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毒消し草の番人・モンスターブルドッグン

 モンスターボンバーエリアの最奥。

 血肉の匂いが充満するボスエリアの番人・モンスターブルドッグン。

 奥に犬小屋があるボスエリアは空間に毒が満ちていて、紫の霧に覆われていた。毒消しであるキアリー草を持つボスは顔に三つの目があり、毛並みはボサボサで正に野良犬としか言えない姿の魔物だった。鋭い毒の牙が剥き出しになる歯からヨダレが垂れ、新しい獲物が来た……とブルドッグンは喜ぶ。

 その毒に口元を抑えるハッサクにクロコは言う。


「あれがボスか。にしても凄い毒煙ね。私はポイズンシールドで毒を防ぐ事に徹するわ。ハッサクは奴をお願い」


「お願いされなくても奴は俺がやるさ……」


 クロコは毒を防ぐ魔法に徹する。

 そして、ハッサクは背中にある鋼の剣の重みを感じながら大きく息を吐いた。

 瞳を閉じると、毒の進行が進むサタラの顔を思い出し、一つの言葉によってかき消される。


〈貴方はチートでも、私達はチートじゃないのよ〉


 その言葉を思い出すハッサクは早期の決着をつける為に無駄な事はせずに一気に決着をつける事にする。


「行くぜ! ブルドッグソース!」


 駆けるハッサクの拳にグリーンのオーラが溜まり、ブルドッグンは大きな口を開けて待ち構えた――。


「ガラガラッド・ガラガーン!」


 スパッ! ときらめく開始早々の必殺技はブルドッグンの身体を突き抜けた。攻撃を受けた身体は毒の煙のように霧散し、すでに固体としての原型をとどめていない。そしてハッサクは奥の犬小屋を見た。


「あそこに解毒剤はあるのか?」


 スタスタと歩き、犬小屋の中を見るがそこには様々な骨が転がっているだけで何も無かった。すると異変に気付いたクロコは言う。


「ハッサク! ブルドッグンはまだ生きてるわ!」


「ぐっ!」


 霧状態から元に戻ったブルドッグンはハッサクの肩をガブリと噛んだ。

 ズバババッ! とメテオレインで援護するクロコは広域魔法を使った事に後悔した。


「逃げてハッサク!」


 再び霧状態に戻るブルドッグンの身体にはメテオレインの無数の水の玉は当たらず、ハッサクに降り注ぐ。


「――ずあああっ!」


 その全てをハッサクは拳で殴り消す。

 ズズズ……と自分の犬小屋の前で具現化するブルドッグンを忘れるようにクロコはハッサクに駆け寄る。


「ハッサク! 大丈夫!?」


「……あぁ、こんなのはすぐに回復するさ。身体の中に入った毒はこの戦闘中は抜けそうにないけどな」


 そのボロボロのハッサクの姿を見てクロコはうつむいてしまう。微笑むハッサクはクロコの頭をポンッと叩き、


「なーに、俺はチート勇者だぜ? あんな犬コロ簡単に倒してやるよ」


「ハッサク……ありがとう」


 そのハッサクの言葉でクロコは救われた。


「グオオオオッ!」


 と咆哮を上げるブルドッグンは迫る――。


「ハッサク! とりあえず攻撃をしてくれる? 奴の弱点をメガネサーチするわ」


「わかった! 頼んだぜクロコ!」


 動くハッサクは小声で言う。

 ブルドッグンとの攻防を繰り広げるハッサクを見ながらクロコはピピピ……と敵の弱点をサーチする。そして、ハッサクの攻撃が霧でダメージを与えられないのを確認し、クロコの鼻が動く。


「クンクン。サーチ完了。奴の霧状態は長くても十秒よ。十秒カウントしたらガラガラッド・ガラガーンを叩き込めばいいわ」


「なーる。んなら余裕だぜ」


 そのクロコの言う通り十秒後にブルドッグンは具現化した。そしてハッサクはすでに動いていた――。


「ここだ!」


 グリーンのオーラに包まれる必殺の一撃を叩き込むハッサクの一撃が決まる瞬間――。


「ぬおっ!?」


 ブルドッグンの全身から毒の霧が噴出した。

 必殺技を放つ態勢にいるハッサクにはもう回避するすべはない。


「クンクン。その自衛の為の攻撃は匂いが強過ぎてバレバレよ」


「クロコ!?」


 突如クロコが目の前に現れ、ブルドッグンの自衛の全身毒噴射 を防ぐ――と同時にハッサクは空中で身体を回転させながら相棒の機転に感謝し、このボスの強さに敬意を評して徹底的に倒す事にした。


「分厚そうな皮膚だ。派手に行くぜ」


 ハッサクは再度右手に緑のオーラを叩き込む。


「一つ!」


 ハッサクはブルドッグンが吹き飛ばされた先に現れ、拳を構える。


「二つ!」


 更に加速し身体を回転させ――。


「三つ!」


 地面が抉れる一撃を叩き込んだ。


「……魔王を毒にするボスだもんなこの程度じゃ無理か」


「グオオオオッ!」


 とダメージを受け過ぎて暴走するブルドッグンは毒の煙を吐きまくり自身の身体を煙を硬質化して纏わせる。これでブルドッグンの防御力は完璧になる。邪悪なオーラの量になるブルドッグンは暴走して獲物を求めた。


「何ていう……オーラの量」


 クロコはセーラー服の胸のあたりで両手を合わせ震えなが言う。

 そのオーラの持ち主であるハッサクはグリーンのオーラを全身から吹き出していた。


(……)


 瞳を閉じて両手を上げ、大地のエネルギーを吸い上げて自分のオーラと混ぜ合わせる。その間、暴走ブルドッグンは動かないハッサクに迫る。


「グオオオオオッ!」


 ハッサクはそのまま暴走ブルドッグンに食われた。


「……っ!」


 メガネを上げ、絶句するクロコは自分の主人の底力はこのソードランドにとって災いを呼び寄せる危険なものだと直感する――瞬間。

 ブオオオオオッー! というグリーンの大玉がブルドッグンの体内から放出された。


「シャイニング・エメラルドボム!」


 ブルドッグンは毒の霧と共に消滅しハッサクは息を吐く。


「終わった。後はこいつの毒消しでサタラも復活だぜ」


 空中に浮かぶ解毒草であるキアリー草を手に入れた。

 それを手にするハッサクを見るクロコは思う。


(勇者ハッサク……ファイレアーカの言う通りこのソードランドに災いを呼び寄せなければいいけど)


 クロコはハッサクの力と日々変化する裏迷宮について不安を覚えた。

 そして、ハッサクはアルトアパートに帰還しクロコが煎じたキアリー草を水に溶かし飲ませた。


「いやっぽっうっ! サタラちゃん復活!」


 元気のあまり素っ裸になるサタラが堂々と復活した。そのサタラをハッサクは抱きしめた。


「サタラ……良かった」


「……ハッサくん?」


 チュ……とハッサクはサタラにキスをしていた。あまりに自然な行為の為にハッサクも自分で何をしているかはわかっていない。それほどにハッサクはサタラの復活を喜んでいた。


「……本当に良かった。すまなかったなサタラ。危うくロリババアにする所だったぜ」


「まー、まだおばあちゃんはいいかな。黒いライバルもいるしね♪」


「黒いライバル……ひえっ!」


 ハッサクは背中に素肌の暖かさを感じた。背中から抱きしめてくるクロコはサタラと同じく一糸纏わぬ姿だった。妖艶な微笑みでクロコは言う。


「ねぇ、ハッサク。裸なら今の事を私にもしてくれるのかしら?」


「え? てゆーか俺何かしたっけ?」


「そう、とぼけるのね。キアリー草捜索の功労者を無視するとはいい度胸ね。そろそろインゲンを狩ろうかしら?」


 言うとクロコはハッサクの股間を掴んだ。そのまま逃げるハッサクは赤と黒の裸の美少女に外まで追跡された。


「俺が一体何をしたーーー!?」




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