成仏×植物三人衆
しばらく呆然としていた私も、はっと気を取り直し、老大木に向かい静かに手を合わせた。日本式で申し訳ないとは思ってもそれ以外は知らないので、まぁ許してくれるだろうと甘い気持ちで。
「……世の中そんなに甘かないわ。なにあれ?」
手を合わせた途端、その大老木が長年生えて居られたであろう緑がうっそうと茂るその場所から……何か、そう言い表すなら小さい足の生えた丸っこい何かの植物が現れて?
「ぽっ」
ぽっ?ぽっ、てなに?思わず、その丸っこい生き物と一緒に首をかしげて……ん?
「ぽっ……ぽっぽっぽぽぽぽっぽ」
何かを話しているんだろうことは見ればわかる。だけど如何せん、その話している言語?が分からない!!
「あの、もしかして……そこにご臨終なさっている老大木とお知り合いだったりする?」
頭が黄緑で身体は茶色。これはもう植物以外の何物でもないし、出てきたところが……ねぇ?
「ぽっぽぉ!!ぽっぽっぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」
「あっ、待って待って!!君の言ってること全然分からないから!!」
きっと正解なのだろうけど、この丸々した植物の言語が全然理解できない。……どうしたものか?
「それでええと、とりあえず、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど、あの木倒しちゃって……」
「お前馬鹿じゃねぇの?あの木の爺さんはもう寿命だったんだよ!!まぁ、住処はなくしたから責任は取ってもらうけどな!!」
ふんっ!!と荒い鼻息と共に聞えた罵り……。え?誰?
「……何時までその阿呆みたいな顔晒してるつもりだよ?!さっさとその美味そうな土を寄越せ!!」
「……」
今の、この、まるい植物が……?何で?今まで可愛くぽぽぽって言ってたのに!何がどうしてそうなったの?!しかもなんでそんなに偉そうなの?!ちびのくせに!まるいくせに!確かに住処は奪ったけど、寿命だったにしては俺様が過ぎるでしょ!?
「なに黙ってんだよ!!」
「アン君、精霊様にそんな言い方、駄目だと思うんだね」
「……うん。アンはダメ」
へっ?!目の錯覚?!もう二人出てきたぁ!!
「うるせっ!!ドゥもトロワも腹減ったんだろ?!」
「でもそれは、精霊様のせいじゃないんだね。もともと爺ちゃんがもう土に返るからって食べものなかったんだね」
「うん……爺ちゃんいない」
全員が黄緑と茶色とまるいと言うキーワードを元に作られたようなそっくりさんで見分けがつかない。何より三人とも私を無視して話し続けるからなんだか居心地も悪い。……あれ?ここ私の場所だよね?
「でもっ!!前の精霊様のせいで沢山仲間が死んだのは誰が責任取るんだよ?!俺達もこのままじゃ餓死だぞっ!!」
「それは、前の精霊様のせいだね。今の精霊様は違うもんね。今の精霊様が生まれてから、この土地も元気になって来たもんね」
「うん、トロワ元気」
うん、何お話かな?前任者の問題はノータッチでお願いします!!
「ね、ねぇ?とりあえず、お腹空いてるならこの土?食べても良いから、喧嘩は止めようね?」
そう言って差し出したのは、地下から運んできたミネラル豊富な一掬いほどの土。先ほどから寄越せとアン?とか言う子に求められていたのはこの土だ。美味しいのかは謎だけど、まぁ地下に行けばいくらでもあるわけだから欲しいなら差し上げましょういくらでも!!こんなもので喧嘩を止めていただけるのなら!!
一応今回の補足として。
主人公
元地球産の人間(女)現在はまぁ、温泉の精霊と言う役割を押し付けられ、半ばやけくそでスローライフの新境地を開拓中。
アン・ドゥ・トロワ
大老木に住んで居た植物の妖精。前の精霊の事件でかなり深刻な被害を被っていたらしい三つ子。
ちなみに王国組・その他は、また次の機会にでも書き込ませていただきたいと思います。
感想お待ちしております!!