第33.5話 悲惨と弱さ
一行は城下町を離れ、既に砂漠を進んでいた。もう夜になり夜空にはとても美しい星達が浮かんでいる……
皆が寝ている時間帯に目が覚めたミザリーは考えていた……今なら過去を克服出来るのではと……。
ミザリーはとある小さな村で生まれた。自然豊かで村人の数は少なかったが、何不自由無く過ごせていた。ミザリーは子供の時から知的好奇心が旺盛で、良く本を読む子であったのだが……
ある日その村は盗賊に襲撃される……村人は殺され、金品を強奪されたのだ。女子供や労働力として使える村人は奴隷として売られていった。
そしてミザリーはカートンの奴隷商人に売り物として出される。その時の待遇は余りにも酷く、思い出すだけでも吐き気を催す程だ。
ある時、奴隷商人が檻の鍵を閉め忘れていた事に気付く。その日は奴隷商人も買い物に行っており、逃げ出す事が出来た。
逃げ出す事には成功したが、帰る場所もお金も無い状態であったので、途方に暮れるしか無かった。その時、観光に来ていた老夫婦がミザリーを拾ってくれた事が運命を大きく変えた。
老夫婦はマギラウィの街で薬屋を経営しており、薬の調合や魔法の使い方を教えてくれた。一緒に生活する事でミザリーの性格も明るいものへと変わって行った。
その後老夫婦は老衰で亡くなってしまうのだが、最後まで大切に育ててくれたのだ。
お婆さんは最期に
「本当は色んな所に連れて行ってあげたかったけど、もう歳だったからねぇ……これからは自由に生きてちょうだい」と言っていた。
だが、ミザリーは薬屋を継ぐ事にした。旅には興味があったが、特に行きたい場所は無かったからである。
ここからメアとレグレットに出会う事になったのだ……。
(中々酷い人生だったな〜……だけど今は違う! 魔法使いとしてパーティーを支えてるんだから! 今までの人生を盛り返す様な凄い事を成し遂げて見せる)
砂漠の星空は開放的でいつもより大きく見えた。




