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炎神二人衆

 そしてあっ! という顔をした赤いツインテールのメテアは言う。


「あっ、フレオ姉さん。スカートが破れているわ」


「ファイレ様から貰ったフリフリのスカートが……おのれ、ゆるさん!」


 バッ! とフレオとメテアは槍を構えた。


「戦いに来るなら、スカートなんかはくなっ!」


 そう吐き捨て、ハッサクは鋼の剣を持ち攻撃に出た。


「ハッ!」


 地面を蹴り飛翔したメテアは赤いツインテールを揺らし、ハッサクの頭上に槍を払った。

 ブンブンブンブンッ! と槍を回転させながら突っ込んだフレオは、遠心力の勢いを利用して槍を繰り出し、ハッサクの首をとらえた。

 ガキィン! とフレオの槍はサタラのフレイムソードに防がれ、メテアの槍はハッサクの鋼の剣によって弾き返された。ハッサクはポケットの中から短い筒とライターを取り出し、ジッと筒にライターで火を着けた。ヒュン! とロケット花火が炎神二人衆の間を一閃し――。


「はあっ!」


「セイッ!」


 ロケット花火に意識が奪われた二人衆に、ハッサクとサタラは一撃叩き込んだ。

 ズザァ! と転がった二人衆は屋上の柵に激突し、そして無言で立ち上がった。


「メテア……アレいくわよ」


「分かったわ。姉さん」


 バッ! 二人衆は空高く跳躍し、槍の穂先をハッサクの方に向けてグルグルと回転し始めた。


「!」


 その攻撃がアルトアパートを破壊する可能性があると直感したハッサクはサタラと共に、青いシートが被さった大き目の箱の後ろに隠れた。空中で回転する二人は竜巻状のドリルと化し、ヴオッ! と炎が灯った。


『ファイレ・スピン!』


 フレオとメテアのかけ声と共に、炎を纏ったドリルは急速に落下した。

 その瞬間、バッ! と目の前の箱のシートをはずしたハッサクは、


「サタラ! このコンテナを、あいつ等に向かって投げるぞ!」


「待って! この箱には、何が入っているわ」


「いいから早く!」


 訳も分からぬまま、サタラはハッサクと共に箱を投げた。


『そんな箱一つで、ファイレスピンが止められるものか!』


 炎神二人衆がそう言った瞬間――。

 ボンッ! ボンッ! ボボボンッ! とファイレスピンによって粉々に砕かれた箱からは、ソードフェスティバルで使われなかった打ち上げ花火用の玉が十発ほど入っており、その全てがファイレスピンの炎によって着火して炸裂した。


『きゃああっ!』


 無数の花火が咲く空に炎人二人衆は散った。





 ハッサクの思いつきにより、フレオとメテアは撤退した。

 炎の阿修羅と呼ばれるファイレアーカの陰謀まではわからないが、屋上に残るハッサクとサタラは夜空に開く花火を眺めていた。流れ星を見つけたサタラは言う。


「ハッサク……あんな機転がきくとは思わなかったわよ」


「俺が剣でもチートになった時に打ち上げる、お祭り用だったんだけどな。……何かもう祭りは始まってしまったみたいだぜ」


「……?」


 屋上から下を見つめるハッサクの瞳には、花火の音に驚いた東地区の住人がゾロゾロと外に出てきた。そして人々は一斉に、屋上のハッサクに色々な声援を送った。

 その声を受け、人々に手を振るハッサクの背後に意外な人物が現れた。


「事件ではなかったか……。人騒がせな花火な事だ」


 その少女はギルド騎士団団長ナイト・クロソーズだった。


「事件があっても解決するのが勇者だからな。当たり前のの事をしただけだ」


「勇者か……拳での勇者とは過去をさかのぼっても貴様のみだろう。せいぜい励む事だ」


 言いつつ、クロソーズは転落防止用の柵に寄りかかった。

 ハッサクはアパートの前に溢れる人々の声援に手を振りながら、


「元々、俺は元の世界でも親父に教えられて体術はやった事はあるけど、剣とかは使った事は無い。それが影響してるかは知らないけど、俺は勇者になった以上は戦い続けるしかないんだ。やってやるさ」


「そうだな。人は現状に対応するのが一番の上策だ。しかし、このソードランドも千年ぶりに新たなる勇者を得て変わりつつある」


「たまたま俺が魔王をハントした事がきっかけで人々の交流が増え、街に活気が出ただけじゃないか? この街の人々が心の奥に閉ざしてしまったもの……。お前の中にもあるだろう? クロソーズ」


「そうだな……貴様のおかげで、私も街も変わった。とっとと炎の阿修羅というファイレアーカを攻略し、俺に剣の勇者というものを見せてみろ」


「おうよ!」


 ハッサクとクロソーズが話していると、アパートの外壁を登ってくるV字のサングラスをしたロボがいた。ドスッ! と屋上に着地したのはクロソーズの部下、ヤカサンだった。


「ヤイ! ハッサク! ここまでは上手くいったかも知れないが、次も新しいレディがハント出来るとは限らないぜ!」


「……」


 完全にハッサクにシカトされたヤカサンは詰め寄ったが、クロソーズに止められる。


「待てヤカサン。喧嘩をしにきたわけじゃないだろう」


「……すみませんクロソーズ様」


 ペコリとクロソーズに頭を下げたヤカサンはハッサクに向き直った。

 そしてV字型のサングラスをはずし、


「昔、お前に受けた目の傷はもう直した。屈辱を忘れない為に直さないでいたが、過去ではなく未来を見つめる事にしたよ」


 ヤカサンのつぶらな瞳を見たハッサクは、


「傷を与えたのも知らんし、その目はキャラに合わないぜ。つぶらな瞳も直した方がいいんじゃないか?」


「なにおーっ!」


 逃げ回るハッサクをヤカサンは追いかけた。


「さて……」


 ハッサクはもう一つの大きな箱から、打ち上げ花火の玉を取り出した。

 それをサタラが小型の大砲に詰め込み、導火線に火を付けた。

 ドゴンッ! ヒュ~~~ボンッ! ボンッ! と花火が上がる。


「サタラ、次!」


「は~い」


 そう言われたサタラは、次の玉を運んだ。

 次々に打ちあがる花火に東地区だけだけではなく、西、南、北と全ての地区の人々はその花火に見とれた。



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