第3話 正義
人気の無い路地裏に移動した2人
「それで、一体何をそんな追い詰めているんだい?」と、メアは話半分程度に聞いていた。
「実はな、俺は今……命を狙われてるんだ」
メアは顔を向ける、「ほぅ? 一体誰に?」
と尋ねると。「アヴァロンの連中にだ……」
それを聞いて。
(アヴァロンか……次に行く予定の街だから情報は欲しいな)
「何で追われてるんだ? 悪い事でもしたのか?」と聞くと。
「違う! 俺は知ってしまったんだ……密輸品をしている事を……」
「成る程な、それなら納得だ。」
「俺は密輸に関する文書を手に入れた、だが、これだけじゃ証拠として薄い!奴らは汚い手を容赦なく使う」
「ちなみにどいつが密輸をしてんだ?」
「アヴァロンは商業都市なんだ、その中でもトップの商人同士で手を組んでやってるって訳だ」
「はいはい、分かって来たよ具体的に何を密輸してるんだ?」
男は一瞬言うのを躊躇したが口を開いた
「…………人間だ」
メアは身体を男の方に向き直した
「はぁ……そう言う事か……」
「……そうなんだよ。俺は許せなかった」
「お前はアヴァロン出身か?」と、メアが質問する。
男は悔しそうな顔で
「あぁ……そうだ……生まれ育った故郷が裏でこんな事をしてたなんて、凄く嫌な気分だ……俺が知ったから……両親も…………」
既に考えは決まっていた。
「しょうがねぇな……手伝ってやるよ、俺が出来る範囲でな?」
男は驚いた顔で
「ほ……、本当か!」と、俯いていた顔を上げる。
「あぁ、だが何をすれば良い? 俺はアヴァロンの事は何も知らんからな」
「そ、そうか。やって欲しい事はただ一つ、決定的な証拠になる物を持ってきて欲しい。後は俺に任せてくれれば問題無い」
「分かった。だが、証拠を掴めそうな心当たりはあるのか?」
男は少し考えて。
「アヴァロンの外れに人気の無い倉庫があって、そこには怪しい噂が広まって居るんだ」
「……噂、か証拠が手に入る確証は無いって事か……。もし手に入らなかったらどうする?」
「その時は、その時だ。あんたにそれ以上世話になる訳にも行かないからね」
「何を言ってるんだ?」と、疑問に思う
「あんたにはあんたの目的があるんだろ? こんな所で道草食わせる訳には行かないからさ……」と、少し申し訳なさそうに答える。
「あのさぁ」とメアが続ける。「お前が言ってるのは奴隷商だろ? そんな事をみすみす放って置けって言うのか? 魔王討伐よりもそっち優先に決まってんだろ?」と、半ば説教の様な口調で言う。
その言葉を聞き男は、はっとした顔で少し涙ぐんだ。「そうか、ごめん」と呟く。
「明日早速出発する1日掛かるらしいからな」
「お、俺も行かせてくれ!」
「駄目だ、顔が割れてんだろ? バレる可能性がある。証拠を掴んだら戻って来るよ」
「そ、その通りだ……」と、断念する。
「じゃあそう言う事で、毎日昼位にセリアの出入り口で待っててくれ」と、別れ様とすると。
「ま、待ってくれ!」と男が呼び止めてきた。「本当にありがとう! お前なら絶対に魔王も倒せるよ! 勇者!」
「……フッ……勇者、か」と、小さく呟き、宿へと戻り、明日に備え、準備をした。