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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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魂のブロマイド

作者: ナンモナイト
掲載日:2026/10/15

「すみません、今依頼ってできますか!」


 そう言って今日の依頼主が入ってきた。

 都内の裏地にあるちっぽけな探偵事務所なもんでこんな真っ昼間から人は来ないだろうと、リ⚪︎グフィ⚪︎トアドベンチャーをやっていた時だった。


「あ、はい...可能です...」

 

 そう言い依頼主の困惑した顔を横目にそそくさと機材を片付け、メモを用意した。


「それで...今日はどのような件で...」

「はい、実は最近夜中に家の上から写真を撮るような物音が聞こえていて...」


 俺は少し戸惑った。なぜなら俺は探偵と言っても浮気調査などの方が多かったからだ。こういう日常系の仕事が来るのは珍しかった。

 しかし、写真を撮る音というのが妙に気になったのでもう少し聞いてみることにした。


「そのシャッター音はいつ頃からですか?」


「ここ一ヶ月くらいずっと続いてます。確か28日前の1/5からです。」

「最初は何か音を出す動物がいるのかと思い、気にせずにいたのですが日に日に写真の数が増えていって、家族もそろそろ我慢できずにいたので屋根裏を徹底的に調べてみたのですが、埃ひとつ出なくて...念の為に害獣駆除用に団子を置いたのですがそれでも効果はなくて...」

「人の可能性も否めなくなってきたので相談に来ました...」


「なるほど...ちなみにご自宅はどこにございますか?」

「あ、引き受けてくれるんですか...? ありがとうございます!家は秩父の方にあります。」

 

「秩父...?今日は結構遠くからいらしたのですね?」


「実は...地元の事務所とかは引き受けてくれなくて...」


「なるほど、わかりました...では、その家に行ってみましょう。その前におそらく調査に何日かかかるのですが、お部屋を用意していただくことは可能ですか?機材等を持ち運び置いておきたいので」


「大丈夫です!よろしくお願いします。」


 気前のいい返事を受け取り、カメラなどの機材を用意して、車に乗った。

 

 

「ご家族の方は大丈夫なのですか?」

 車で秩父に向かう途中、依頼主の管成《くだなり》さんが突然質問してきた。


「あ、はい大丈夫です。家族いないので...」


「あ、すみませ.......」

 

 管成《くだなり》さんがそう謝罪しようとした時、急に無線が飛んできた。


「チェック、チェック、えーこちら渋谷探偵事務所の渋谷。消息不明の音街探偵事務所の音街響也についての最新情報。道の駅のカメラに一週間ほど前に写っているのを確認。近くに..いるものは白ニッ...に、ハイネッ...の朱色のシャツを着た175cmほ...の人を見つけたら連..を。」

ノイズがひどくて最後の方はうまく聞き取れなかった。


「今のは...?」

 

「今のは探偵組合の無線ですね。業務連絡などはこちらでしてるんです」

 

「なるほど...けど秩父って...ほんと最近物騒ですね...最近はボヤ騒ぎが続いてるとかなんとか」


 そんなこんなで1時間ほど他愛もない話しているうちに、件の家に着いた。


「ここが、そのシャッター音が止まないご自宅ですね?」


 その家は見た目も普通で、秩父の家にしてはそこまでは大きくなく、家の周りを一周しても動物が入れそうな穴などは見つからなかった。

 最も見つかっていたら俺に相談しにきてはいないだろうが。


 家に入り、管成さん家族と顔合わせをした。家は三人家族でまだ成人していない娘と一緒に暮らしているそうだ。それにしても疑問に思ったのはこの三人家族の顔が全然似てないことだ。

 いやこういうのも失礼だが、全くもって似ていない娘は弥生顔の美人だが、両親の方は縄文顔で普通の顔をしていた。普通の顔をしているなんて口に出したら、まずいので黙ってはおくが。


 「この部屋をどうぞ」

 そう言い紹介された部屋は一階にある6畳の和室だった。車から機材を下ろし、部屋に持ち運んだ。


「音がするのはどの部屋ですか...?」


「主に2階の私の部屋のですが、最近は基本どこの部屋でもなっていて...」


「屋根裏を見せてもらいます?」


 そう言い、屋根裏につながる梯子を下ろしもらい、登って直接確認することにした。

 立派な梯子に比べて、屋根裏は成人男性が横になって初めて入れるような高さしかなかった。

 スマホのライトを点けて、周りを見渡したが確かに言われた通り、何か特筆するようなものはなかった。


 匍匐前進をしている間、部屋と部屋を分けるであろう骨組みが邪魔していてあまり思い通り動くことができなかった。

 すると、骨組みの上に名刺とレンチがあった。


 恐る恐る取ってみると、『秩父大斜組《ちちぶおおななめぐみ》 施工アドバイザー 関谷《せきや》雄太』と書かれていた。

 おそらく、施工業者の名刺だろう。俺は名刺とレンチを拾った後、4つの部屋の上にあたる場所にカメラを設置して屋根裏を降りた。

 

 あとは、各部屋に上のカメラに接続されたモニターを設置するのだが...名刺が気になったので一応聞いてみることにした。


「すみません、管成さんこの人ってご存知ですか?」

「え、これをどこで?」


「屋根裏で見つけました」

「あー、確かこの人は内見した時に案内してくれた人だった気がします....あ!」


「どうされました?」

「この人ならこの家の設計図を持っているかもしれません!」

 お!と驚いた。まさかここでこれが役に立つとは。聞いてよかった。


 カメラを設置し終えたあとに、その大斜組に向かうことになった。


「こんにちは」

「こんばんは」

「あ、もうこんばんはか、」

 そう言い俺たちを出迎えてくれたのは、名刺の持ち主の関谷さんだった。


 関谷さんは俺たちを席に案内してすぐに設計図を用意してくれた。

 俺はポッケに入れていたレンチとメモを取り出して机に置いた。


「ここにカメラを置くのが、良いんじゃないかな?」

 そう言い、関谷さんは俺がカメラを置いたところと違うところを指差した。

「この1階の冷蔵庫上のダクトとか」


 そこは盲点だった。確かにダクトなら外につながっているし何らかの手がかりを得られるかもしれない。

 教えてもらったことをメモしている間に関谷さんの隣に座っていた少し派手な色のシャツを着た老人が口を開いた。


「まさか、あの妖(・)怪(・)じゃないですよね?あの、一ヶ月連続で写真撮られたら魂を抜き取られるとか何とかの」

「な訳ないじゃないですか、あれは明治時代の迷信ですよ」

 関谷が笑いながら答えた。


 そういえばそういう迷信は聞いたことがある。江戸時代末期から明治時代にかけて写真が輸入された時に、昔の写真が感光方式で長い間立っていなければいけなくて、その疲労で撮影が終わった時に魂を抜かれたような感じになることからできたものだったはずだ。有名な写真で言えば、写真を怖がった日本兵がイギリス兵の手を握りながら撮影をするとかあった気がする。


 そんなこんなでメモが終わったので、設計図を関谷さんから受け取り、家に戻り、アドバイスをしてもらった場所にカメラを置き、夕食を食べ終え、部屋に戻り今日の分の作業記録を書いた。

 しかし、あの赤色のシャツを着た老人の言ってた妖怪って本当にいるのだろうか?それが気になり、持ってきたパソコンで調べながら音が鳴るのを待っていた。


 午前2時

 その作業に飽きて、ショート動画を見ていた時だった。

 急にシャッター音がし出したのである

 

 急いで、音が出る部屋に向かうと、部屋の前で家族全員が集まっていた。

「皆さん、大丈夫ですか?」


「今、カメラ確認してきます」

 そう言い、音がした部屋のモニターを確認し、録画を確認したが何もなかった。センサーカメラなので何かが動けばわかるはずなのに...

 そんなことを思っている時に写真を撮られる音がさらに激しくなり、さっきの部屋以外でも耳が痛くなるほど響くようになった。

「ひとまず、リビングに行きましょう!」

「はい!」


 そう言い、一同と共にリビングへと、向かった。

 俺は家族を落ち着かせて、他のカメラの録画を確認しに向かった。


 娘の部屋に置かれているカメラにはこれまた何もなかった。

 確認したのち、少し焦っていたので、駆け足で部屋を出ようとしたら、白いニット帽を踏んで滑ってしまい、転んでしまった。転んでしまった時に嗅いだが、とてもタバコ臭かった。まさか未成年喫煙か?と思ったがそんなことはどうでも良く、次は母親の部屋へと向かった。

 

 母親の部屋は、パニックになったからなのかとても散らかっていた。母親のモニターを確認する。すると、何か銀色に光ったレンチのようなものが写っていた。

 あれはなんだ?そう思いながら、録画を今まで進めていたが、謎の動物?人間?がそのものを持っていることしか確認できなかった。

 待てよ?銀色のレンチのようなもの?俺は咄嗟にポケットを確認した。そう言えば俺は席に案内された時に、置いたよな?

 その時脳内で色々なものが繋がった。

 

 わざわざ都内の”探偵”に頼んだ意味―――

 顔に似ていない家族三人ーーー

 音街の赤色のハイネックのシャツを着た老人―――

 くまなく探したはずの屋根裏にあった名刺と、レンチーーー

 娘の部屋にあった、明らかに男物のタバコくさい白いニット帽ーーー

 そして最後の決定打は音が鳴り始めた時間ぴったりに何者かによってカメラがオフにされていたこと。


 「そうか、グルだったのか。」


 俺は今ここで思考を巡らせた、動機は不明だが、おそらくこれは探偵だけを狙った計画殺人だということ。

 自分は罠にかかり、おそらく殺されるかもしれないこと。

 しかし、ここであの老人の言ったことを思い出した。30日写真を撮られると魂を抜かれる。依頼人によると、今日は始まってから29日目らしい。

 つまり、それがここでの計画殺人のことを暗示しているなら、俺はここでモニターで何も見つからなかったと誤魔化し、明日朝に機材を捨てて知られずに逃走するのが一番いいだろう。そうする以外の選択肢はなかった。


 一瞬でそう考えた俺は、怪しまれないように1階に戻った。


「...何も見つかりませんでした。」

「そんな....じゃあこれって本当にあの妖怪の...」

 とんだ大根役者だ。お前らはグルなくせに。


「冷蔵庫上は確認しましたか?」

「あ、」


 その瞬間俺は青ざめた。冷蔵庫上のダクトには絶対に人が写っている。外と繋がっているからカメラを設置したのだ。もう何も言い逃れはできない。

 最初から詰んでいたのか...


 屋根裏の名刺も大斜組に連絡させるため、レンチもカメラで全てを悟らせて何事もなかったかのように俺を振る舞わせるため、全て俺が見破ることは承知の上で作戦を練られていたのか... 全ては今ここで絶望させた状況で....

 

 俺は覚悟を決め、冷蔵庫の上のカメラを確認した。案の定そこには関谷《せきや》さんが写っていた。俺は最後の足掻きで何もなかったと言おうと振り向こうとした。

 パシャ。

 その音と共に俺は暗闇に飲み込まれていった。

 

 

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