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お婆ちゃんの知恵袋×掌の使い方


 さて、すいすいーっと流されまくり、私は地上へと戻って参りました。


 「うーん」


 手には泥、目の間に広がるのは平地と深い森。


 「何から手を付けるべきか……」


 まずはその辺に持っていた泥を置き、自分の身体から出ている湯気を手で払いながら、一応腕を組んで考えてみる。


 「あっ、婆ちゃんの三か条!あれだわ!!」


 婆ちゃんの三か条とは、私のお婆ちゃん曰く、いつ何時なんどき予測の出来ない事件や大災害に見舞われるか分からない以上、どういった状況でも生き残れるようにと考え抜いたサバイバル術らしい。張り切った婆ちゃんは親族の集まりの折には何時も全員を広い和室に集め、婆ちゃん直伝のサバイバル技術を半ば無理やり教えて下さる。と言う有難いようでとてつもなくはた迷惑な伝授で有らせられるわけだ。


 「大体教える内容に難ありすぎなのよ。親戚全員ってことは赤ん坊から腰の曲がったおじいさんまでいるってのに手加減は一切なしの恒例行事だし、皆もう諦めてるもんなぁ。去年はトシ叔父さん腰を強打して病院に運ばれたし、今年はケイ君が骨折して高熱出しちゃって入院しちゃうし、毎年毎年犠牲者出し過ぎ!病院にも顔覚えられてるし、もう恥ずかしい……ってそうじゃなくて」


 ……半ば体力勝負な感じのある実家への里帰りに、私達はいつもいつも戦々恐々しつつ、行かないわけには行かないのだともう刷り込まれているので、実家からの電話が鳴れば仕事中だろうと、恋人といちゃついてようと、マサ君のように待ちに待った修学旅行の出発日だろうと問答無用で脳内は対お婆ちゃん仕様に切り替わるのだ。


 「まぁ我が家に生まれた以上は悲しいけど逃げることは出来ない定めよね」


 まぁ、今回はそんな何に役立つのかはなはだ疑問だったそのサバイバル術もやっと日の目を浴びるわけで……と言っても畑づくりの部分だけ抜粋して、だけど。


 まず


 「なんだったかなぁ、なんか無駄に婆ちゃん迫力あり過ぎて緊張してたから座学あんまり覚えてえない……。あっ、そうだ!畑や花壇を作るときに注意するべきことは、植物も生きモノであるからして、彼らの布団である土はふかふかにするべし!!みたいな」


 なんかニュアンスは違うかもだけど、まぁ意味は通じるでしょ?


 「って言っても、ふかふか……ねぇ?」


 とりあえず地下源泉の泥を運んで、あと森に落ちてる枯れ葉とか集めればいいのか?あとは、土も熱湯消毒したほうが良いとか聞いたような聞かないような……まぁ熱湯ならここには溢れるほどあるから何時でもできるけど。


 「道具はどうしようかな?婆ちゃんに配布されて何時も持ち歩いてた小型の多機能サバイバルナイフはここにはないし。ん?そういえば水ってなんかこう、鋭くさせたら鉄も切れるって聞いたことあるけど……私にも出来るかな?」


 組んでいた腕を解いて、湯気の立つ自分の手のひらを目の前に持ってきてじっと見つめてみる。


 「……はぁ、いくらなんでもそれはないっ」


 諦めかけたその時。じっと見つめていた手のひらは、ため息を吐いた途端勝手にぴゅーっと伸びて森に生えていた大木を貫いた……。

 次の瞬間、ずどぉん……と音を立てて、私の想像を超えるであろう長い月日を生きてきたはずのその幹は折れ曲がり、そしてその命を終えたわけで。


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 そんなつもりは全く持ってなかったし、見た感じ貫録の有りそうな立派な大木なので、きっとここを住処にしていた動物とかいたんじゃなかろうか?なによりその大老木自身に意志があったとして、呪われたらどうしよう……。


 これで道具を作るめどはたったけれど、居た堪れないこの空気に、私は泣きそうです。






 


 


 


 

 



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