朝、玄関先での妻との会話
出勤前玄関先で、
「おばあちゃんに見つからぬようにしろよ。犬を小屋に置くのはだめだぞ!
おばあちゃん小屋によく行くからなー」」命令調で言えば、
「そんな事解ってる。子供の部屋に置くつもり。犬が泣けば私にも聞こえるし」と答える。
「犬の泣き声がおばあちゃんに聞こえたらどうするんだよ」と聞くと、
「大丈夫、野良猫が外で泣いたと答えるから」と言う。
確かに、我が家の周りに野良犬はいないが、野良猫はいる。
その野良猫、時々玄関の戸を開けて我が家に入ってくることもあるのだが、
「犬と猫では泣き声が違うだろ」と言うと、
「大丈夫、おばあちゃんにとって、犬と猫の鳴き声の区別つかないって。
私に任せておきなさい。」と自信満々である。
結婚生活二十数年も経つと、結婚当初の面影は、忘却のかなた。
妻は、思慮なく大胆であり、そして思慮なく嘘がつける女に変身していた。
こんな事があった。
結婚十数年たったある日、私は彼女の体型に異変を感じた。
そこで
「最近、太ってきてないか?結婚した時の約束、 絶対太らないという約束 覚えているだろうな!」
と聞くと、
「全然太ってないよ!ただ、お肉の付く場所が、年取ってきたから、変わってきただけよ。
だからそう見えるのよ。 ヘルスメーターの指示は全然変化なし。
でもちょっとトレーニングしたほうがいいかな。
通販で安いトレーニング機器があるんだけど買っても いい?」
としおらしく聞く。
太られるより良いと思い、購入を認めるが、
妻がトレーニングしているのを見たのは、2,3度。
その機器は我が家にもうない。廃品回収行きである。
妻にその事を問い詰めると、
笑いながら答える。
「やる気はあるんだけど、他の人と比べて私の心臓が小さいらしいの。
昔診てもらったお医者さんが言ってた。だから身体に悪いと思って止めたの」と
大いなる嘘である。
最初から、あまりやる気はなかった。
そして、笑いながらこの様な嘘をつける妻の心臓が小さいはずがない。
そんな妻が、私をせかす。
「さあ、さあ、早くしないと会社遅れるよ!携帯持った?お金持った?」と言いながら。
まるで、私は、妻の子供である。
しかし、私は、亭主である。叶わぬ亭主関白を目指す亭主である。
威厳を保たねばならぬ!
「犬を飼う事認めたわけでないからなー。おばあちゃんに見つからぬようにうまくやれよ!
それから、犬のオシッコとウンチには気おつけろ!大変なことになるからな!」
と妻に指示するが、
「解ってる、解ってる!それより服のボタン外れてるよ」と軽くいなされ、家をでる。