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——違い

 思惑通り警察は青酸カリの入手経路を探っているようだ。

 医療関係者や塗装業など、手に入れやすい人々から話を聞いているとニュースで報じられている。


 また一方で毒キノコや毒草、特にカエンタケの恐ろしさが取り上げられて、ナラ枯れによる林の減少に伴いその数を増やしていることや、ナラ枯れの原因である昆虫と菌の対策を進めるよう呼びかける声が高まった。


 これから行楽シーズンを迎えるにあたって、各地で専門家を交えカエンタケの生息状況の確認と駆除を行う動きまで出ている。


 結局、僕のやったことは、今後一般の人が誤ってカエンタケを食べて命を落とすのを防いだということだ。


 そもそもマスゴミにしろ警察にしろ人が死なない限り、それもセンセーショナルで話題性のある死に方でもしない限り、取り上げることもなければ動きもしない。


 逆に言えばどれほど危険な毒物でも、騒ぎになるまでは管理が甘く、入手しやすく使いやすいと言う話だ。


 早い者勝ち。資本主義の大原則だな。



 ネットでも今回の件はずいぶん話題に上っていて、中には毒物に関係する仕事をしていると思わしき人物が、あいつらがどんな死に方だったのか詳しく解説した板も立った。


 さらには各毒物で死んだ人の写真まで掲載されたけど、すぐに削除されていた。

 もし残っていれば、間違いなく「検索してはいけないワード」の仲間入りを果たしただろう。


 ただ今回のような複数の毒物中毒だと「どれほど苦しむかは想像もつかないが、のたうち回るだけではすまないだろう」と締めくくられていた。


 それにもう一つ。青酸カリを使ったのは犯人の自己顕示欲だとするカキコミもあった。


 キノコと毒草だけなら、あいつらが誤って採って来たものを自分たちで料理しただけの事故として片付けられるのに、せっかくの完全犯罪のチャンスをみすみす取り逃したという意見だ。


 普通はそう思うだろう。確かに、僕がやったという証しを残したいと思わなかったと言えば嘘になる。

 だけど、証拠を残さない完全犯罪より証拠を残してもあいつらを確実にやるほうが重要で、最終的に僕が捕まらなければいい。

 それに、より捜査を撹乱させることができる。こんな意見が出ること自体も撹乱の一つだと考えている。



 あいつらの葬儀はあったけど自由参加なので当然、僕は行かなかった。あいつらにイジメられていたのは周知の通りなので、行ったところで笑いに来たと思われるだけだ。


 後から行ったやつの話を聞き耳を立てて聞いていると、最後まで棺の蓋は開けられなかったそうだ。

 もし開けたとすれば、酷い臭いと醜悪な姿に参加した人間全員が会場から逃げ出しただろう。


 何より葬儀は故人を悼むためのものであって、ゴキブリやハエの死を悲しむ人がいないように、僕があいつらを悼む必要も理由もない。



 もし部屋に拉致した僕が死んだとしたら、あいつらは僕の死体をどうしただろう。

 バラバラに刻んでトイレに流しただろうか。それとも少しずつゴミとして回収させただろうか。

 あるいは昔の事件のように、ドラム缶に入れてコンクリートで固めただろうか。


 あいつらにとって僕の死体はゴキブリやハエ以下の価値でしかないだろう。

 だけど、人間の死体ってのは後始末がとても厄介なんだ。素人がどうこうしようとしても簡単にできるものじゃないことなんて、少し頭を使えば分かるはずだ。


 僕とあいつらの違いは、後始末を自分でするか、警察や鑑識、病院というプロに任せるかどうかだ。



 警察の捜査の進展も気になる。


 ここはほとぼりが冷めるまで一旦休憩しよう。


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