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外見と内面

 熱狂的にソードシスターズを応援する男達は突如、音響が消えた事でペンライトを振る手が止まる。

 そしてステージ上のソードシスターズも異変に気付きこの事態を引き起こした数人の人物を見た。

 先頭にグリーンのツナギを着たハッサクがおり、その左右にサタラとクロソーズがいる。

 そのクロソーズはソードシスターズを応援していた男達の性根を叩き直す為に一気に倒し、ネットに丸め込んで地上へ帰還する。


「全くしょうもない男達だ。俺がギルド騎士団の根本を正さねばならんようだ。行くぞアホ共!」


『へ、へい御頭!』


「御頭じゃない、俺は女だ。団長と言え」


 と、男でも女でも構わない事を言いつつクロソーズは正気に戻る男達と共に消えた。

 そして、無言のままのハッサクは現実世界にいた頃のような感覚に襲われるが勇者としてモンスターの三人の美少女と対峙した。


「……」


 まばゆいライトが照らされるステージには三人のアイドルがいる。

 姿形はただのアイドルであるがこの三人はこのアイドル街を支配し、地上の男達を洗脳して帰さない魔女モンスターでしかない存在だ。


 ソードシスターズ

 ホワイトを司るホワイ

 ブルーを司るブルース

 レッドを司るレット


 敵の臨戦体制を感じ、ハッサクは言う。


「すでにお前達の運営元のエンザは倒した。アイドルモンスター計画もここで終わりだぜ」


「魔王が勇者の部下なんて、哀れなものですね」


 そのホワイの答えにサタラは蛇頭の尻尾を動かし怒りをためた。

 そしてハッサクはまるで動じない三人のアイドルに再度言った。


「お前達の協力者がいなければ、アイドル活動なんかできないだろ? 降参しろ。俺は勇者だぞ?」


「協力者なんて地上にいる男の全てが協力者みたいなもの。変わりはいくらでもいるのよ」


 冷ややかにブルースは答える。

 そして音符の形をした魔力を右手に集めるレットは、


「そんなわけで、あんた達には消えてもらうにゃ! ミュージックボム」


 ズババババッ! と赤い音符が放たれ空間に音が反響した。

 音の塊を回避する二人は耳を抑えながら音波攻撃に耐える。

 マイクをビームソードにして斬りかかるホワイはサタラに一太刀浴びせるがガードされ、蹴りを入れてハッサクの方向へ飛んだ。


「――この音波は三半規管をマヒさせる効果があるのに、なかなか倒れないですわね二人共」


「勇者と魔王がそんな簡単にやられるかよ。うおおおっ!」


 マイクソードの乱撃に拳で応じる。

 火炎魔法で加勢しようとするサタラにブルースがマイクソードで邪魔をする。

 白兵に自信があるホワイは全ての斬撃に拳で対応するハッサクに違和感を感じた。


「勇者さん、これは手加減とでもいうのですか? 勇者が剣を使わないなんて有り得ないですわよ?」


「俺は拳の勇者なんでな……剣は専門じゃねーのさ」


「なら、勇者ではないですわね。言ってましたわよここに来た男達が」


「何をだ?」


 瞳を笑わせるホワイにハッサクは動揺を隠せない。

 地上世界ソードランドでは剣が強さの証であり、自分が魔王を討伐したとはいえまだまだ勇者とは認められていない。それを噂する男達の言葉が妄想としてハッサクに襲い掛かり、動きが鈍っていく。そして、とどめの一言が男達の総意としてホワイから放たれた――。


「今度の勇者は勇者じゃない――」


「……! 黙れーーーーーーーーーっ!」


 ブオオオオッ! とガラガラッドガラガーンでホワイを吹き飛ばす。

 しかし、完全には決まらず倒せていない。

 怒りと迷いでグリーンのオーラを動揺させるハッサクを見るサタラはブルースをフレイムソードで斬りながら叫んだ。


「ハッサくん! 後ろ!」


 バッ! と背後に現れたレットは両手に音符を生み出し――。


「これならどうにゃ? ミュージックツイスト」


「なっ――」


 突如、ハッサクの真下に音の渦が現れた。


「広がりなさい」


 そのブルースの冷たい吐息と共にレットのミュージックツイストの渦は広がり、ハッサクは全身を魔力によって支配される。それを見たサタラは微笑みながら言う。


「残念だったわね。ハッサくんには魔法は通じない。魔力の無駄使いごくろうさま」


「あら、それはどうかしら?」


 微笑むホワイは赤いカラーのレットの攻撃が完了したのを確認した。

 そしてブルースがミュージックツイストを増幅させた。

 その瞬間、マイクを最大音量にするホワイは叫ぶ。


「行きますわよ! ブルース、レット!」


『えぇ!』


 ソードシスターズ全員にそれぞれのカラーである白、青、赤のトリコロールカラーが発生しハッサクを取り囲む。


『ミュージックゾンビマン!』


 シュパー! という閃光と共にハッサクは音符に身体を支配された。

 瞳が音符マークになるハッサクはレットの言葉に反応した。


「貴方は仲間を攻撃するでし!」


「えっ?」


 ズババッ! とサタラはハッサクの攻撃を受けた。

 何故、ハッサクが仲間である自分を攻撃するのかとサタラは疑問に思った。

 肩にマイクソードを乗せるホワイは呟く。


「チートでも自分の本能に従った事なら無敵でも負けるわよ」


 ソードシスターズは合体技でハッサクのスケベ脳をエロスの幻影で洗脳し、チートパワーを無効化していた。

 こうなってはハッサクのチートはサタラにとって最大のピンチになる。

 幾度と無くハッサクの攻撃を受けるサタラは赤い制服のジャケットがボロボロになり、シャツも血にまみれていた。口の中にたまる血をツバと共に吐き、言う。


「……ソードシスターズ。外見はかわいいけど、内面は欲望まみれのドロドロね」


 サタラはこの三人の少女モンスターが地上世界もいずれは進出するだろうと直感した。

 そして、破れたシャツを脱ぎ捨て白いブラジャー姿の上半身の豊かなFカップの胸を揺らし、サタラは構え火炎魔法を使おうとした――刹那。


「そうか……外見と内面ね」


 突如、火炎魔法を使うのをやめたサタラはブルースの落としたマイクを拾う。

 そして、ステージの上に上がり踊り出すサタラは歌い出した。


「インゲン♪ ニンゲン♪ 同ーじ生き物さー♪」


『――!?』


 突如、歌うサタラ以外の人物が倒れた。

 その全員が頭を抱え、息も絶え絶えである。

 ソードシスターズは歌うサタラを見て、共通の認識をした。

 この女は超絶無双音痴だと――。

 そして、苦しむハッサクは自我を取り戻していた。


「さ、サタラの音痴で奴等の洗脳が解けたぜ」


 ウインクするサタラに親指を立てグッジョブ! とハッサクは答えた。

 そして、必死にサタラの音痴に耐えながら立ち上がるソードシスターズを見て思う。


(外見は勇者としのチートパワーがあっても、実際は勇者としての剣技は無い。なら俺は剣技を磨けばいいだけだ……そうだ、俺は――)


 ハッサクの周囲に展開するグリーンのオーラが安定し、叫んだ。


「――勇者だ!」


 ソードシスターズに特攻するハッサクは必殺の一撃を繰り出す。


「――ガラガラッド・ガラガーン!」


 ズバッ! とグリーンの光と共に技が決まり、ソードシスターズに勝利した。

 そして、ソードシスターズはハントされ地上世界に連れて帰る事になった。

 これにて、アイドルプロデューサー・エンザとアイドルモンスターの三人組みの野望は幕を閉じたが、地上でのアイドルが生まれる事になりソードシスターズは地上の悪さをしないアイドルとして活躍した。




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