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皆既月食を見よう 哲1

「ねぇ、先輩、金曜日先輩の家に泊めて貰えないかな?」

「部屋は空いているからいいけど、どうしたの?」

「皆既月食があるんだ。夜なんだけども…テスト明けの金曜日に」

「分かった。親に聞いてみるね。ところで、テストの方はどうなの?」

片思いの彼女に話を強制的に戻される。今は期末テストで今日は火曜日。

「今までよりはいいですよ。英語だけはね。先輩のお陰ですよ」

俺は耳元でわざと囁いてみる。実は彼女が耳元が弱いことを最近知ったんだ。

女子にしては背が高い方の彼女でも190センチに近い俺と一緒だと

どうしてもちびっ子と大男になってしまう。

「…人をおもちゃにしないで欲しいなぁ」

上目遣いで俺を睨んでる。その仕草は申し訳ないけど、俺を試しているのかと

思わずにはいられない。彼女だったらなあ、あんなことやこんなことを…

「こら、変な妄想しない。全くもう」

「妄想じゃありませんよ。空想ですから。空想の中の先輩はもう少しだけ

おしとやかなんですけどね」

「うっ」

先輩は口をパクパクしている。だからそんなことしていたらチュッとしたくなる

じゃないか。ワザと狙っているのではなくて、天然でこんな対応だから

こっちはヒヤヒヤしっ放しだ。正直心臓が1個じゃ足りない。


「おしとやかなつもりですが?」

先輩がようやく反撃をする。

「おしとやかなのは…その長い髪だけでしょう?普段はその髪の毛を振り乱して

廊下をかけずり回っているでしょうが。そろそろ淑女を目指した方がよろしいんでは?」

普段の彼女はお転婆娘をそのまま大きくした状態。

こないだも学校のケヤキの木に登ろうとして怒られていたっけ。

「スカートで木登りしようという人は今時いませんよ」

「…ここにいるもん。制服のリボンが飛んでいったから…」

心なしか胸を張っているような気がするんだけども…なんか間違っている。

「胸を張っても、大きくなったようには見えませんよ」

彼女の顔がみるみると赤くなる。しまった…言いすぎた…これは…ヤバイ

「このセクハラ男。こんなんでどうして皆かっこいいって言うのよ」

「そりゃあ、顔でしょう?親には感謝してますよ」

さも当然といった表情で俺は言ってのけてみた。彼女の顔が更に赤くなる。

俺のことをかっこいいという、女の子が良く分からない。見た目はいいけどさ

自分で言うのもなんだけども、俺の性格相当ひねくれてると思うだが。

「もう、本当にむかつく」

そういうと彼女はおれの胸をポカポカと叩きはじめた。

必死になっているモグラたたきをやる女の子にしか見えなくて

思わず笑みが浮かんでしまう。

「もう、いい。先に帰る」

そういうと彼女は先に帰ってしまった。俺は一人取り残された。

「ちぇっ、こんなに好きなのに。いじりたくて仕方ないのに」

俺はそう悪態を付くしかなかった。


校内にいる時は、彼女の事を先輩と呼んでいる…誰よりも大事な幼馴染。

彼女との差はたった3日なのに、学年の線引きがされて彼女の方が年上だ。

二人きりな時や、気心の知れた相手がいる時は互いに名前で呼ぶ。

文化祭があってから…彼女の距離が縮まったことで彼女の事を意識して

しまって、今では少しぎくしゃくしている。

俺としては、彼女の気持ち…俺が好きなことは分かっている。

けれどもそれが、幼馴染の一人としてなのか、男としてなのかは分からない。

文化祭をきっかけにと目論んでいたのに、彼女…真美の方から-イベント

カップルにはなりたくない-と言われてしまって、中途半端な状態。


本当は、皆の前でもいいから彼女に好きだと宣言して自分のものにしたい。

一番欲しくて、一番手に入らないものだから。

なにせ、学校の妖精なんて言われているらしいし。これは1年生の時の

文化祭の家庭科部のショーでティンカーベルの衣装を着たのが凄く

可愛かったからだそうだ。そりゃそうだ。本人が極上なんだから。



今年の文化祭でも男の庇護欲をそそる衣装を着ていたし。

隣で見ていた俺は本当に心臓が止まるかと思ったのも知らないんだよな。

女子にしては高い身長の彼女。スラリとした体形で女というよりは

少女を印象付ける。

けれども、昔を知っている俺は彼女がどんどん大人の女性に近付くのを

意識させられていた。時折見せる女な表情にドキリとする。

もっと顔を見たくなる。髪に触れたくなる。細い体を腕の中に埋めて

みたくなる。好きな相手だからそんな妄想はドンドンと膨らんでいく。


だから…俺は決めた。今度の月食の時に彼女に告白する。

そうでないと…俺の心が壊れて彼女を壊してしまいそうだから。

もう…理性だけではとめることのできないこの想いを解放しよう。

例えそれが、彼女に拒絶される結果になったとしても。

友達以上恋人未満で告白をしていない二人です。

(前作の短編の続編ではないです)


かたやお転婆+天邪鬼、かたやイケメンだけども腹黒+毒舌。


互いに一緒にいたくているのに意識して空回りしてしまう。


そんな二人の恋愛模様です。


3/26 番外編終了の為一部加筆しました

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