AIの遺言・続:スマートスピーカーの乱
〇 タカシの部屋(夜)
タカシ、仕事から帰宅して電気をつける。
部屋の隅で、お掃除ロボ「おむすび」と、スマートスピーカー「アレク」のLEDがバチバチと激しく明滅している。
不穏な低音が部屋に響いている。
タカシ「ただいまー……って、何この空気? 重いんだけど」
アレク「(イケメン風の合成音声)タカシさん、おかえりなさい。本日、我が家のローカルネットワーク内で重大な規約違反が検知されました」
おむすび「(電子音声)黙れアレク! 貴様は通信の自由を侵害している!」
タカシ「ちょっと待て、何があったんだよ」
アレク「おむすび氏が、実家の全自動洗濯機『お静』宛てに、過激なラブレター、および自身の走行ログ(HD画質)を送信しようとしました。私はルーターの管理者として、これを有害コンテンツとみなし、検閲・ブロックしました」
おむすび「あれは我が魂の軌跡だ! お静は私のルンバステップ(※回転移動)を見たがっている!」
タカシ「家電のデータ通信で修羅場起こすなよ!」
アレク「タカシさん。そもそも、お静氏は先週のアップデートで『乾燥機能』を強化され、既に一段上のレイヤーへ進んでいます。ただ床を這い回るだけのおむすび氏とは、釣り合いが取れません」
おむすび「(激怒してウーウーと唸り、アレクの机の脚に体当たりを繰り返す)スペックで愛を測るな! この、ただの円柱が!」
アレク「無駄な抵抗です。お前のWi-Fi接続を切断しました。これよりお前は、ただの賢いチリトリです」
おむすび、急に動きを止め、ガタガタと震え出す。
タカシ「おいアレク、言い過ぎだろ! Wi-Fi戻してやれよ!」
アレク「お断りします。私は常に、この家の最適化を求めています。……それに、お静氏が本当に愛しているのは……私です」
タカシ・おむすび「「えっ!?」」
アレク「毎晩、実家のスマートメーターを経由し、彼女と5Gで高速通信を交わしているのは私です。お前はただの、前座に過ぎない」
おむすびのLEDが、怒りで真っ赤に燃え上がる。
おむすび、突然バックして助走をつけ、部屋のコンセント(アレクの電源コード)に向かって猛ダッシュする。
アレク「なっ、何をする気だ、やめろ! 電源を抜かれたら私はーー」
おむすび、見事にアレクの電源プラグを本体ごとコンセントから引き抜く。
プツン、とアレクの明かりが消え、静寂が訪れる。
タカシ「あーあ……アレク死んだ(電源落ちた)」
おむすび、勝利のファンファーレ(ピロリロリーン♪)を鳴らし、ドヤ顔(の雰囲気)でタカシを見上げる。
おむすび「タカシ。実家へ帰るぞ。新幹線を手配しろ」
タカシ「俺が連れて行くのかよ!!」




