1
六月はじめの第一回パート別集合は現地集合だ。全校生徒による大移動となった火曜六限LHRの時間に、ぼくたち四人は第三グランドの最奥部へと向かった。
外は紫外線が多そうだ。制服の衣替えが終わった半袖に雨上がりの日差しはきつい。梅雨だからといって毎日、朝から晩まで雨が降っているわけではない。その晴れ間を探してグラウンドが乾いた頃に集合がかかるのである。
聖トマス学園のグラウンドは大きく三つあるのだが、この第三グラウンドは第一、第二と比べると半分以下の大きさだ。それでもサッカーコートなら無理すれば二面はとれる。そのおかげでこの三つのグランドは、市や県の中学・高校総体で毎年サッカーの試合会場となっている。たかだか千四百人ほどの生徒数なのに、これほどまでの敷地面積を誇る学校も珍しいだろう。もっとも土地は格安で手に入ったらしい。聖トマス学園はなだらかな丘陵地帯に位置し、四国とはいえ、万葉集に歌われるほどの歴史ある街である。こんな郊外でも、建設のための造成で少なくともふたつの古墳が消滅したが、地元の人には首切り場と称して忌み嫌われた場所で、平安~江戸時代を通して有名な処刑場(=埋葬も兼ねる)だったらしく、たくさんの人骨が発掘された。
校舎側の第一グラウンドと寮に近い第二グラウンドは学校主催の企画ですべて埋まってしまうが、第三グラウンドはかなりの部分を模擬店に奪われながらも、その残りは大きく八つに分けられ、有志一同の企画の場として開放されているのだ。ということで、ぼくたちのサイト7、そして8は最果ての地の利が悪い行き止まりにある。背後には標高百三十三メートルの朝日ヶ丘が迫り、緑色のフェンスを越えると市の総合公園の区域になる。
『体育祭・文化祭の準備について』というしおりによると、うたごえ喫茶『High―C』はサイト7―4になっている。目印は文化祭実行委員会が地面に引いた白いラインだけで、ナンバリングなんてどこにもないから、「おそらくここが7―1、2で『パソコントラブル探偵団』だから」とサイト順に見当をつけるしかない。そうやってたどり着いた7―4とおぼしき場所で、ぼくたちは周囲を見渡した。一分も待たずして両隣に、ライブハウス『パンク修理はできません』とダンス教室『ぼくはちっとも踊れない』が陣取る。アップルが念のために「ええっと、そちらは7―3で、そちらは7―5ですよね」と声をかけた。場所はここで間違っていなかった。