レディハンター参上!
「ガーン! ここ、異世界か!」
そう思ったハッサクはまぁいいか……と持ち前の前向き思考で、異世界ソードランドで生きる事になった。ソードランドは遠くの世界の果てに強大な聖なる剣・エクスカリバーが突き刺さっていてソードランドの住人はそれを勇者の加護があると信じ、寝る前はエクスカリバーに手を合わせてから足を向けないように寝る。
現在ハッサクは中世ヨーロッパのような東地区のバクーフに住んでいた。
職業はレディハンター。
それは地下迷宮で自分好みのヒロインを見つけ、生涯の伴侶にする職業である。
レディハンターは多くのレディを囲う事で、より大きな資産を蓄え城のような家に住み、ソードランド国王に対する発言権さえ得る。レディ達は自我が有り町を歩き労働なども普通の人間と同じように事もするが、契約者でない者が手を出すとレディは攻撃に出る。そして、他人のレディに手を出す事は犯罪にあたり、レディが欲しければ地下迷宮で倒して捕まえるしかないのであった。
ソードランドに転生し、レディハンターとして借金をしながらボロアパートに住むハッサクは駆け出しのレディハンターとして日々を地下迷宮で過ごしていた。
・レディハンター
・ネーム
ハッサク
・ランク
駆け出し
・ハンターレベル
3レベル
・装備
壊れた鋼の剣
ナイフ
グリーンのつなぎ
軍手
ブーツ
腰のポーチ
・手持ちレディ
ゼロ
・童貞?
童貞!!!
それが今のハッサクの全てであった。
「ガーン! 腹減った!」
レベル3のハッサクは迷宮探索初級編のスライムエリアである地下十階のスライムキングを倒し、地上へ戻ろうとしたら、突如穴に落ち十時間が経っていた。
普通はレベル5以上でないとボスは倒せないが、何と剣を使わずに拳一つでハッサクは倒してしまったのである。
だが現状のハッサクの空腹は限界に達し、目は霞むがここは地下迷宮の上級者エリアで魔王が出る為によほどの強者でなければ来れない場所である。
「あー、最悪だ。逃げるにもモンスターは強いし、魔王に出会ったら最悪だし……」
人の気配があった為、ハッサクはそそくさと段ボールの中に隠れていると、一人のレディハンターが一人の触覚のようなセミロングの赤髪ロリ巨乳の少女に殺戮された。
「あ……あれは噂の――」
赤い学生服に、膝下の絶対領域を生み出す赤のニーソ。尻尾の先には蛇のような生き物が獲物を求めて蠢いている。そして赤い髪と同じ、真紅の瞳は魔王である証のサタンアイ。これに睨まれた人間は動きが止まり、殺戮されるのである。
魔王サタンヒュドラがハッサクの前に現れた。
その赤い髪の女は尻尾の蛇頭を揺らし、ハッサクの隠れるダンボールに近づく。
(ガーン! ヤバイ! 隠れろ……って、もう隠れてるか!)
自分で自分をツッコむハッサクは緊張から股間を抑えた。
スッ……とその魔王はダンボールに座る。
そのダンボールはサタンヒュドラの魔王のイスらしく、サタンヒュドラはアクビをしながら、うとうと眠りにつきだした。
その真下のハッサクはこのピンチに驚愕する。
(ガーン! 寝たよ、寝やがったよ! ギルドのオッサン特製の鋼の剣も折れたし、ちょとヤベーよ。ピンチ、ピンチ、ピンチンチンだよ!)
チンチンも寒さで縮んでるのがわかるハッサクは頭に違和感を覚えた。
魔王はわざと隙を作るフリをして、真上から攻撃を仕掛けているのかもしれない事に気付いた。
顔に謎の黄色い水がかかり、毒の恐怖にハッサクは怯えた。
(毒消しは……無い。どうする? どうすれば……?)
ふと、この黄色い水に懐かしさを感じた。
これは週に何回か朝起きた時にパンツの中で熟成される匂い――。
(――この魔王! まさか!)
魔王サタンヒャドラは寝ながらお漏らしをしているらしい。
それに気付くハッサクはもうここにはいられない。
「――ガーン! マジかよ!」
ハッサクは頭をびしょ濡れにしながらダンボールを壊し立ち上がった
真上で寝ていたサタンヒュドラともつれるハッサクは頭に違和感を覚えながら意識を取り戻す。
魔王はハッサクの頭にある白い布を指さしていた。
「君、私のパンツ……この魔王サタンヒュドラの脱がしたの?」
「へ?」
いつの間にかサタンヒュドラのお漏らしをしたパンツを頭にかぶっていた。
それを見た魔王は赤いい髪を揺らし怒る。
「コラ!」
「うへぇ!」
不味い! と思いハッサクは身構えた。
モジモジする魔王は頬を赤く染めながら、
「……別に、いいんだけどね」
「……どうも」
恐縮するハッサクは魔王をまじまじと見た。
いや、一箇所しか見てなかった。そこには、このソードランドに来てから見たことの無い――現実でも生で見た事の無い大きなお椀型の物体が二つあった。空腹で理性を無くしているハッサクは飛びかかる。
「……肉、肉まんだー!」
「いやー!」
頬をはたかれて地面に倒れた。
「そ、それがおっぱいか! そうだ、それがおっぱいだ!」
空腹の幻覚から目覚めたハッサクは叫んだ。
何やらよくわからない敵に出くわしたと困惑する魔王は早めに決着をつけようと考えた。
赤い学生服の魔王は巨乳を揺らし、笑いながら言う。
「この私のサタンアイからは逃れられない。死になさいな!」
「ガーン! まさかサタンアイ!?」
焦るハッサクだが、もうこの瞳から逃れる術は無い。
真紅の瞳の魔王にハッサクの意思は奪われ、股間部分から炎が発生した。
このままいけばハッサクは炎に焼かれて死ぬだろう。
「熱いーーーーっ! ヒヤーーーーーッ!」
何故か動きは止まらず、燃えたグリーンのつなぎのズホン部分を破り捨てている。
完全に瞳力で人間の動きを止める、サタンアイが効かない事にサタンヒュドラは驚愕する。
「……君、人間じゃないの?」
「そうだ……俺は最強の――」
「インゲン」
「へ?」
魔王サタンヒュドラは燃えたズボンから見えたチンコを見て、インゲンとしみじみ呟いた。
まさか自分の股間がインゲンのような細くて弱い野菜に例えられた怒りで、現世での記憶が蘇る。
そのハッサクの耳に父親の声が聞こえた――。
心が勃起した者には、未来が掴める……という父の教えを思い出した。
そしてハッサクの身体の光が煌めき爆発した。
(……何だ、この溢れるパワーは……うおおおおおおおおおおっ!)
シュパアアアアアアッ! とハッサクにチートパワーが発生した。
グリーンのオーラが湧き上がり、このソードランドでも勇者しか得られないレベル・インフィニティになった。
「……ゆ、勇者なの?」
まさかの勇者の出現に、魔王も驚きを隠せない。
勇者がこの世界に現れるのは、実に千年ぶりであった。
新勇者・ハッサクは勇者なのに剣を持たずに言う。
「……俺は勇者としてチートになったようだ。魔王よ、お前は俺のヒロインになれ、サタンヒュドラ……略してサタラ!」
「サ、サタラ? 別に……いいのかな?」
巨乳を支えながら考えるサタラと呼ばれた魔王の背後から、一つの触手がハッサクに迫っていた。
「尻尾が伸びて動いている?」
何と、魔王の尻尾の蛇頭は意思を持っているように伸びて来た。
しかし、股間を突き出すハッサクは自慢気に言う。
「俺の亀頭も意思を持っている! ぐはぁ!」
無駄口を叩いていると蛇頭にチンコを噛まれた。
勇者の姿ではないこのへっぽこな姿では戦えないと感じるハッサクは頭の上に電球が浮かんだ。
「頭のパンツをはけばいいんだ! 俺は頭がいいぜ!」
「コラ!」
あっ! という顔をする魔王のパンツをはく手が止まる。
両乳を揉み、モジモジする魔王は足もクネクネさせ、
「別に……いいけど」
「センキューー!」
グッジョブ! と言わんばかりに指を差すハッサクは魔王のパンツをはいた。
興奮により、更にパワーが上がった。
そして、腰のナイフを持ち勇者のように攻める。
「ぜやっ!」
「そいやっ!」
必殺のナイフの突きが外れる。
「あれ? 俺はチートのはずなのに」
「残念、無念だね。君は剣の才能は無いようだよ」
魔王はナイフを破壊し、必殺魔法の炎系最強魔法・マグマドラグーンを放つ。
「これで終わりよ! 我が眷属・火炎竜! 魔王の名の下に、その身を捧げよ! マグマ……ドラグーーーン!」
ブフォオオオオ! と魔王が得意とする炎の竜が放たれた。
その魔法に為す術も無いハッサクは唖然としたまま直撃してしまう。
魔王の洞窟に大きな爆発が起き、周囲は煙で黒く染まる。
ハッサクは身体が焦げてはいるが倒れてすらいなかった。
「ガーン! 拳でしかチートになれない!?」
「剣は飾りなの? じゃあ股間のインゲンと同じだね」
笑顔で言うサタンヒュドラにガーン! とショックを受けた。
この少女はピュアブラックらしく、悪意無く悪意を吐く魔王であった。
「剣は飾り♪ 剣は飾り♪ インゲンも飾り♪」
「そうか……親父は武道家だったから拳でしかチートになれないのか」
その通り、武器を使わなければチートという恵まれているのか恵まれていないのかわからないチートだった。勇者なら剣にこだわりたいが、この美少女を手にする為にハッサクは動いた。
「行くぞ、チート拳法必殺の一撃だ!」
シュワァァ……と右の拳にグリーンのオーラが収束し、ハッサクの拳による必殺技が炸裂する。
「ガラガラッド・ガラガーン!」
「うきゃああああっ!」
そして、魔王サタンヒュドラを倒した。
二人の感覚は、シンクロして主従契約が結ばれる。
『ああああああっ……』
性的快感のような興奮の渦の中で、勇者と魔王の新たなる伝説が始まる事になる。
初めてのレディハントが魔王という快挙を為したハッサクは地上へ戻った。
ハッサクは帰還したソードランド全体で話題になり、大勢の人間から勇者と呼ばれ有頂天になる。
しかし、金目のクリスタルを持ち帰れなかった為にボロアパート生活は変わらない。
その事を馴染みの武具屋の金髪オッサンのアルトにからかわれ、ぐぬぬ……と思いつつ鋼の剣の修復を依頼する。
勇者となったハッサクはボロアパートで魔王サタラとの共同生活を始めていた。
「……」
未だにこの赤い髪の美少女が自分のハントした女という事に納得できなかった。
しかし、契約主としての威厳を示さねばならない。
「さっきも言ったが、サタンヒュドラは長いからサタラと呼ぶぜ」
「コラ! 別にいいけど♪」
否定しても肯定するサタンヒュドラはどうにも愛おしく思えた。
そこにハッサクは母親のような母性を感じていた。
かくして、千年ぶりの勇者となるハッサクのソードランドでの生活はここから波乱の幕開けとなったのである。