——六人目
ハプニングの後しばらくして、僕へのイジメが極端に減った。
PTAのモンペどもが学校側へ圧力をかけ、校門にいつも警官がいるようになったからだ。
それが一週間も続き、僕も気が緩んでしまったのだろう。
放課後に待ち伏せされて、連れて行かれたのはあいつらの仲間の一人、クラスの女の部屋だった。
しかも、高校生のくせに1人暮しをしているという贅沢極まりない、いや、もう親が面倒見切れずに諦められているのだろう女の部屋へ連れ込まれた。
この女の外見はとても可愛いとか美人とは言えないやつで、ただ単に、こいつらにヤラセまくる頭の弱いやつだ。
やつらもそのためだけに仲間にして、学校でも外でも、ヤリたいと言えばどこでもお構いなしにヤラセる女だった。
そう、あれは入学して一週間のことだ。
放課後、僕は図書室から下駄箱への階段を降りていた時。教室の一つから喘ぎ声が聞こえてきた。
もちろん僕も男だからエロい妄想をしながら音を立てないよう教室を覗くと、あいつらと女が集団でヤってやがったんだ。
こんな場面を生で見るのは初めてだった僕は、興奮より驚きが優先して凝視してしまった。
だけど普段のやつらを知っているだけに、見つかるとヤバイと思いその場から逃げ帰った。
僕が見たことはバレていないと思っていた次の日、やつらは僕を取り囲んで昨日盗み見しただろうと迫ったんだ。
何も見ていないと言う僕に、女は「見たに違いない。あの時あたしと目が合ったの気づかなかったと思ってるの?」などと言いやがり「キモイ」「最悪」「ゴミ」と罵られた。
女は僕に「仲間になれば今回のことはなかったことにしてあげてもいい」と言って、僕と「交渉」を持ちかけてきた。
はっきり言って僕はこの提案に気持ちが揺れた。
高校1年の男の僕に、女とヤレると聞かされて動じないほうがおかしいだろう。
それでも僕は、その交渉を断わった。
理性とか、道徳だなんてつもりはない。ただ単にこの女が好みじゃないだけの問題だった。
だけど、僕が拒否したのは女にとって耐えられない屈辱だったのだろう。
理屈なんていっさい通じない女の言い分に、ヤりたいだけのやつらがヤれなくなる不安を隠すのと、僕をどれだけ酷くイジメるかで自分の「強さ」を誇示するバカさ加減のためのスケープゴートとして、この日を境に僕はやつらのターゲットにされてしまったんだ。
女はことあるごとに僕の陰部に固執して、タバコの火を押しつけ、タトゥーを彫り込み、オナニーを強要しやがった。
中心のやつはもとより、結局、僕がイジメられたのはこの女の「自分に魅力がないことをセックスでごまかすための行為」に巻き込まれただけだ。
女の部屋で、僕はまたあの頃と同じイジメを受けた。
どこかで仕入れたんだろう酒の力を借りながら、異様な盛り上がりの中で、マッパにされて焼けた鉄串を体に押し当てられ、陰部の皮に突き刺された。
いくら体を鍛えたといっても、陰部は鍛えようがない。
だけどここで逆上してこいつらに制裁を加えれば、これまでやってきた行為がすべて無駄になる。
どんなに苦しくても、つらくても、痛くても、熱くても、今はただこいつらのなすがままに任せて我慢し続けるんだ。
やがて夜も更けてすっかり酔っぱらったこいつらが眠っている隙に、僕は部屋から逃げ出した。
少なくとも、こいつらが集まる場所を確認できたことを良しとしよう。
明日の朝、僕がいないことでこいつらは多少動揺するだろう。そしてまた明日の放課後には、僕をこの場所へ連れ込む算段をするはずだ。
今回はリスクが大きい。
どこまで僕一人の行動に収まりきれるのか心配だ。
僕の行動は、少人数であればあるほど効果があるんだ。
今度ばかりは少し強引な手を使わなければならないな。