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美尻に人生狂わされたOL、異世界転生する!  作者: あけはる


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第4話 街の視線が変わり始めました



 3か月後。


 ユーリアは、今日も庭でバーベルを担いでいた。


「せーのっ……せぇぇぇのっ……!」


 ぐぐぐ、と地面が軋むような音を立てながら、バーベルが持ち上がる。


「よし! いける! 次! もう一回!!」


 朝日を浴びながらのスクワット。

 きらびやかな王都ドーリスにおいて、明らかに場違いな光景である。

 

 というか、日本にいた時よりも、筋トレへの愛が燃え盛っているように見える。


「ユーリア……それ、ほんとに危なくない?」


 母は相変わらず心配そうだが、もう止める気はないらしい。

 父に至っては、椅子に腰かけてパンをかじりながら応援している。


「今日は回数増えてるなあ」


「お父さん、筋肉って、裏切らないの」


「……裏切らないのか……」


 両親はよく分かっていないが、ユーリアが元気なのは事実で、それなら良いと思っているのだった。


 そして何より――


「……あれ?」


 ふと、鏡の前で立ち止まる。


 腹の肉が、若干揺れにくくなっている。

 腕の下のだぶつきが、少しだけ減っている。


「……え?」


 思わず二度見。


「……減ってない? 脂肪、減ってない?」


 恐る恐る横を向き、後ろを確認しようとして、首がつる。


「いっっった……でも減ってる気がする……!」


 ユーリアは拳を握りしめた。

 筋肉、仕事してる。


 そして変化は、街にも現れ始めた。

 両親の営む食堂「ルル」でいつも通り給仕をしていると、たまたま1か月旅に出ており帰還した常連客ダンクおじさんが首を傾げる。


「ユーリアちゃん、見ない間に、なんか……ちょっと痩せたかい?」


「え?」


「いやあ、なんか前より身体が軽そうに見えるぞ」


 言われてみれば、皿を運ぶスピードが上がり、階段も息切れしにくくなった。

 何より、汗のかき方が違う。

ダンクおじさんの奥さんのローラおばさんも

「最近、肌もつるっとしてる気がするねえ」

とつぶやく。


「え、ほんとですか?」


 ユーリアは内心ガッツポーズだった。

(PFCバランス! 睡眠! 筋トレ! パワー!)


 こっちの世界の誰も知らない単語が、脳内で踊る。

 しかし、周囲の解釈は違った。


「……魔力に目覚めたんじゃない?」


「え?」


「急に元気になったし」

「いや、あれは……修行では?」

「誰かに呪いをかけられて、それを解いたとか……」


 ひそひそ、ひそひそ。


「待って待って待って」


 ユーリアは思わず割って入った。


「ただの、筋トレ、です!」


「……きん、とれ?」


「筋肉を鍛えるトレーニング、です」


 重りのついた棒を持ち上げたり、などと説明すればするほど、胡散臭い目で見られてしまった。



 それでも周囲の人たちの反応が決定的だったのは、洗濯物を干していたときだった。


「ユーリアちゃん!」


 近くに住んでいる同い年のアナが、勢いよく駆け寄ってくる。


「ちょっと、どうしたの!? ユーリア! あなた背中が別人よ!?」


アナは目を丸くしてびっくりしている。


「前はもっと……こう……丸かったじゃない!」


 アナは空中で丸を描いた。


「それが今、シュッてしてるのよ! シュッて!」


「シュッて」


「何したの!? 薬!? 魔法!? それとも恋!?」


「恋じゃないわ!!」


 即答だった。


「運動よ運動。食事も少し変えたの」


「運動……?」


 アナはしばらく考え込み、真顔で言った。


「……それ、私にもできる?」


 ユーリアの中で、何かが弾けた。


「……できるわ」


 力強く頷く。


「最初はきついわよ。全身が筋肉痛になる。

 でも」


 ユーリアは、自分の胸をトンと叩いた。


「私のメニューについてこれたら、変化は保証するわ」


 アナの目が、きらりと輝いた。


◇ ◇ ◇

 その夜。

 ユーリアは日記をつけていた。


『三か月目。

 脂肪、少し減少。

 筋肉、確実に存在感が出てきている。

 街の人に不審(?)がられる』


 最後に、大きく書き足す。


『おおむね順調!!』


 大の字になって布団に倒れ込む。


「筋肉は正義・・・」


 そこまで呟いて、すぐ眠りに落ちた。


 この小さな変化が、

 やがて王都中の女性たちを巻き込むことになるなんて。

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