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漁村その①

 さいど ガドガン・ドドッチ


 ルーイリアの話を聞きながら進むこと四キト半、緩やかな坂道を越えると、道の端に見える木々の間に古めかしいが小さな門が見えてきた。


 「あぁ、やっと着いたか……」


 「あれが今夜の宿になる村?門構えに何となくおもむきを感じるねぇ」


 「しかし、時間がかかり過ぎなのでは?ガドガン!日程は貴方にお任せしていたはずでは……?」


 俺は背後から念仏のように聞こえてくる小言や、国王のどこか気の抜ける問いかけをことごとく無視し続け、やっと見えてきた村の入り口に目をやり、歩き続け疲れただろう龍馬りゅばの垂れた耳を撫でてやった。












 「おい!ルーイリア、通行証はどこにやった?」


 小さくても人の住む集落には必ず門番が存在し、彼らはその全てが王国の軍隊に所属しており、つまりは全員俺の部下ってことだ。まぁ、だからと言って全員が俺の顔を知っているわけもねぇから顔パスにはならねぇが。


 「通行証ですか?それなら……」


 それにこの旅は一応極秘扱いだからなぁ……呼び方も陛下だの宰相だの言ってられんのも人のいない田舎街道だけで、こうして村や町に辿り着けば名前呼びは当たり前。普段は畏れ多いだのなんだのとピーピーうるせぇ宰相様も、こうして大人しくなるし、まったくもって極秘さま様だぜ!


 「来る途中は誰ともすれ違わなかったのに、門の前に並んでいる人は随分と多いのだねぇ?」


 自分の生まれ故郷と王城しか知らない我らが国王は、ぽうっと人の列を眺めそう呟いた。


 「あ?あぁ、あっちに分かれ道があんだろ?あっちは海沿いでな、朝早く漁に出て、取れたての魚をたっぷりかめに溜めたら村に戻んだよ。だから、並んでんのは大体この村の奴だろ」


 微かに磯の香りが風に乗り、ルーイリアの長いミルク色の髪を揺らした。


 「へぇ、ならこの村では新鮮な魚が有名なのかい?」


 ぽやぽや王様が瞳を輝かせて問いかける。


 実は、小さな小さな王国の城は内陸部に位置するため、なかなか新鮮な魚介類は手に入りにくい。自然口に入るものは限られてくるのもあり、こうして泊まる村々でその土地の美味いものを食べれるのも旅の醍醐味と俺たちは楽しんでいた。


 「へぇへぇ、村に入ったら新鮮な魚料理を腹いっぱい食わしてやんよ……ルーイリアが」


 あぁ、思い出すだけで涙がでてくるぜ……。俺たちが王都を出てずいぶん経過しているが、経路や日程は俺に丸投げしといて経費は全部宰相様の管理下にあるこの旅は……俺には厳しく、王様には胸焼けするほど甘い。

 確かに元々は、この旅費も国民の血と汗と涙の税金から捻出されてはいるが……この国の抱える大きな問題を解決すると言う重大な役目を担っているため、予算はたっぷり出ているはずだ。

 だと言うのに!宰相様は財布のひもを固く硬く縛り、必要のない時には自分の懐深くしまっているため俺にその恩恵がもたらされることは一度としてない。


 「えぇ、えぇ、ディルが食べたいと仰るならいくらでも注文して差し上げますとも!!」


 そう胸を張って王様を見つめる宰相様の瞳は、以前孫が生まれたと大喜びしてその給与のほとんどをプレゼント代に費やしていた某大臣のようだった。


 「はぁ……」


 宰相よぅ、お前はいつから孫を溺愛する祖父母になったんだ?……前の村じゃ俺が自由時間の小遣いを渡せといくら迫っても小銅貨一枚も渡さなかったってのによぅ、だぁぁぁ!!思い出すだけで苛つく!!


 俺はのろのろと進むこの列の先にいるであろう会ったことも無い部下の方向を向き、呟いた。


 「さっさとしねぇと、城に連れて帰って俺様の特別訓練に参加させるぞ……?」


 あぁ、この問題が解決して城に帰ったら、気を引き締めるためにも辺境にいる名も知らぬ部下達を城に詰めている部下と交代で招集して特別メニュー組むのも良いかもなぁ……。


 ま、完全八つ当たりだが


 







 

 


 

 

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