潜入・炎の城
ソードランド西地区郊外炎の城。
ファイレアーカの炎の魔力を蓄え、燃える居城である。城内部は気温四十度以上の灼熱地獄で、城の外周部ですら気温三十度ほどあり、とても人が長居する場所ではない。
ブーーン! というバイクの音を立て炎の城に着いたハッサクは、バイクのスピードを落とさずフルスロットルのままで、入り口の門に必殺の拳・ガラガラッドガラガーンをかました。ドゴォン! と激しい音を立て入り口の門は吹き飛び、バイクに乗ったまま二人は炎の塔内部に侵入した。
「ガーン! 予想以上に暑いぜ」
焼けるような城内部の気温に耐え、地下の炎の結晶のある場所へ向かう。その炎の結晶こそがこの城の熱を生み出す装置であり、サタラはまずそれを破壊してからファイレを倒した方がいいと作戦を立てた。
しかし、突入した地下道の先にある門はズゴゴゴ……と侵入者を拒絶するように閉じ出す。
「侵入がバレたか……。頼んだぜサタラ!」
「いいいやっぽうっ!」
サタラは呪文を詠唱し、マグマドラグーンを放った。ズゴオォォンッ! と閉じ行く扉が破壊され、二人が乗るバイクは更に加速するが――。
「止まりなさい! ハッサク!」
そこにはファイレアーカの部下である炎神二人衆が待ち構えていた。
「恋の熱さならいーが、この灼熱地獄じゃ相手にしねーよ!」
ハッサクは炎神二人衆を気にせず、バイクごと突っ込んだ。すかさずフレオとメテアは槍を構え、繰り出した。
「ガーン! まずっ……!」
ドスッ! とバイクが串刺しになり、エンジンが沈黙した。
「相当な汗をかいているわねハッサク。脱水症状で倒れる前に始末してあげるわ」
うすら笑いを浮かべながらショートカットのフレオが言うが、
「暑いのは、今日一日お休みだぜ」
額から流れる大汗を拭い、ハッサクは言った。メテアの槍に刺さるバイクから、白い霧が出ている……。
「冷たっ!」
いきなり手に持つ槍が冷たくなり、見ると穂先が氷で固まり始めていてバイクを槍からはずした。すかさず、ハッサクが動き――。
「炎よっ! 失恋の時間だぜ!」
ガゴッ! ハッサクによって蹴られたバイクが、炎の結晶に激突した。
シュワァァァァッ……! とバイクの内部にふんだんに詰め込まれたフリーズドライの冷却剤が、炎の結晶を一時的に凍らせた。
「なっ! 何てことを!?」
フレオとメテアは唖然とした。
「あれっ? フレオちゃんは男!? 男っぽいのは名前だけよね?」
挑発するように、サタラはフレオに言った。
「私は女よ! 名前の事は言うなっ!」
「でも乳に関しては、偽者のようだな。そうだろメテア?」
ビクッ! と反応したメテアは黙った。
ハッサクに言われ自身の胸を確認すると、中の胸パッドが外れ て胸の部分の余った布が、だらんと垂れ下がっていた。
「くっ……! そういうアンタはどうなのよ!?」
恥ずかしそうに言うフレオにサタラは、
「私はこんな感じよ」
スルッとビキニの紐を取り弾ける汗の玉が浮かぶ豊かな巨乳を披露した。
『……』
ブルンッと豊かな巨乳が震えた。
フレオとメテアは顔を赤らめた。
「あっ、ちょっと見て! 少し乳首が外に出ているわ」
「ちょっと、早くしまいなさいよ。乳首が外に出てるのは分かったから」
「陥没が治ったのかな? このままの状態なら最高なんだけど……」
そう言うサタラのビキニの紐をハッサクは結び直した。
そしてフレオは凍っている炎の結晶を見て、
「コホンッ。気を 取り直して戦闘再開よ! いいわね、メテア!」
「了解よ、姉さん!」
姉妹は槍をハッサクに向けて構え、跳躍した。
ぐるんっと空中で交差するように回転し、
『ファイレ・スピンッ!』
炎を纏った竜巻状のドリルがハッサクを襲う。眼前で右にバッ! と避けると、次はサタラに狙いを定めた。
「くっ!」
ガリガリッ!とサタラの左腕を少し削った。腕を押さえひざまづくサタラに、更なる追い討ちをかける。
「サタラ!」
「問題無いわよ。ここは、私に任せといて!」
魔力が蠢く右手に炎の刃を具現化させた。
「フレイムソード」
『炎の剣!? そんな物でこのファイレ・スピンは破れない!』
姉妹の声が空間に響くがサタラは気にせず、スッ……とフレイムソードを下段に構え、ファイレ・スピンを見つめ――。
『はああああっ!』
ザンッ! と両者は空中で交差した。
パッ! とサタラの胸を隠すビキニが落ち、右腕から煙を発しながらそのまま地面に崩れる。
そして、ブワッ! とファイレ・スピンを解除した姉妹は、
「残念だったわねサタラ。もうアンタは終わりよ……グフッ……!?」
フレオがそう言った瞬間、姉妹は血を吐き倒れた。苦しみもがく姉妹にサタラは、
「コンビネーションに頼りすぎたのが仇になったわね」
「何ですって……!?」
サタラはファイレ・スピンと交差する瞬間に、右腕を犠牲にして一秒間スピンの勢いを止め、自分の炎でこの姉妹の炎を上書きしていた。それにより、姉妹の技のパワーバランスが崩れてしまっていた。
「安心して。一時的には辛いけど、そのうち回復するわ。魔王の炎だからちょっと長引くかもだけど」
そう言い、サタラは自分の右腕に魔力を消費して生み出す次元の胸から包帯を取り出し巻いた。
荒い息を吐き、姉妹は立ち上がった。妹のメテアは、姉のフレオの胸を見つめ、
「私と姉さんの胸の大きさまで計算に入れ炎を繰り出すとは、まさに神業ね……」
「ちょっと、もう胸の話題はやめてよ!今の攻撃に胸とか関係無いし!」
「うーん。そうかな?」
漫才を始める姉妹にハッサクは、
「俺達上に向かうぜ。完全に動けるようになったら、登って来いよ」
微笑むハッサクと胸のビキニをつけたサタラは上の階に進んだ。