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ネトゲ廃人、パソコンを買いに行く。

カチッカチッカチッカチッ


「うわ、固まった。ヤバイヤバイヤバイヤバイ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…」


カーテンをしめきり、電気もついてないくらい部屋の中、パソコンの前で「ヤバイ」「死ぬ」を連呼する不気味な女。その容姿はひどいものだった。目の下にクマ、色白の肌、ボサボサの髪…。その女とは、私、中村繭子(なかむらまゆこ)である。



ふと、階段を登ってくる足音がした。きっと母親だろう。

「繭子ー。夕飯持ってきたわよ。」

扉の向こうで声がする。

「あとで食べる。おいといて。」

私はそっけなく返すと、パソコンに向きなおった。

「どーしよ。完全に壊れてるわー」

私は無駄だとわかっていながらマウスを手に握り必死にクリックする。もちろん、返答はない。


ブブッ


ふとケータイが震えた。メールだ。ケータイを手に取り、確認する。

「あ、またかよ…。」

私はうんざりした。このパソコンを買った店、田中電気から新しいパソコンが入荷したというお知らせが届いたのだ。

「もういいっつうn…。」

そこまで言って私ははっとした。この新商品、買えばよくね?

「これ、通販どっかやってるかな…。」

ケータイからウェブを開くと、すぐに検索をかけた。

「あ、あったあった。えーっと、配達は明後日からとなりまs………っはぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

思わず叫んでしまった。なぜだ。なぜ配達は明後日からとなっているんだ⁉

「あ。」

その理由はすぐに分かった。今日は12月31日。このサイト、マアゾンというのだが、このマアゾンはお盆、年末年始は配達をお休みするのだ。

「もうマアゾンでは買い物しないからなっ!」

私は涙目でケータイを指差した。



「しょうがない。買いに行くか。」

私は呟いて立ち上がり、タンスに手を掛けた。人前にでても恥ずかしくない服装を選ぶ。

黒のセーター、赤いチェックのミニスカート、モコモコのタイツ。それに、あったかいポンチョ。さっさと着替えをすませ、次にくしを手に取る。ゴワゴワの髪の毛を、痛くないようにゆっくりとかしていく…。

数分後

準備が整った私は、部屋から出た。久しぶりに部屋を出るな…。(トイレやお風呂以外)廊下にはまだ湯気がたっている母渾身のご飯が置かれていた。

「とりま部屋に入れとくか…。」

呟いておぼんを持ち上げる。味噌汁がこぼれないように気をつけないと…。

「よし、行こう。」

私は玄関に向かって歩き出した。が、数メートル進んだところで座り込む。

「はぁっ。エミクロやりたいぃぃい…」

壁にすがるようにもたれ、涙目で嘆く。

家から出るには、相当な時間が必要そうだ。




数分後、やっと階段を下りきった私はついに玄関に着いていた。しかし、階段を下る間もケータイのゲーム、パズドラをやっていた。それくらい、私の身体はネット、ゲームに張り付いていないとダメになってしまっている。

「あぁ。行きたくない~。」

玄関まできて拒否反応が強まってきた。重たい腕をドアにかける。ギィッという音がし、私はついに外に出た。



「寒っ!」

冷たい風が頬にあたる。私は現在、夜空の下パソコンを求めて田中電気へ向かい中。ひたすら寒いを繰り返しながら歩くその姿は、はたから見れば引きこもりの人が久々に外に出たように見えるだろう。(いや、実際にそうなのだが。)




「着いた…。」

私は久々に見る田中電気の店を見上げた。この店は3階建てで、この辺りでは一番大きい電化製品店だ。私は自動ドアを抜け、あったかい店内に入った。

「あったかー」

店に入って最初に発した言葉がこれだ。それくらい、店の中はあったかかった。

「パソコン用品は…。あっちか。」

案内板を見て、場所を確認する。


ドンッ


人にぶつかってしまった。

「す、すみませ…」

謝ろうとして相手の顔を見た。

「…神谷…?」

「え、まさか中村?」

ぶつかった相手は、なんと高校の頃の友達、神谷雄介(かみやゆうすけ)だったのだ。

「久しぶりじゃん!お前今なにしてんの?」

私は、ビクッと肩を震わせた。大学も行ってない。仕事もしてない。ただの引きこもりニートネトゲ廃人くず野郎だなんて言えない。

私が答えに困っていると、神谷は

「まさかお前、ニート?」

と聞いてきた。

「ち、違うよ!ちゃんと仕事してるよ!」

「へぇ、なんの仕事?」

「ほ、本屋の店員!」

「へぇ、バイトか。今度いってもいい?」

「…すみません嘘です。ニートです。引きこもりです。ネトゲ廃人です。」

私は今更反論したことを後悔した。神谷は「やっぱりなー」と笑った。

「やっぱりって何よ。」

むかっときて思わず言ってしまった。

「ネトゲ廃人で何が悪いの⁉別に問題ないじゃん!ただ、ただちょっとみんなと違うだけでっ!」

そこまで言って、神谷の表情をうかがおうと顔をあげると神谷は笑っていた。

「お前、言いたいことちゃんと言えるんじゃん。」

その言葉は、素直に嬉しかった。




神谷と別れてパソコン用品売り場に着いた。ここは、ネトゲ廃人の私にとって天国に近い場所だった。

「あ、これだな?」

本日発売!と大きく書かれた張り紙のすぐ下に、パソコンが置かれていた。持ち帰りカードとかかれた札を取り、すぐさまレジへ。

店員は笑顔で対応してくれた。なんて素敵な笑顔なんだ。

お金を払い、大きなダンボールをかかえ店を出ようとしたところを神谷に見つかり、家まで持ってやると言われた。私は素直に従い、すみやかにダンボールを渡した。


「神谷バイバーイ。」

家の外で神谷には帰ってもらった。上がって行ったら母親がうるさいからだ。

二階までなんとか運ぶと、壊れたパソコンをどかし、新しいパソコンをおいた。コードの確認をして、コンセントをさす。そのあといろいろ設定をいじる。私はしばらくだまって画面を見つめていた。




「うふふ。エミクロちゃーん」

私はパソコンに抱きついた。やっとエミクロができる‼それだけじゃない、新たにダウンロードしたゲーム、戦国姫もなかなか面白い。さすがは廃人。その日は徹夜でゲームをしていた。




次の日、朝っぱらからゲームをする私はいち早く気づいた。新着メールが届いている。私はすぐに怪しいと思った。だって、まだ誰にもアドレスを教えてないから。怖くなったが、好奇心だけは強い。思わずクリックをし、内容を確認した。内容はこうだ。


繭子様


お久しぶりです。私が誰だかわかりますか?わかりませんよね。お教えしましょう。私は去年のエミクロバトルロワイアルであなたとタッグを組んだ、がぁーです。


さて、なぜあなたのアドレスを知っているかはさておき、本題に入りましょう。

オフ会しませんか?

もしよければ返事ください。返事は3日以内でお願いします。それでは、いい返事を待っています。

がぁー


がぁーは、たしかに去年タッグを組んだ。しかし、それ以来交流はらなかった。なぜ今になってオフ会など…。

気になることが山積みだが、私はすぐに返事をした。

オフ会、ぜひ行かせてください、と。

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