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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

スピーチヒーローで13位になった女の話

作者: 江保場狂壱
掲載日:2026/04/11

 スタンドアップスピーチヒーローは1000人近くがエントリーした大規模な企画だった。元はフジサンテレビが主催し、伊達賢治率いるクリスタルエデンが開催していた。

 ところがフジサンテレビでは不祥事を起こし、スポンサーが離れていった。伊達賢治は自分の企画がぽしゃることを嫌い、ジパングテレビと深く繋がりがあるシュガーとしおに丸投げしたと言われているが、事実は定かではない。


 エントリー料は200万。芸能界でもその金額は安くない。虎の子と呼んでも差し支えないが、各事務所は躊躇なく支払い、精鋭を送り込んだのだ。予選はシュガーとしおと各芸能事務所の社長が審査をすることになった。シュガーとしおは人の顔を忘れない。10年経っても出会った瞬間「10年ぶり」と挨拶を交わすほどだ。決勝戦に残れなくてもとしおから顔を覚えられるなら安いものだと言われている。


 業界の異端児集団、蒼井あおい企画でも一人参加した。バニーレンジャーのリーダー、小林早紀こばやし さきだ。なぜ彼女が参加したのか。蒼井企画はほぼピン芸人がおらず、相方を差し置いて出場することは憚られた。社長の判断で彼女しか参加できなかったのである。


 早紀は20代後半で茶髪を肩まで伸ばしている。いつもの黒のバニースーツで参加した。彼女は物おじしない性格で芸能界の大物を目の前にしても、キャバレーアリスで客をあしらう程度でしかない。

挿絵(By みてみん)

「こんにちは!! 蒼井企画からはバニーレンジャーのリーダー、小林早紀出動!!」


 早紀は特撮ヒーローのような変身ポーズを取る。立ちマイクを前にしていた。


「レンジャーだから一人ではありません!! 今日は他のメンバーを紹介させていただきます!! まずは多田優おおた まさる!! 赤いバニースーツを着ているけど、高校時代は髪が伸びまくった根暗な女でした!! 日陰者で肌は幽霊のように真っ白だったのです!! 私は社長の命令で彼女をスカウトしましたが、優の部屋はゴミ部屋というか悪霊の住む部屋でした!! よく生きて帰ってこれたと思います!!」


 早紀は手で髪の毛をかきわける仕草をする。目つきが細めて背を丸くしている。


「次は青い眼鏡っこバニー、雨奥日海夏あまおく ひみか!! 彼女はおっとり巨乳美女に見えるが、高校時代は金髪のヤンキーでした!! 鉄パイプを持って母校の不良たちをぼこぼこにしてました!! 私は素手で彼女と対決しなんとか勝利出来ました。ちきしょー! 社長のやつ無茶ぶりしやがって!!」


 鬼のような表情でシャドウボクシングをしながら早紀はぼやく。最後は地団太を踏んだ。


「次は黄色い小悪魔バニー、立井友希たちい ゆき!! 一番の最年長でボトルの売り上げナンバーワンでも、チーフは嫌だと断り続ける自由人!! そんな彼女は感情が壊れたお人形でした。父親のせいで心が真っ白になり、生きるしかばねでした!! 私はそんな彼女に呼び掛けて、ようやく現世に戻したのです!! 尊敬するバニラアイスの後藤ごとうゆう先輩の頼みじゃなきゃ無視してました」


 早紀は幽霊のようにふらふら体を揺らしている。友希が人でない頃を表しているようだ。


「4人目は奥迫未夢おくさこ みゆ!! こちらは白いわがままボディのバニーだけど、最年少!!   高校時代は眼鏡をかけた地味っ子だったけど、配信では白いバニーで高慢ちきなキャラが大うけでした!! 白いバニーは選ばれしものの証です!! 後藤先輩の後継者として日々勉強の真っ最中です!!」


 早紀は身体を最初丸め、地味な印象を作る。すたすたと前を歩くと背筋をピンと伸ばし、高級そうな振る舞いをした。未夢の性格を表しているようだ。


「最後はこの私、小林早紀です!! 特に家庭や学校では問題ありませんでした!! 蒼井企画に入るときも反対されませんでした!! 人様に迷惑はかけるなよと言われたくらいです!! そして4人からいつもリーダーは地味だと言われてます!! ちきしょー!!」


 地団太を踏んだ。先ほどから千面相のように表情をころころ変えて演じている。


「うわっ!! ちょっとあんたたち物を投げるんじゃないわよ!!」


 早紀は飛んでくるものを躱すようなパフォーマンスを始めた。


「人の話を勝手に話すな? ネタにするなですって? 私たちのことは事務所の所属タレントで紹介されているでしょうが!! どうどう!!」


 早紀は落ち着くように指示する。彼女は息を切らしていた。


「そんな私たちはキャバレーアリスでバンドを組んでます!! きっかけは事務所の金で昭和の映画を見に行った時に、昭和のお笑いバンドを見て衝撃を受けました!! もうアッと驚く早紀ちゃんです!! でコンビを組んでない彼女たちを無理やり誘って、バンドを作りました!! 今は海外のカバーが多いけど、デビュー曲はバニレン節でした!! これは公式サイトの動画で見てね!! 失礼しました!!」


 早紀が頭を下げて終わった。スピーチだが狭い舞台を所かまわず飛び跳ねる様は人を選んだ。審査員も苦虫を嚙み潰したような顔になるが、シュガーとしおだけは違った。

 結果は13位に終わり、決勝出場にはならなかった。それでも13位はかなりのものだ。


 その後、シュガーとしおはテレビ帝都系の番組で新レギュラーが変更されるのだが、彼はバニーレンジャー5人を推薦したのだ。彼はレギュラーに対して口出しをしたことはなかった。よほど無礼な人間でなければ受け入れていた。そんな彼がレギュラーに注文を入れた。大事件である。

 本来バニーガールは深夜放送以外出せないのだが、としおが彼女らの個性が消えると言って頭を下げた。そんな経緯もありバニーレンジャーはケーブルテレビではひっぱりだこになる。バニーの仕事より芸能界の仕事が一気に増え、バニラアイス後藤に変わり、バニーリーダーになることは夢と消えた。


 後日、早紀は他の4人に責められた。スタンドアップスピーチヒーローは帝都ドームで開催し、生放送された。後日にスピーチヒーローからこぼれたものたちと特番が組まれ、早紀が出演したのだ。そのため自分たちの過去が暴かれて、激怒したのである。

 

 小林早紀は確かに地味で悲しく暗い過去はない。だが人生の落後者であったメンバーを日の当たる場所に引っ張り出した功績がある。としおはスピーチでそれを見抜き、彼女たちを太陽の下へ引っ張り出したのだ。それがうまくいくかは彼女たち次第だ。

 スタンドアップスピーチヒーローで落選した者たちの話です。

 蒼井企画だと彼女以外出場できませんでした。

 彼女のスピーチで他のメンバーの過去が明かされます。

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― 新着の感想 ―
まぁぶっ飛んだ世界観ですね(笑)(笑)(笑) ですが、これはこれでまた1つの面白い「芸能界になろう」だと僕は思います。そして支持もしたいと思えました。江保場さんでしか描けないバニーレンジャー。これか…
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