表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美尻に人生狂わされたOL、異世界転生する!  作者: あけはる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

第19話 訪問者


 王都ドーリスの貴族街。

 その中でも、格式ある邸宅が並ぶ通りに、

 あえて主張を抑えた装いの馬車が静かに走る。


◇ ◇ ◇


 外門を守る門番が、慎重に声をかけた。

「どちら様でしょうか」


 馬車の扉が開き、タラップを先に降りてきたのは、きびきびとしたお仕着せ姿の侍女。


「失礼いたします」


 その後ろから、ゆったりとした動作で女性が姿を現す。


 年の頃は三十代後半だろうか。

 落ち着いた色合いのドレスに、過不足のない装飾。

 グレーのベールで顔を隠しているものの、隠しきれない気品がある。


 人の上に立つことに、視線を向けられることに慣れた者のふるまい。


「突然の訪問をお許しくださいませ」


 女性は、穏やかに微笑んだ。


「ラウレンツ侯爵家はエカテリーナが参りましたと、お伝えください」


◇ ◇ ◇


 イーゼルベルグ伯爵家応接室にて―――


 この家の女主人であるエリザベス・イーゼルベルグは、緊張の汗を背中に流しながら、

 突然の訪問者と向かい合っていた。


(ラウレンツ侯爵夫人エカテリーナ様・・・あまり他家と交流を持たない夫人がなぜ、我が家に・・・?)


 高位貴族の突然の訪問に戸惑うエリザベスのかたわら、紅茶は注がれた。

 形式的な挨拶が交わされる。


「本日は、どのようなご用件で?」


 エリザベスが静かに切り出す。


 その言葉にラウレンツ伯爵夫人は、微笑を崩さずカップを置いた。


「突然の訪問で恐縮ですわ、私・・・」


 その声音には、好奇心と計算が混じっていた。


「最近、御当家に関する、興味深い噂を耳にしましたの」


伯爵家の応接室に緊張が走る。


「曰く、イーゼルベルグ伯爵家のご令嬢が、庶民を招き入れ、

 “身体づくり”に取り組んでいる、と」


 その言葉に、エリザベスの眉が、ほんのわずかに動く。


「……さすがにずいぶん、お耳が早いですわ」


「ええ」


 エカテリーナは否定せず、形の良い薄い唇に弧を描き、

 少し、声を落とす。


「魔法ではないとなれば、なおさら」


◇ ◇ ◇


 エリザベスは、すぐには答えなかった。


 娘は完璧に自信を取り戻してから、社交界に出たいと希望した。

 その気持ちを大切にしてやりたい。

 

 だが侯爵家夫人が先ぶれもなく、

 質素な馬車を用意してまで人知れずにイーゼルベルグ伯爵家を訪ねてきた。

 この事実も大切にしなければいけない。


「噂は噂ですわ」


 平静を装いながら少し抵抗してみる。


「我が娘は、今は静かに過ごすことを望んでいるようなのです」


 ラウレンツ伯爵夫人は、ふっと微笑んだ。


「……ええ。そのようですね。ですから」


 一拍、間を置く。


「ご本人にお会いしたい、とは申しません」


 エリザベスの戸惑った視線をうけながし、エカテリーナはゆったりと微笑む。


「指導されている方に、お話をうかがえればと」


 空気がわずかに張り詰めた。



「……分かりました。すぐに用意をいたします」

 エリザベスの回答に、エカテリーナの目が光る。


「ただし」


 エリザベスは手汗をにじませながら、やんわりと釘を刺した。


「我が娘の選択をなにとぞ、尊重ください」


「もちろんですわ、イーゼルベルグ伯爵夫人」


 穏やかな声。

 だが、その裏には確かな探りがあった。


◇ ◇ ◇

 夕日が落ちていく頃、

 ユーリアはエリザベスに呼ばれ、イーゼルベルグ伯爵邸を訪れていた。

 ユーリアは、静かに息を吸った。

 守るべきものは、分かっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ