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アイドルランド

 アイドルランド。

 裏迷宮東地区にあるきらびやかな街。

 その場所へたどり着いたハッサクとサタラは街の入口で茶髪の男にアイドルモンスターがいる場所へのワープカプセルをもらっていた。その男はアルトのギルドで何度か見かけた事があり、エンザというインテリ風のスーツ姿の男だった。


「君達は新勇者ハッサクに魔王サタンヒュドラじゃないか。どうしたんだいこんな所で?」


「このアイドルランドから戻らないハンター達を連れ戻しに来たんだ」


 やけに気さくに話しかけてきたエンザにハッサクは答えた。


「そうか……確かにここにハンターの男達はたくさん居るよ。けどそれは自分達で選んだ事だよ。彼等はソードシスターにはまってしまっているからね」


「奴等のハントしたレディ達も主人の帰りを待っている。一度くらい地上に帰ってからここに残るか、それとも地上に帰るかを判断させないとソードランドの混乱の元になる」


「実に勇者らしい……誠実な言葉だ」


 微笑むエンザはスーツのポケットから二つのカプセルを取り出す。

 そのカプセルはワープカプセルで、どこかの場所に転移できる代物であった。


「この街は案外広い。このカプセルで一気にソードシスターズのいる場所までワープして本人達に確認するといい」


「サンキュー。この借りはギルドで酒でもおごるって事でチャラな」


 するとエンザは微笑み、二人は目的地に向かいワープする。

 そのエンザの口元が歪んでいる事にサタラが気になった瞬間、ワープ先に着いた。


「……何だ? ここは?」


 唖然としながら目の前にそびえ立つ塔を見上げた。

 すると、サタラは周囲の何も無いさびれた岩場という事から一つの答えが出た。


「どうやらハメられたわね。あのエンザって男はもしかするとアイドルモンスターの関係者かもしれないわよ」


 二人がワープした先は、アイドルランドの最果ての空の塔と呼ばれる場所だった。

 エンザの罠にハメられた二人は空の塔を攻略し、アイドルランドに戻ろうと塔を上り出した。




 空の塔――。

 この塔はエンザの作り上げた塔であり、自身の野望であるアイドルモンスター計画を邪魔する者を抹殺するためだけに作られた塔である。すでにここで多くの男達が犠牲になっており、アイドルモンスターの危険性が地上世界に遅れて情報が上がってきたのもこのせいだった。空の塔の内部は毎日のように変化するらしく、誰も塔の真相を知る者はいない。

 赤い髪をポニーテールにするサタラ白い壁を見ながら言う。


「おそらくエンザは空間を操るのかもしれない。じゃないと僻地であるここに転移させるカプセルを作成するのは難しい話だからね」


「そうか……空間を操れる以上、離れ離れになる可能性は高い。目的はこの塔の脱出だけだ。最悪の場合は、お互いエンザのいる場所で合流だぜ」


「了解。何か相手が空間を操るなんて気持ちがドキドキするわね……」


「これがドッキリだといいんだけどなー。あのインテリ野郎じゃそんな事はしないだろうな」


 言いつつ、ググッ……とハッサクは空の塔の扉を開けた。


『……!』


 中に入ると、1から13までの扉がある。

 それ以外は何も無く、どれかの扉に入らなければいけないようだ。


「うっしゃ! 1で行くぜ!」


 ハッサクは直感で1の扉を選んだ。

 ノブにかけてあるカギを手にしたが、鍵穴は無かった。

 ゆっくりノブを回すと、暗い異次元空間のような世界が広がっていた。

 サタラが他の扉を開けるが、全て同じだった。

 1の扉のみにかけられていた鍵をポケットにしまうハッサクは、


「とりあえず、1の扉に入るぜ。二人同時に行くぞ。せーのっ!」


 ガチャと扉を開け、二人同時に扉の中に入った。

 すると、今度は1から12までの扉がある。

 振り返ると、今入ってきた扉は消えていた。


「あのインテリ野郎……。これはもうエンザを倒さない限り、脱出は不可能だな」


「まぁいいじゃない。アイドルモンスターを倒すにはエンザを倒す必要もあるだろうし、倒さない限り、外に出るつもりなんて無いから丁度いいわ」


 不安を見せるハッサクにサタラは堂々と言った。


「そーだな。こういうまどろっこしいの嫌いなんだけど、このイライラもエンザやソードシスターズを倒すエネルギーに変えてやる」


 そしてまた、ハッサクはサタラと共に1の扉の中に入った。

 中に入りすぐに振り返ると、スウッ……と入って来た扉は消えた。

 表情を変える事なくハッサクは顔を戻すと、今度は1から11までの扉があった。

 赤いポニーテールを揺らすサタラは空間に異変が無い事を確かめつつ、


「あと11回くぐれば、何かあるのかしらね?」


「どうだろうな。エンザの力はまだ謎に包まれているからな」


 サタラの問いにハッサクが答えていると――。

 ガタガタガタガタッ! と突如、激しい揺れが起こった。


「何だ!? エンザのお出ましか?」


 身をかがめ揺れが収まるのを待つ二人に、更なる衝撃が走った。

 股間を抑えるハッサクは巨乳を抑えるサタラに見とれていると、ガシャン!ガシャン!ガシャン! と突然、床がマス目ごとに上下左右に移動し始めた。


「ガーン! マス目が移動してやがる!」


 驚くハッサクはサタラのいるマス目が移動するのを見た。


「サタラ!」


「手を出さなで! 腕を持っていかれるわ!」


 下の方に下がっていくサタラに手を伸ばしたハッサクだったが、天井から移動してくる部屋の一部に腕を持っていかれそうになり、差し伸べた手を戻した。


「エリザのいる場所で合流だ……サタラ」


 最後にサタラの叫びが聞こえ、ハッサクのマス目もどこかに向けて移動し始めた。


「面白い塔だな。サタラじゃねーがゾクゾクしてきたぜ」

 移動するマス目に座ったハッサクは拳を叩き呟いた。





 空の塔内部のどこかの部屋。

 白いベッドの上で、計算機をいじっているスーツ姿の茶髪の男がいる。


「さて、ここからが本番ですが、どうなるのでしょうね。そうなるでしょう? こうなるでしょう?」


 エンザは一人で自問自答をしつつ、微笑んでいた。

 様々な空間を映し出す計算機のモニター部分の一角に、ハッサクの姿はあった。

 れろぉっ……とハッサクの映るモニターの一角を、唾液たっぷりの舌で舐め、スウーッと匂いを嗅いだ。自分の唾液で歪んで映るハッサクにフフッと笑い、


「どうなるでしょう……?」


 と今日の売り上げの金額を思い浮かべながら、エンザは計算機の中のハッサクを見つめた。


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