだ。
ハッサクはこの世界に来て三ヶ月目でようやく自信というものを得た。
※
ハンターギルド・アルト。
地下迷宮への情報や仲間募集だけではなく武具屋もかねるその場所ではダイナマイトアロー。ドラゴンキラーといった高級武器が売っていた。ハッサクはサタラと共にその場所に訪れていて、壁などにひっかけて移動できるアサルトアンカーを購入し、地下迷宮への装備を整える。
「腰のポーチと手袋。アンカーがあればこれからのダンジョンも余裕だな。だって俺様チート勇者だし!」
そして、そのチート勇者にハンターギルドの主人、金髪のアルトは言う。
「勇者は何でも出来るが、何にも出来ないとも言えるぜ」
「何言ってんだよ。俺は魔王をハントした千年ぶりの勇者だぜ?」
「でも拳じゃなきゃチートじゃないんだろ? それでほんとに勇者なのか?」
そのアルトの言う通り、この世界ソードランドは剣の世界であり剣でのし上がるのがレディハンターで認められる事でもあった。それを知っているハッサクは一瞬黙り、サタラは言う。
「大丈夫だよハッサくん! 拳が無敵なら、剣がうんちょでも何とかなるはず!」
「……そうだよな。そうだ、そうだ、そうなんだ!」
サタラに慰められ、ハッサクは気持ちを取り戻した。
そして、アルトから直してもらった鋼の剣を受け取る。
「鋼の剣を使いこなせない奴が、鋼の剣を馬鹿にするんじゃないぞ。早く迷宮探索して本物の勇者になって来い」
「とーぜんよ」
鋼の剣を背中に担ぎ、ポーションや毒消しなどのアイテムを買ってギルドを出た。
かぎ爪の代わりにもなる籠手のアンカーを購入したハッサクは有頂天になる。
そして、ハッサクはサタラと共に新たなる迷宮探索に向かう。