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——登校②

 復讐のために体を鍛え、証拠を残さない方法や罪を他人になすり付ける方法、そのための道具を手に入れ、そして、殺害方法を考えて実行している今の僕からすれば、こいつらはなんて幼稚なんだろう。


 情けなさと、自分に対する悔しさのあまり体が震えた。


 するとこいつらは「またブルってやがるぜ」と笑いながら脇腹や足に蹴りを入れ、正面から入れられた蹴りで椅子ごと後ろに蹴り倒された。


 とっさに受け身で頭をかばったためダメージは少ないけれど、すぐには立たず痛がっている振りをしておく。

 この場所で僕はまだ、情けないイジメられっこを演じなければならないんだ。


 倒れたままの僕の顔を、やつらは足で踏みにじりながら「最近遊び相手がいなくてよ」「仲間が減ったから退屈していたんだ」「今日から絶対毎日来いよ」と、バカの一つ覚えみたいに繰り返しやがった。


 少し気になったのは、以前中心だったあいつの姿が見当たらないことだけど、親の院長がああなったんだから、ノコノコ学校に来れるはずもないか。


 チャイムが鳴るとこいつらは何ごともなかったようにさっと席に戻り、入ってきた新しい教師は僕を見つけ驚いた顔をする。


 こいつは確か地理の担当だったやつだ。パッとしないやつであまり記憶に残っていない。


「来ていたとは知らなかった。ちゃんと連絡してから来てくれないと」


 ああ……。

 この学校の教師ってやつは本当にバカばっかりか? そのセリフは今すぐ速攻で帰れと言っているのと同じだろうが。


「ご、ご、ごめんなさ、い」


 卑屈に謝る姿を演じると、教師はあわてて言葉をつなげる。


「いや違うんだ。せっかく来てくれたというのに、またイジメにあったら大変だからね」


 ふーん。一応、ネットや会見だけの口先だけでなく、学校内でも対応するつもりでいたんだな。


「そ、そうですか。す、すみませんでした」


 僕がさっき殴られたことをチクるんじゃないかと、こちらをじっと睨んでいるやつらのことさえ教師は気づかないのか。


 しかも、目の前で見ていたクラスのやつらの誰もさっきのことを話そうとしない。

 結局何一つ変わっていないじゃないか。


「ホームルームが終わったら、いったん職員室へ来てくれ」

「は、はい」


 どうせそこでは教師に囲まれて、もう二度と不登校なんてするなとか責められるんだろう。


 やつらに視線を向けると「分かってるだろうな」と言わんばかりに拳を握りしめ、アゴを突き出しながら睨んでいる。


 ああ、もちろん言わないとも。


 僕は久しぶりに登校しましたけれど、クラスの皆はとても親切に迎え入れてくれて大変嬉しかったです。

 僕をイジメていたクラスメートが殺されてしまったのは、正直ホッとしていないと言えば嘘になるけれど、とても悲しいことです。

 もう二度とイジメなんてあってはなりません。

 この学校は悲惨な事件に巻き込まれましたけれど、あれから生まれ変わったと信じています。

 僕は一生徒として、これからもこの学校を誇りに思っていきます。


 これで満足か、教師ども。

 今後、何かあっても教頭がICレコーダーで僕に見つからないよう録音した今の証言をもとに、教育委員会や警察、マスゴミに言い訳ができるんだからな。


 そうとも。

 僕は校長、教頭を含めた教師全員を証人として、「イジメられていない」「この学校は生まれ変わった」「誇りに思う」と言い切ったんだ。


 そんな僕に犯罪の動機なんてあるはずがない。


 今後、この学校で何かあっても、教頭がICレコーダーで録音した証言をもとに犯人でない理由を補強してくれるだろう。



 ごめんなさい。まったく勘違いしていました。


 教師ってなんて便利なやつらなんだろう。


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