表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美尻に人生狂わされたOL、異世界転生する!  作者: あけはる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/23

第20話 庶民と貴族



 応接室の扉が、静かに閉じられた。

 柔らかな絨毯の上に、三人分の気配だけが残る。


 ユーリアは、一歩下がった位置で軽く頭を下げた。

(前世でも貴族になんて会うことないんだけど・・・)


「本日はお招きいただき、ありがとうございます」


 緊張し足は震えているが、自分でも驚くほど落ち着いた声が出た。

 目の前に座るのは、ラウレンツ侯爵夫人エカテリーナ。

 王都でも一、二を争う名門家の女主人。


 ――正直、格が違う。


 ユーリアは、背筋に力を入れ、目の前の上品な貴婦人を見据えた。


◇ ◇ ◇


 ラウレンツ侯爵夫人エカテリーナもまた、庶民ユーリアをじっと観察していた。


 値踏み、露骨ではないがかえって圧になっている。


「あなたが……例の方ね」


 柔らかな声。


「イーゼルベルグのご令嬢に、“魔法を使わず”身体づくりを?」


「はい」


 ユーリアは、はっきり答えた。


「単純です。運動と、生活習慣と、食事です」


 エカテリーナの口元が、わずかに上がる。


「……ずいぶん、地味ですのね?」


「ええ、即効性もありませんし、楽でもありません」

 侯爵家の女主人相手に互角に話そうとするユーリアに

 エリザベスが、ひやりとしているのが分かる。

 だが、ユーリアは続けた。


「でも、だからこそ“リバウンドがない”のです」


◇ ◇ ◇


 エカテリーナは、紅茶に口をつけながら尋ねる。


「失礼ですが、何ぞやの資格でも?」


「ありません」


「・・・後ろ盾は?」


「ありません」


「・・・では、コネ?」


「今、目の前にいらっしゃっておられますね」


 一瞬の沈黙。

 エカテリーナはクスりと笑った。

 初めて見せた“本当の反応”だった。


「正直ですのね」


「取り繕っても、すぐ見抜かれると思いましたもので」

(侯爵家夫人、怖い人だ)

◇ ◇ ◇


 エカテリーナは、音もなくカップをおろした。


「では、聞きましょうか。

 あなたはなぜ、引き受けたの?」


「……覚悟があったからです、エレノア様に。自ら、変わりたいとおっしゃいました」


「それだけ?」


「はい。十分です」


 エカテリーナの目が、満足げに細められた。


◇ ◇ ◇


コツコツ、コツ。

ボルドーのネイルが美しい白い人差し指でテーブルを叩く貴婦人。


「庶民が、貴族令嬢を導く、ねえ」


 ゆっくりとした口調。


「恐ろしく、魅力的ですわね。それなら」


 エカテリーナは、少し考え込み――

 唐突に、こう言った。


「私の“知人”にもお力添えを」


 エリザベスが、息を呑んだ。


◇ ◇ ◇


 ユーリアは、即答しなかった。


「条件がありますね?」


 エカテリーナは、微笑む。


「それは次回、お話しいたしましょう」


 まるで猫のようにするりと立ち上がりながら片目をつぶった。


「それでは、ごきげんよう」


◇ ◇ ◇


 去り際。


 エントランスに馬車を付け、優雅に階段を下りたエカテリーナは、

 慌てて見送りに出てきたユーリア達を振り返り、告げた。


「ああそう、一つだけ忠告を」


真っ赤なハイヒールが白のコートに映える。


「貴族社会は、“結果”より“過程”を見たがります

 あなたが、どこまで守れるか……楽しみにしていますわ」


◇ ◇ ◇


 馬車の音が遠ざかり、嵐が過ぎ去った。

 応接室に戻ったエリザベスは、深く息を吐いた。


「……ユーリアさん、勇気あるわね」


 ユーリアは、静かに頷いた。だが、手のひらは、じっとり汗ばんでいる。


(守るべきものは、はっきりしてる)


 エレノアの顔が、脳裏に浮かぶ。

 彼女が、自分の足で社交界に立つ、その日まで。


 ユーリアは、腹を括った。

(貴族っていう階級とバシバシかかわっていくのも、この世界に来た楽しみかな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ