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叱られる私×大陸事情

 書くのも物語の進みもスローですみません。


 むしゃむしゃ、じゃりじゃり、むぐむぐ……。


 「おいしーんだね」


 「……ん」


 「けっ、これっぽっちかよ!!おい?!もっとないのかよ?!」


 これは……何と言えばいいのか。植物三人衆が地下の泥を食べる光景って、絵本で見るなら可愛いかもしれないけど現実だとちょっとシュールね。

 しかもアン?は、ちょっとどころかかなり図々しい要求までし出すし……喧嘩は止めてくれたけど、どうしたものか。


 「えぇと……食事は一休みして、とりあえず自己紹介しない?私はこの源泉の精霊で、名前はまだないの」


 中身以外全部変わったんだし、名前もその内考えなきゃとは思ってはいたのよね。ただ、今まで言葉が通じる生き物も、名乗る相手もいなかったから先延ばしにしてたんだけど。


 「けっ、誰が!!俺たちを野生の動物扱いした相手に名乗るかってーの!!大体、今時野生の動物だってかては自分の器に入れて食うってのに、お前は前の精霊に何も教育されてねぇのか?!」


 ……あぁ、もう。私が泥を地面に置こうとしたことがそんなに気に食わなかったのか?だってしょうがないでしょう?!頭は緑で身体は茶色、しかも完全に素っ裸だった植物三人衆が自分用の器と木のすぷーんを老木の根元に隠してるなんて誰が想像できるわけ?しかも泥を配膳するときもあっちが少ない、こっちが多いって文句ばっかりだし……。


 「……それはきっと、今の精霊様が前の精霊様が無くなってから生まれたからだもんね。知恵者なら森にもいっぱいいるもんね。知りたいことは、皆に聞くといいもんね」


 「ん、そう」


 アン?になのか、私へなのか説明してくれる穏やかな子と、ただ頷くだけの物静かな子。

 なんと言うか、極端すぎない?この三人衆。


 「とりあえず、あの子は良いから君たちだけでも名前……教えてくれないかな?」


 そう言いながら、彼らの小さな器を自分の温泉で洗ってあげる私。まぁ、食べたのはもともとこの下にあった泥だし、この温泉高温だから洗剤無くても殺菌消毒出来るでしょ?それにしても可愛い器……すぷーんは素材的に木だったけど、これはつるりとした白いなにか、いったい何で出来てるんだろう?


 「あの子はアンで、僕はドゥなんだね」


 「……トロワ」


 見た感じ、アンは怒りっぽい子。ドゥは比較的穏やかで、言葉の最後に「ね」がつく子。トロワは……なんか少し言葉少なで暗めな子。かな?


 「そう、それで……この老木は私が倒しちゃったんだけど、他に行く所は?」


 さっき話を聞いた限り、餓死がどうなのと言ってたからきっと行く場所はないだろうと思って声をかけた。もし宛てがないなら、食べ物の土があるこの場所に、倒れた老木を使用する許可を頂いて小屋でも作ってあげようかと、そうすれば私も一人じゃなくなって楽しいし、三人衆もこの先に困らない、まさに一石二鳥だと。そう安易にも提案しようと考えていたから。


 「あるわきゃねぇーだろっ!?ばっきゃーろぉ!!」


 っ……そうですよね、すいません。

 思わずスライディング土下座したくなるほど厳しいアンの怒鳴り声に、身体がお湯の私は心の中で素早く謝罪した。


 「……お前は何もわかってねぇーんだ!!良いか?この森だけじゃない!この場所と陸続きの土地ではその全てに被害が出てるんだ!!お前の前にいた精霊のせいで土地が干からびて、俺たちの仲間もいっぱい死んだんだぞっ?!そこの爺だって!」


 そう言うアンが見つめる先には、先ほど寿命で無くなったのだと説明を受けた老木が……。


 「……さっきは、寿命だって」


 私は、いろんな意味でどきどきしながら……老木と三人衆を見つめ呟いた。


 「本当なら、もう少し長く生きられたんだね。爺ちゃんが、そういったわけじゃないけど、でも……前の精霊様が犯した罪は、たくさんのモノの命を削って、奪ったんだね」


 アンが暴走気味なのは最初からだけど、ドゥもこう言うってことはよっぽどその被害ってのが酷いのねぇ。


 「此処から離れれば離れるほど、遠ければ遠いほど、土地は枯れて栄養もねぇ!!そんなんだから、植物も虫も動物も、みんな、他よりはまだましなここに逃げるんだ。でも、此処にも元々住んでる先住者がいて、開いてる場所探すのも大変なんだよっ!!爺みたいに年取った奴は事情も把握してるから住処も糧も分けてくれるけど、全員が優しいわけもねぇしな……だいたい、俺達は一樹ひとじゅじゃねぇ、三樹みじゅもいるし。自分の事で精一杯な他の奴らが、助けてくれるわけもねぇ……」


 「う……」


 最初は怒りに任せて怒鳴っていたアンも、最後の方は項垂れて呟くように、ぼそぼそと言葉を零す。ドゥやトロワを見れば、心なしか瞳が潤んでいるように見えた。

 はぁ……私は!何言われても関わらないわよ?!心が痛まないかって聞かれれば、そりゃなんとかしてあげたくもなるけど。だって私はただの精霊で、新米の上何も出来ないのにそんなこと言われたって、正直どうしようもないでしょう?この三人衆なら何とかなるにしても、その他大勢にまで中途半端に手を出すわけにもいかないし……あーもう!!どうしろって言うの?!誰か助けて!!







 ここまで読んで下さってありがとうございます。

 最初は主人公だけだったのが、最近は結構登場人物が増えましたが気に入って頂けた者はおりましたでしょうか?

 ちなみに、私はガドガン・ドドッチが結構好きです。

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