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序幕~異世界転生~

「ガーン! もう財布に百円しかねーよ!」


 財布の中身に絶望し、鬼瓦中学をサボる春先咲太郎はるさきさくたろう事、ハッサクは人生にも絶望していた。基本的には前向きで明るい方だが、今回ばかりはどうにもならなかった。

 一月前、父親の春先建築会社が銀行の融資を得られず倒産し、父親が自殺をしてしまったのである。そして、母も病に倒れ帰らぬ人になった――。


 現在、ハッサクは親戚の家をたらい回しにされてそのストレスでキレた挙句、養護施設に行く事になってしまいそこで暮らしていた。しかし、そんな生活も一週間もすればウンザリし町を学校をサボり町をプラプラするのが日課になっていた。

 しかし、もう小遣いをくれる人間もいない為、プラプラも出来ず昼時なのにハンバーガーショップにも入れず人気の無い工事現場に辿り着いていた。どうやら工事現場の土の感じが落ち着く場所という事にハッサクは苦笑した。


「ん?」


 すると、工事現場のプレハブ小屋から赤いスーツを着た黒髪の巨乳の女が現れた。自身に満ち、人生の表舞台を歩いて来たであろうその女をハッサクの全神経が知っていた、吠えていた。


「あの野郎……」

 それは鬼瓦銀行の融資担当の女だった。

 この女が春先建設の融資を蹴ったのが全ての始まりだった。

 無言のまま工事現場の鉄パイプを持ち近づく。


「……」


 女は紅い車のキーで鍵を開け、ドアに手をかける。

 ゆっくりと背後に立つハッサクの瞳に色は無い。


(コイツが……コイツが俺の家族を親父の会社を、俺の人生を……!)


 焔の殺意がハッサクの心を侵食し鉄パイプを振り上げた――。


〈人の道は歯車。どんな人間だろと歯車の一つでしかない。それを忘れた奴は、時代から欠けるのさ〉


 その父親の言葉が、ハッサクの耳をよぎり、鉄パイプを持つ力は更に込められ振り下ろされる。

 バンッ! と言う音と共に女は紅いベンツに乗り込み、颯爽と工事現場を去った。


「……一寝入りするか。何か疲れたわ」


 力のこもっていた鉄パイプは、地面の土を抉っている。

 あの女も所詮は銀行の歯車か……と思うハッサクは父親の復讐をこの女になすりつけても仕方ないと思い怒りを地面に逃がした。

 そのままハッサクは一つの土管の中に入り眠りについた。

 暫くすると昼休みが終わった工事現場の作業員が出てくる。


「……」


 眠るハッサクはそれに気づかない。

 そして、一台のロードローラーが土管にぶつかり土管は転倒した。

 ゴロリ……と転がるハッサクはそのままロードローラーに引き潰された――瞬間、


「――!? 何だこの光は――」


 ハッサクは大いなる雲に呑み込まれ、上空を地面に向けて落下していた。

 雲間を抜けると、中世のヨーロッパのような建築物の一大都市が見えた。

 遠くの地平線にはこの世界の守り神のような巨大な剣がそびえたっていた。

 各所から上がる煙が人の存在を伺わせる。

 その人口一千万人ほどの都市を認識すると、ハッサクは意識を失った――。


 この大陸の名はソードランド。

 男しかいない剣が正義の象徴である地上世界で、地下に女を求める〈レディハンター〉が躍動する異世界へとハッサクは転生したのである。






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