——三人目と四人目
二人が殺されたことと病院の実態がさらされたことで、僕が通っていた学校でのイジメがネット上に蔓延し始めた。
普通はどんなに酷いイジメでも読む側の胸が悪くなるので、長くても数日で書き込みが途絶えたり立ち消えたりするのだけど、やはり実際に殺人が起きているだけあって憶測や中傷・誹謗、賛同、さらにけしかける意見が絶え間なく並んでいた。
マスゴミの三文ライターが話題に取り上げるたびに全体の意見としては、「いい気味」「もっと学校側を追求しろ」などに傾いている。
病院にいたっては、根掘り葉掘り面白がって書き立てられ、院長が学校に対するクレイマーの常習犯だったことまで暴露され、破産まで秒読み体制に入った院長は疲労で入院。
しかも他の総合病院に入院したなんてお笑い種だ。
そんなおり入院先から院長が失踪し、二日後、山の中で車内に排気ガスを引き込んで自殺しているのが見つかった。
ネットでは多少惜しむ意見もつぶやかれたけど、「死んで逃げやがった」といった意見を最後に興味は急に失われ、もう話題に上ることさえなくなった。
院長の死で変わったのは、僕の親の賠償金の支払い義務がなくなったことだ。
本当は院長の嫁さんか、息子のアイツに引き継がれるのだろうけど、二人とも遺産贈与の権利を放棄したんだ。
そりゃあうちの賠償金の受取り額より、院長の負債と発覚した事件で支払わなければならない賠償金のほうがはるかに大きければ放棄するしかないだろう。
自殺が分かってからずいぶんと手続きが速い気もしたけど、おかげで親の経済的負担がかなり楽になった。あの院長も最後くらいは役に立ってくれたわけだ。
ただ一つ残念だったのは僕が直接手を下せなかったことだけど、今さらどうしようもない。
その日の夕食のメモには、「こう言っては悪いけどホッとしている」とあり、僕からは「長い間迷惑かけてごめんなさい」と返事しておく。
それよりも、僕をイジメていたやつらのリストを渡したことで、一時的に警察の目はあいつらに向けられて無警戒になるやつがいる。
ちょうどいい。あいつには打って付けのタイミングだ。